斑鳩・B・楓の回想 その2
013
四月二十日だったのは覚えている。
その日があのヴァンパイア娘の誕生日だったからな。
俺はその一昨日に依頼を受けた。
その翌日に一日使って計画も練った。
ヴァンパイア夫婦、妻は普通の人間だったな。
の処刑依頼。
依頼人は忘れた。正直ここはどうでもいいだろ。
俺はそもそも今までの依頼人の顔も覚えちゃいねぇ。
だがおかしな依頼だったのはよく覚えている。
「特Sランク処刑人による特Sランク処刑人の処刑依頼」
普通無い話だろ?
俺はその報酬に目がくらんで引き受けたよ。
なんせ百億だ。
しかも前金でだ。後金あわせて三百億。すげぇよな。
俺は前金を貰って、とんずらこくようなしょぼい処刑人ではない。
これははっきりと主張できる。
依頼は依頼。
仕事は仕事。
きっちりとこなすのが俺の流儀だ。
一日と言ったがかなりの計算で計画を練ったね。
まず妻をぶち殺して、
ヴァンパイア夫をマジギレさせる。
そしてヴァンパイア夫との屋外でのタイマンに持ち込む。
その計画の為にありとあらゆる装備を用意したものさ。
誕生日ケーキに火が灯った瞬間に、
俺は屋敷の電気を全て落とし、ロープで降り、二階の窓を叩き割り侵入した。
まず俺の愛銃、
まぁ処刑道具に愛着なんてものはねぇが。
44マグナムで、ヴァンパイア妻のどてっ腹に風穴を開けてやったよ。
すごい衝撃で後ろの椅子とかをぶっ倒して即死したな。
あんなぶっ飛び方は笑えたよ。フハハ。
まぁ笑っているのはヴァンパイア夫をキレさせる演技だが、
うまくのってくれたな。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
だっけか、もの凄い叫び声だった。
悲しみや怒りがこもった慟哭。
流石に背筋がゾクっとしたもんだよ。
ヴァンパイアのマジギレってやつは。
次の瞬間だ。
俺の首をすげぇスピードで掴んで屋外にぶん投げやがった。
九十キロの俺の体重をまるで重さがないようにぶん投げる。
想像できるか?
背中にすごい衝撃が走ったよ。
まぁここまで計画通りでその計画はさらにうまくいった。
降り注ぐ大雨の中、
ヴァンパイア夫は屋敷の外に出てきやがった。
俺が割った窓を通り抜けてな。
ヴァンパイアの弱点は、十字架、ニンニク、日の光、心臓に杭、銀の弾丸、
いっぱいあるが、
雨に弱いってのは初耳か?
雨の日はヴァンパイアの感覚が鈍るんだよ。前も言ったっけか?
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、
人間を遥かに凌駕しているヴァンパイアの五感は雨で鈍る。
まぁここからが面白くなるところさ。
ヴァンパイア夫は手首から日本刀を抜いて、俺に切りかかってきた。
普通の処刑人ならそこでジ・エンドなスピードと威力でだ。
俺は自慢の忍者刀・黒金を抜いて受け止めてやった。
この忍者刀はマジの自慢の一品だ。名刀だ。国宝級のな。
ゴガキィン!!
ゴシカァン!!
あん?効果音はどうでもいいか。
だけど、すげぇ衝撃だったよ。
今でも体験したことのない衝撃だったね。
その後は激しい斬り合いが続いた。
お互い一歩も譲らなかった。
俺とまともに斬り合えれるのは、今でもヴァンパイア夫だけかもな。
いやもう一人いるか・・・・・・あのジジイ。
こっちは俺の話にゃ関係ねー。
何分斬り合っていたかはわからねぇ。
俺もヴァンパイア夫との闘いに少しだけは興奮していたかもしれないな。
あの感情も嘘かもしれないが、
このまま斬り合って斬り殺してやるのもいいかと思っていたが、
俺は第二の作戦を選んだ。
面倒くさくなったんだよ。
あの無限に続くような斬り合いにな。
屋敷に侵入した時につけた。
時限爆弾を起爆してやったよ。
ドガーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ハッハハー凄い爆発だったな~。
我ながらいい作品の爆弾だった。
ヴァンパイア夫はその爆音に後ろを振り向いたんだ。
俺には子供がいねぇからそういう感情、いても湧かねぇか。
屋敷の中にいる自分の娘を心配したんだろうな。
次に俺の顔を見た時にはまぁもう遅い。
ヴァンパイア夫の心臓に俺は、
44マグナムの二発目に仕込んであった、
銀の弾丸を撃ち込んでやったよ。
妻と同じように後ろに吹っ飛んで行ったぜ。
一瞬の油断が命取りなんだよ。処刑人の世界はな。
でもな最後の一瞬が笑えるんだよ。
ヴァンパイア夫。ゴギブリ並の生命力でな。
生きてやがったんだ。信じられるか?
心臓を銀の弾丸で射抜かれてだぜ?フハハ。
だが「風前の灯火」って奴だ。
手離してしまった日本刀を拾うように動いてやがったから、
俺はその這いつくばるヴァンパイア夫の前に跳んで
奴の首を刎ねた。
これで正真正銘の ジ・エンドだ。
まぁ念には念を入れ、奴の心臓付近に弾丸を何発も撃ち込んでやった。
これで動いてこられちゃ俺の気が削がれるよな。
不死身すぎる。
まぁ不死身の怪物と殺りあったこともある俺だから、
瞬時に他の作戦を選ぶだろうけどね。
・・・・・・ああそういえばヴァンパイア娘の話をしてなかったな。
あいつは血まみれで俺の前まで歩いて出てきやがった。
親子揃ってゴキブリ並の生命力だぜ。
んで俺の前でこう言った。ハッキリと覚えている。
「お前を必ず殺してやる!!」
ありきたりな台詞だろ?
俺はこの娘は処刑対象ではなかったからこう言った。
「俺を殺したければ強くなれ、
処刑人になれば俺を殺せるチャンスが来るかもな」
ってな。
ヴァンパイア夫の日本刀を娘の足元に蹴り飛ばしてやった。
親の形見ってやつだ。娘はすぐにその刀を拾って俺に斬りかかってきやがった。
俺は泣き叫びながら日本刀を振り回す娘を蹴り飛ばし、
待機させていたヘリに乗って事務所に戻ったよ。
燃え盛る屋敷を後にしてな。
それだけだ。
これで昔話は終わり。
生きてりゃまた会おう。
なんでこんな話をしたんだろうね~。
金にならない時間だったよ。
本当に。




