さらば愛しの爆女
020
巨大ダークソウルズの最後の一振りの爆弾は、
爆発しなかった。
導火線が無くなりゆっくりと灰になった。
僕はその瞬間を目視することはできなかった。
あまりの超スピード故に。
派手なアロハシャツの男がその手に
導火線を握って僕達の前に立っていた。
そしてその導火線の火で口に咥えた、
葉巻に火をつけ、導火線を握りつぶす。
派手なアロハシャツの男の正体は、
『元・特Sランク処刑人』
僕達の雇主。
神谷処刑事務所社長。
神谷剛三。
その人だった。
「楓~。須藤君~。最後まで油断したら駄目でしょ」
「社長~!!!!」
楓さんが社長に抱き付く。
「社長。流石の技でした。でもなんでこのNEO東京ドームに?」
「言ってなかったっけ?」
「はい?」
「私はスティシー・ラヴの大ファンだ。S席で見に来ていたんだよ」
「ちっくしょー」
その断末魔を最後に、
白いダークソウルズと巨大ダークソウルズは完全に灰となった。
僕の腹から違和感を感じたので腹を確認する。
大量の出血と腸が少しでていたので「ヒーリング」を発動し押し込んで塞いだ。
あぶなく僕も灰になるところだったよ。
この処刑の時間をずっと舞台袖で見ていた、
スティシー・ラヴが舞台に上がってきた。
「神谷処刑事務所の皆さん。本当にありがとうございました」
スティシー・ラヴが頭を下げる。
「礼にはおよびませんよ。もう料金は頂いていますからね」
社長が言う。
「ですがお礼をしてくれるというのであれば」
「なんでしょう?」
「握手してくれませんかね~」
「もちろんです」
スティシー・ラヴと社長は熱い握手を交わした。
「会場の皆さん聞いて下さい」
スティシー・ラヴはマイクを手に語り始める。
「先ほどのように、私の喉にはダークソウルが詰まっていました。
この前のロサンゼルスのライブは中止になりましたが、
あれは私が会場に来ていた人達を皆殺しにしたせいです」
会場がどよめいた。
「私の歌にはダークソウルが大量に含まれていて、
それを聞いた五万人以上の尊い命を奪いました。
全て私の責任です。私は贖罪のつもりで音楽を音楽を」
「償いの意味を込めてこれからも続けていきます!!」
「ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
会場が大歓声に包まれる。
「スティシーのせいじゃないよー」
「スティシーの歌をみんなが待っているぞー」
「スティシー頑張ってー」
ファンの声援が私の心を揺らす。
私の目からは涙が止まらなかった。
バックコーラスとバックダンサー・バンドも
いつの間にか私の後ろに集まっていた。
傷ついた舞台だけど、
沢山の人の命を奪った私には丁度いい。
私は深呼吸をしてこう言った。
「聞いてくれるかな?みんなー」
「ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「私のデビュー曲 JETKISS みんなで一緒に歌おう!!」
「ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
僕達は舞台を後にする。
社長は確保していたS席に戻った。
憧れのスティシー・ラヴと握手できて本当にご満悦みたい。
舞台裏での僕達の会話。
「大手柄だね。正一」
「何がです?」
「スティシー・ラヴを殺さなくてすんだじゃん。あんたの作戦のおかげで」
「まぁ人を見る目は鋭いほうですからね」
「あんまり調子に乗るなよ」
楓さんの眼光が何よりも鋭かった。
「高速で絡もう~JETKISS!!」
処刑対象『スティシー・ラヴの中のダークソウルズ』処刑完了。
処刑場所「NEO東京 NEO東京ドーム」
『¥6,500,000,000』処刑費用入金済み
依頼№52『爆女』
完
NEO東京ドームの一番舞台から遠い席で二人の男達が立ち上がった。
「あなたの計画が失敗するなんて珍しいですね」
「・・・・・・まぁこれも一つの結末だろ」
「KILLBLOOD達。始末しますか?」
「取るに足らん。僕や『ルシファー』が手を下すまでもない」
「ではまた次の計画を?」
「ああ。悪意でこの地球を満たしてやるよ」
二人の男達は闇へと消えた。




