エリートの記憶
034
僕達は射撃訓練場に降りたエスカレーターに再度乗り、
次の目的地『エリート教室』に向かった。
「僕は他の学生達と同じ教室でキャンパスライフを謳歌していたと思うのだが、
エリート教室なんてものがこの学校にはあったのかい?」
「はい。私も今そこで学んでいます。地味に私もエリートなんですよ」
「ふ~ん」
「なんですかその素っ気ない態度。カチンときますね。私も入学当初から常に学年トップの点数をキープしています。全教科満点ですよ。先輩と同じく」
「やるね~」
「な~んか馬鹿にされている気がしますがいいでしょう。さ、教室に着きましたよ」
僕達のたわいのない話が続き、
長い長い廊下を渡り、
校舎からだいぶ離れたところに『エリート教室』はあった。
本当にエリート教室と扉の前に書いてあるよ。
教室のドアにはロックがかかっており、
檜山くんがIDカードでロックを外した。
「さぁどうぞ。先輩から先に」
「ずいぶんと暗いね」
「夜ですからね。今電気をつけます」
檜山くんが教室の電気をつける。
明かりがともった教室の中は殺風景だった。
教卓が一つに液晶モニターが一つ。
生徒用の机と椅子が一つずつ。
そして教室の後ろ側にはズラリと並んだロッカーがある。
広い教室ではあったが、やはり物が少なくガラリとしている。
「教師と生徒。マンツーマン指導のエリート養成教室です。思い出しません?」
「う~む。何も」
「椅子に座ってみたらどうですか?昔を思い出すかもですよ」
「ふむ。座ってみるか」
檜山くんの言葉のまま、僕は椅子に座った。
その時だった。
僕が椅子に座ったと同時に腕と脚の部分が金属の枷でロックされた。
かなりの締めつけだ。身動きが取れなかった。
「檜山くん!!これは!?」
「先輩。何も思い出さないみたいなので特別授業を行います。まぁご心配なさらず」
「何をするつもりだ!!!」
「だ~か~ら~授業ですよ♡」
僕の頭の上からヘットギアのような器具が降りて来て、
僕の頭に装着された。
「今すぐこの機器を外せ。僕は魔法も使えるのだぞ。キミに攻撃もできるぞ。外せ!!」
「鈍いですね~先輩。この校舎全体は『絶対魔法禁止領域』ですよ。気づきませんでした?」
「なんだと!?「ライトニング・ストライク」!!」
僕が唱えた魔法は本当に不発に終わった。
『絶対魔法禁止領域』
魔法の元、ダークソウルを遮断する空間。結界。
政府の重要機関でよく使われている。対ダークソウル用の結界。
「くそ!!外せ!!檜山くん!!」
「授業開始です♡」
「ぐああああああああああああああああああああああああああああ」
僕の頭に大量の電撃が流された。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああ」
「アハハ。いいですね~ショック療法ですよ♡逆らう生徒には電撃が一番♡」
電撃が止み、僕はぐらりと前にうなだれる。
「では。モニターの方をご覧下さい。見えていますか?」
頭の器具で無理やり頭を起こされ、僕は液晶モニターの方を見せられた。
そこには、
若かりし今も若いか、学生のときの僕が映っていた。
この教室で授業を受けている姿。
教師は学長。
マンツーマンであることを学んでいる。
殺しのテクニック。
銃。ナイフ。徒手。挙句の果てには言葉での洗脳暗殺。
様々な殺しの技を僕は目の前で学んでいた。
何時間も何時間も。
何日も何日も。
計四年間。
僕は何人を殺してきたんだろうか。
映像は移り変わり。
各国の要人を暗殺している動画が流されている。
暗殺は非常にスマートで達人の域と言ってもいいだろう。
例を挙げるならば握手と同時に手首から毒針が発射され、
要人を暗殺する。そして護衛も黄金銃で射殺して撤退。
その撤退する男の顔がアップされる。
緑に発光する冷たい瞳。
あれは僕だ・・・・・・
次々と僕が各国の要人を様々な殺し方で殺していく動画が流されていく。
刺殺。撲殺。絞殺。銃殺。毒殺。
殺しのエリート『死神』
ただの学生のはずだった僕の過去の姿なのか。
記憶が少しずつ蘇ってきた。
そして様々な勲章を日本国総理大臣から受け取る僕の姿。
『死神』と称される、日本国最悪最強の殺し屋。
僕は笑ってその勲章を受け取っていた。
感情のない笑みを浮かべて。
最期の映像となった。
学長室であるゲームを行っている姿。
学長と僕で、
互いにリボルバー拳銃を引き合う。
ロシアンルーレット。
その四発目で僕のこめかみに弾丸が発射され、
昔の僕はその場に昏倒した。
電撃弾。
実弾ではない。
気を失った僕を黒服達が運びあげ、ある施設へと運んでいく。
カプセルの中に僕は入れられる。
そして全身に針が突き刺させられる。
そこで映像は終わった。
「さぁ先輩。昔の思い出はどうでした?自分のロッカーの前へ移動して下さい」
腕と脚の枷が外され、
僕は檜山くんに言われたままフラリフラリと後ろのロッカーのほうへ進む。
意識が少しずつではあるが鮮明になりつつある。
今の記憶と過去の記憶がごちゃ混ぜになっているが。
歴代の『死神』のロッカーいや武器庫の中に僕の名前はあった。
「 」とハッキリと。僕の字で。本当の名前が。
僕は僕は・・・・・・
カチャリ
僕の後頭部に冷たいものが当たる感触があった。




