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旅立ち

光が消えるとライムはゆっくりと目を開く。


そこは小さな洞窟だった。


湿った岩肌に天井から垂れる鍾乳石。そして足元にはダンジョンコアが確かな輝きを発していた。


――魔神城


巨大な謁見室にて転移魔法を見届けたアスタロトは満足そうに微笑んでいた。


その背後に立つ執事風の男が口を開く。


「珍しいですな」


「何がかしらぁ?」


アスタロトは振り返らない。


「アスタロト様があそこまで肩入れなさるとは・・・S級ダンジョンに所属していたとは言え、戦闘能力の無いただの新人ダンジョンマスターにしては随分と特別待遇でしたので」


アスタロトはクスリと笑った。


「あらぁ~ん♪そりゃ感慨深くもなるわよ」


執事は黙って続きを待つ。


アスタロトは天井を見上げた。


「ファンリルが亡くなったと思ったら、昔の彼にそっくりな子が現れたんですもの・・・若い頃のあの子も似たような目をしていたわぁ・・・無茶で、馬鹿で、夢ばっかり見ていて、でも面白かった」


懐かしそうだった。


執事も少しだけ驚く。


アスタロトがここまで誰かを評価することは滅多にない。ましてやS級中堅程度のダンジョンなど・・・


しかし次の瞬間にはアスタロトの笑みが消えていた。


「ただ」


その声は冷静だった。


「これ以上はあのBoyに肩入れしないから安心なさい。成功するも失敗するも本人次第。一国一城の主・・・それがダンジョンマスターというものよ」


執事は静かに頭を下げる。


「さようですか」


会話はそこで終わり魔神城はまたもとの喧噪に包まれていった。

____________


「おお!」


ライムが声を上げた。


「成功したみたいだな!」


エリシアが周囲を見回す。


「ここが私達の新しい家ですか!?」


「ああ・・・そうみたいだな」


ライムはダンジョンコアへ近付くと透明な宝石のようなコア内部では魔力が渦を巻いている。


ライムはコアに手を触れ目を見開く。


「凄いな……既に魔力もしっかり固定されてる・・・これならあと少しで本格的なダンジョンを作れそうだ」


エリシアも嬉しそうに笑う。


「やりましたね!ついに私達のダンジョンがスタートするんですね!」


「ぷるっ!」


ぷる吉もぴょんぴょん跳ねる。


ライムは思わず笑った。


追放された時にはこんな日が来るとは思わなかった。


自分のダンジョン・・・自分の仲間・・・そして世界一を目指す挑戦の全部ここから始まるのだ。


「マスター!」


エリシアが元気よく手を挙げた。


「早速周囲の偵察に向かいますか!敵情視察をしましょう!」


「ぷるっ!」


何故かやる気満々だった。


しかしライムは首を横に振る。


「いや・・・その必要はない」


「え?どうしてです?」


ライムは洞窟の出口へ向かった。


外から吹く風。


遠くの森。


その向こうに広がる平原。


全てを見渡しながら話し始める。


「ここは人類圏最大の中立学術都市パレミルと小国群のちょうど境目なんだ」


エリシアが首を傾げる。


「学術都市?」


「簡単に言えば学校の街だな!世界中から学生や研究者が集まるんだ。魔法使いの卵、錬金術師の卵、冒険者の卵…そういう連中が山ほどいる場所だ。」


「おおー!」


エリシアの目が輝く。


ライムは続ける。


「そしてこの辺りはまだ未開発地帯が多い。あくまで中立都市だからな。どこかの国が主導で開発ってのが難しいんだろう。外に出ても小国側の小さな開拓村がある程度だ。


「つまり今の俺達を即座に脅かすような存在はいない」


エリシアが納得したように頷く。


「なるほどです!だから偵察より先にやることがあるんですね!」


「その通り」


ライムは笑った。


「まずはダンジョンを整える!それが最優先だ!そして開拓村にはもっと大きくなってもらう」


「え?どうしてです?」


ライムはニヤリと笑った。


「なにせ。すぐ近くに優秀な卵達がたくさんいるからな」


エリシアが目を瞬かせる。


「卵……ですか?」


「未来の冒険者達、魔法使い達、研究者達のことだよ。今はただの卵でも、いずれ世界で活躍する人材になる。そいつらを守るために中立都市の”中立”が保たれる範囲でこっちを潰そうとしてくるだろうな。」


ライムは遠くを見つめた。


「こちらの存在が知られれば。開拓村はある程度はすぐに大きくなるさ」


エリシアは少しだけ呆然としていた。


そして。


満面の笑みを浮かべる。


「やっぱりマスターは凄いです!私そこまで考えてませんでした!」


「いや」


ライムは頭を掻いた。


「そんな大したことじゃない。ただ立地と運が良かっただけだ」


「ぷるっ!」


ぷる吉が勢いよく飛び上がる。


どうやら賛成らしい。


エリシアが拳を握った。


「よーし!それじゃあ世界一のダンジョンを作りましょう!」


「おう!」


「ぷるっ!」


三人の声が洞窟に響く。


だが誰もまだ知らない。


この小さな洞窟が。


数年後大陸中の冒険者が訪れる伝説のダンジョンになることを。


そしてその第一歩が今始まろうとしていた。

もし少しでも

「続きが気になる!」

「面白かった!」

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それではまた次回!

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