7.双子の吸血鬼
俺の名前は桂木春。ひょんな事から普通じゃなくなった高校二年生だ。
一月前に死にかけた悪魔と出会い人とはちょっと違った生き物となった俺は何とか普通の人間に紛れて生活をしている。
そして、目の前で朝食を頬張っている白髪の女の子は幼馴染の如月日向。こっちも色々あって俺の世話を焼いてくれている。
「ご馳走様でした。今日も美味しかったぁ。ね、春はどうだった?」
「ご馳走様。美味かったと思う。今日もありがとうございます」
「うん! あ、そうだ。今日もちょっと遅くなるからご飯先食べてて」
「ん。でも最近毎日じゃんか。大丈夫なのか?」
「ちょっと忙しくて……。ごめんね」
両手を合わせる日向に短く頷いて答えた。
会話の終わった空間にテレビの音が響き渡る。ここ一週間で起こっている殺人事件について専門家の人達が話していた。
吸血鬼殺人事件。ネットやSNSでそう呼ばれているそれは見付かった遺体の血が完全に抜かれているという、狂気を孕んだような事件だ。
「分かってると思うけど──」
「早く帰れ、でしょ? 分かってるって。俺も血抜かれるのは嫌だしな。日向も気を付けてな」
「うん、ありがと。じゃあ、先行くね」
部屋を出ていく日向を見送って俺も身支度を始める。そして、部屋の片隅にある仏壇へと手を合わせた。
「行ってきます」
時間が流れ昼休みになった。鞄から弁当を出し、前の席にいるプリン頭の男子生徒、雪城大牙へと話し掛ける。
「なんかさ、最近日向の様子がおかしいんだよなぁ」
「如月の? 俺から見たら変わらないけど」
「帰ってくるの遅いし……。なんか変な事やってる気する」
「何? 運気調査?」
「違う! そもそも付き合ってないし……」
「桂木君、ちょっといい?」
いつの間にか横に立っていた女子生徒が話しかけてきた。
「ん? 大丈夫だけど……」
「外で桂木君を探してる人がいるんだけど」
「外?」
教室のドアを見ると外に女子生徒が二人立っていた。二人共金色の髪に青い瞳。前に立っている子は背が低く緊張しているのか目線があっちこっちに動き続けている。そして、もう一人はその子の後ろで蹲るように隠れている。
姉妹か双子だろうか。パッと見の印象はよく似ているように感じる。
「浮気してるのはお前の方か」
「違う」
扉の方向を見た大牙に短く答えた。
教室の外へと出た俺に前に立っている子が問うてくる。
「あの……桂木先輩ですか……?」
「そうだけど。えっと、そっちは?」
「鬼頭水奈といいます……。あの……先輩は放課後、時間ありますか……?」
「ん、大丈夫だけど」
「その、お話したいことがあるんです……。体育館の裏に来てもらえますか……」
水奈と名乗った女の子は顔色を伺うようにチラチラと俺を見る。これは……告白!?
早くなる鼓動を抑え、余裕のある表情を作る。
「ああ、分かった」
「ありがとうございます……! 私たちはこれで……。行こ、火奈」
二人が足早に去っていった。それを後ろで見ていた大牙が近づいてくる。
「お前、今めっちゃキモイ顔してるぞ」
「え!? 嘘……。普通だろ、普通!」
「いーや、全然。めっちゃニヤニヤしてる。如月に言ってやろ」
「待って! それは駄目!」
チャイムが鳴り昼休みの終わりを告げた。そして時間が流れ放課後になった。昼休みに尋ねてきた二人に会うため体育館裏へと向かうと二人は既に着いていた。
「お待たせ。ごめん、遅くなっちゃったか」
「いえ、全然……。私達も少し前に来たので……」
「そっか。それで、話って?」
「あの、その……実は、私達を助けて欲しいんです!」
意を決したかのように水奈が言った。
なんだ、告白じゃなかったのか。なんて落胆していると水奈が続ける。
「その、私達……吸血鬼なんです……」
「吸血鬼?」
「はい……。正確には吸血鬼と人間の半血なんですけど……。でも、吸血鬼なんです……。それで、最近起こっている事件をご存知ですか?」
「吸血鬼殺人事件ってやつでしょ? 知ってるよ」
「はい。それに私達が関わっているかもしれないと疑いを掛けられていて……。殺されてしまうかもしれないんです」
「……はい? なんで?」
「ここは人間の世界なので……。人に危害を加える物は殺されてしまうんです。その、聖騎士協会に……。でも、先輩は協会の人と戦って勝利したと聞きました。だから事件の犯人が捕まるまで、その人達から助けて欲しいんです」
二人が勢いよく頭を下げた。それに少し悩んでから答える。
「ごめん。知り合いから魔法を使うなって言われてるんだ。あと、目立つような事をするなって。だから、二人を助けてあげる事は出来ない」
「そう……ですか……。ありがとうございました。その、今日聞いた話は全部忘れていただけると助かります……」
「ちょっと待って!」
一礼して逃げるように去っていこうとした二人を止めた。
「俺が助けてあげる事は出来ないけど、紹介したい人がいるんだ」




