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笑顔

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僕の後頭部には、

対戦車ライフルの銃口が突きつけられていた。

薄く覗く月明かりで反射したロッカーの扉でよく見える。

片腕で僕の頭に銃口を当てている。この形状。

ドイツのマウザーM1918だな。

僕と同じく旧世代の銃の使い手か。後輩らしいな。まぁ自分で言ってたっけ。

フフフ。

「全部思い出したみたいですね。先輩」

「ああ。僕の血に濡れた地獄の四年間を思い出したよ。僕は―」

「そう。『先代死神』です♡やっと思い出してくれてよかったです。

ではパスワードと指紋認識を」

「パスワードは5648。フフフ。単純だよな。殺し屋の当て字だぜ」

「それがわからなくて困っていたものですよ。私が『死神』の名を語れないのも、

『死神』正統継承者の証。黄金銃を手にしてないからなのです」

「ハッキングはできないのかい?まぁ強力なプロテクトをかけていたから、

無駄に終わるだろうけどね」

僕は自分のロッカーにパスワードを打ち込む。

5 6 4 8。

当時の『死神』だった、僕にとって笑える唯一の心のゆとりで番号。

5648を入力し、僕は左手をセンサーに翳した。


「ロックを解除します」

機械音声と共に僕のロッカーが開かれた。


「さようなら『先代死神』さん。これからは私が正真正銘の『死神』です♡」

檜山は対戦車ライフルの引き金を引いた。


ドガン!!!!!!!!!!!!


「・・・・・・あれ?」


「僕はこっちだよ檜山くん。ライフルの反動で僕を見失ったな。

今僕がこの銃を撃てば君は三回は、死んでたぜ?」


僕は教卓の上に立って腕を組んで待っていた。

ロッカーから教卓までは八メートルはある。

教室の机を足場に僕は『死神』の授業で習った、

移動術で檜山から離れたのだ。


「流石です。記憶と共に身体能力も戻ったんですね。そしてその黄金銃も。

いつの間に手にしたか見えなかったです」

僕の右手には自分のロッカーから取り出した黄金銃が握られている。

「僕が『死神』として四年間鍛えられた力と技だ」

僕は黄金銃を檜山に向ける。

「『死神』の名は欲しければあげるよ。僕はその名を捨てたんだ」

「ですが『死神』は一人で十分です。先輩はまだ『死神』ですから」

「・・・・・・だよな」

「殺し合いましょう。先輩『死神』の名を懸けて」

「ああ。一対一の決闘だ」


僕の言葉を皮切りに、

校内の電気は全て消された―ようだ。

檜山のやつ準備をしていたのだろうか。

そこまで襲用に僕を殺すことを考えているとは、

やはり一流の暗殺者の教育を受けているだけはあるな。


まぁこの暗闇。

決闘の舞台に相応しい。

『死神』に戻った、

僕の「目」には暗闇など関係ないのだけれども。

ハッキリと教室の中も明るく見えている。


本当に同時だった。

僕と檜山は上下のドアから飛び出し、廊下に出た。

そして先に僕が走り出す。

それを追う形に檜山はなった。


「パスワードを聞いたあとに、僕の左手を切り取ってスキャンすれば済む話だったろ。

君は僕を殺すチャンスを何度も逃しているんだぜ」

「あ!?それもそうですね。流石です先輩」

「・・・・・・一手も二手も甘いね」

「以後気を付けます♡ご指導ありがとうございます」


走りながらの雑談。

現役の処刑人と学生の殺し屋とのたわいのない話。

人はこのやり取りを異常と呼ぶのだろうけど。

ターゲットの居場所・状況を会話で読みとるのも殺しの上等テクニックの一つだ。


「じゃあ。私の為に死んで下さいよ。先輩。あなたはもう用済みですから」


その台詞と共に檜山は、

僕に向かってライフルを脇に構え発射してきた。


ドガン!!!!!!!!!ドガン!!!!!!!!


檜山は僕に向けて対戦車ライフルを放ってくる。

だが走りながらの射撃だ。

僕の胴体を射抜くことはできていない。

弾丸は僕の脇を通り抜ける。

でも一発でも貰えば僕の死は確定するだろう。

僕の胴体などバラバラに、床に落ちた豆腐のように破壊されるだろう。


「檜山くん。走りながらじゃ僕は射抜けないぞ!!」

「ブラフですよね。その言葉」


ドガン!!!!!!!!ドガン!!!!!!!!!


檜山はそれでも対戦車ライフルを連射し続けた。

かなりの精度だ。

僕の頭ギリギリを弾丸がかすめる。

狙いが定まって落ち着いてきた証拠だろう。

流石僕の・・・・・・いや『死神』候補生だなと僕は感慨を受けた。


しばらく躱しながら走り続けると、廊下が曲がり角につきあたった。

ずっと探していた、待っていた目的地だ。

僕は廊下の曲がり角を全速力で先に曲がる。

そして廊下の角に向かって黄金銃を向けて発射した。


バン!!!チュイン!!!


「・・・・・・うぐっ。ち、跳弾ですか!?」


そう言って檜山は床に倒れた。

僕の位置からは見えないがドサッという人が倒れる音と、

対戦車ライフルが手元から落ちた音がしたので、

間違いはない。

百パーセント檜山の腹に僕の放った弾丸はヒットしたのだ。


「鋭射角四十五度からの跳弾。ターゲットの目からは絶対見切れない撃ち方だ。

ライフルではできない。拳銃での高等暗殺テクだ。習ってないのかい?」


僕は廊下の角から歩いて出て檜山に殺しのテクを教授した。


「流石ですよ。本当に・・・・・・流石です油断していました」


血を吐き、腹部から血を流し、廊下の床に伏す檜山に僕は近づいて黄金銃を向ける。

あくまでも一人間の檜山だ。致命傷である。

せめてもの情け。楽にあの世に逝けるように。

僕は黄金銃の引き金に指をかける。


「さようなら。檜山後輩」

「はい。先に地獄で待っています。須藤先輩♡」


バン!!!バン!!!バン!!!


笑顔で檜山と別れた。


ここまで送ってくれて本当にありがとう。

僕を『死神』に戻してくれて本当にありがとう・・・・・・・


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