表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なまぐさシスターが相談承ります ~首忘れのデュラハン~  作者: 廿楽 亜久


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

第3話 悪意のある善行

「――というわけで、首の心当たりってのが、これ?」


 数日後、ハイドランジアたちは、とある貴族の屋敷にいた。


「超有名な首コレクターだそうだ。通称”ヘッドハンター”」


 種族問わず、首が好きだという、変わった趣味を持った貴族だそうだ。

 しかも、コレクションは人に見せてこそだという思考らしく、見せてほしいと伝えたところ、簡単に招待してくれた。


「これはこれは! シスター・ハイドランジア。ようこそお越しくださいました」

「急な申し出にも関わらず、ご招待いただき感謝いたします」


 一先ず、お礼を述べておくが、疑問がないわけではない。


「こういっては何ですが、警察と連携した、摘発とは思われなかったのですか?」


 コレクションしているものが首である以上、何かしらの犯罪に手を染めている可能性は高い。

 というか、確実に黒だろう。叩けば、埃どころではなく、汚点しか出てきそうにない。


「まさか! シェルトグラム教会が、まともな教会だと思っているのは、モグリくらいですよ」

「ハッハッハッ! さすが、我がマスターだ! 教会の名前も、随分轟いてるじゃないか」

「あらやだ。神の名を穢すつもりはないわよ。ねぇ? エレ・フット」

「もちろんです! 主の名を穢すなら、私が浄化します。えぇ、はい。すぐにでも」


 冗談だと、VDT’sがエレ・フットから距離を取れば、ヘッドハンターも興味深げに視線をやっていた。


 案内されるケースには、確かに多種多様な首が置かれていた。


「これらのほとんどは、魔法で腐敗を遅らせていますが、やはり、永続的なものではないのが悩みどころですね」

「はく製でいいんじゃない?」

「はく製とは、生命の躍動感が違います。これなんか、表情が特にいい……!!」

「俺様の好みは、こっちだな。サイコーにいい顔をしてる」

「お目が高い!! それは、本当に作るのが難しく――」


 熱く語り出しているヘッドハンターに、ハイドランジアは疲れたように息を吐き出すと、同じく興味なさげなエレ・フットへ目をやる。

 堕天使ではあるが、天使であると認識しているエレ・フットにとって、明らかに生命を冒涜しているこの展示に、興味は引かれないのだろう。


 だが、ハイドランジアと目が合うと、目を輝かせて、とある場所を指さした。


「おぉ……! 実にお目が高い! そちらは、デュラハンの首が並んでおります」


 エレ・フットが指を指したのは、デュラハンの首が収められているケースだった。


「こちらは、魔法などはかけずとも腐敗せず、そのままの最高の状態で保存されています。しかも、美しい顔ばかりが揃っています」


 ヘッドハンターの言う通り、どれも眠るように目を閉じているが、整った顔立ちをしている。


「今まで、奴らは首に興味がないおかげで、この美しい顔が手に入りやすかったのですが……ここ数年、奴らも首に興味が湧いたらしく、新しく手に入れることが難しくなったのですよ」

「あら、何かあったの?」


 確かに、首の持ち主であるデュラハンも、突然、首に興味を持ったようだった。

 個人レベルならば、何かあったのだろうで、済ませる。

 だが、種族レベルで、今まで、失くしても気にしていなかったにも関わらず、突然、興味を持ち始めるのは、珍しい。


 ハイドランジアが、ヘッドハンターに質問すれば、ヘッドハンターも困ったように語り出した。


「小さな国の話なのですが、そこの王子が、舞踏会に参加したデュラハンに一目惚れしまして」


 しかし、デュラハンであることを隠していたデュラハンは、王子の求婚から逃げ出し、走って逃げる際に、その首を落としてしまったのだという。

 王子は、その残された首を見て、デュラハンであることに気が付きこそしたが、それでも、そのデュラハンを愛すると、国中を探し、めでたく結婚した。


 その噂がデュラハンの中で広まり、デュラハンたちの中では、首に興味を持つものが増えたのだという。


「原典だと結構、血生臭いとは聞いたことがあるけど、さすがに、ここまでじゃないと思うのよね」

「元々繋がってないから、血生臭くはねェがなァ。その王子様とやらが、トンダ性癖の面食いで良かったじぇねェか」

「めでたしめでたしですね!」


 理解しているのか、していないのかはわからないが、嬉しそうな笑顔を浮かべているエレ・フットに、ハイドランジアもVDT’sも、一瞬だけ目をやるが、すぐに反対方向へ目をやった。


「しっかし、そんな話があるなら、デュラハン共は、ここに首の返却を求めに来るんじゃないか?」


 心配など一切していないとわかる態度で、VDT’sがケースに肘をかけ、大切に飾られている首たちを眺めながら、ヘッドハンターへ問いかけた。

 VDT’sが、少し調べたくらいで、すぐに調べがつくほど有名な存在では、本来の首の持ち主であるデュラハンたちも、すぐに首のありかに気が付く。


「腕利きの物を配置していますし、なにより、私は敬虔な信者なのですよ?」


 ヘッドハンターの首元に揺れているのは、敬虔な信者へ教会から送られる、特別なマジックアイテム。

 悪魔族を筆頭とした、魔族たちからの攻撃を防ぐアイテムだ。


 この世界の教会は、素直なもので、お心付け次第では、実際に悪魔の強力な精神攻撃を防ぐこともできる、マジックアイテムをくれるらしい。

 VDT’sへ微笑みを向けるヘッドハンターに、VDT’sもバカにされたと怒るわけでもなく、呆れたように手を振った。


「信者って言うものは、どいつもこいつも目が腐っていらっしゃるようで? 俺様は、今、このマスタァーに心身を捧げている。あぁ! 俺様ほど、敬虔な信者はないだろォ? なァ? マスタァァ?」


 大袈裟な手ぶりで、ハイドランジアの肩に手をかけ、勝手に自分で頷いているVDT’s。

 ハイドランジアも、もはや慣れたもので、未だに勝手に一人で話を続けているVDT’sを無視して、ヘッドハンターのマジックアイテムに目をやる。


 あのマジックアイテムがあっては、VDT’sが洗脳して、穏便に首をもらい受けるわけにはいかないだろう。

 力技で首をもらい受けることは、決して不可能ではないが、今の平穏な生活の事を考えると、避ける努力はしたいところだ。


「? ご主人様、どうかされましたか?」


 ふと、目があったエレ・フットは、不思議そうに首を傾げていた。


 少しばかりの逡巡を終えると、ハイドランジアは、困ったように頬に手を当てた。


「困ったわね……わりと心は広い方なんだけど、一応宗教上の理由で、そのペンダントは外しい()()()わね」


 そのハイドランジアの、気が抜けたような声を聞いた直後に、エレ・フットの雰囲気が一瞬にして変わった。

 ヘッドハンターは、その変化に反応するのが、ほんの少しだけ間に合わなかった。


「お任せください!!」


 間に合ったところで、どうにもならなかっただろうが。


「人々の願い、主の願い、ご主人様の願い。その願いを叶えるために、天使(わたし)存在()るのです」


 まるで祈りを捧げるように、エレ・フットは、ヘッドハンターの首にかかるマジックアイテムを両手で包み込むと、青い光を放ち破壊した。


「な――」


 上級悪魔の洗脳すら防ぐ、マジックアイテムが砕ける音に、ヘッドハンターは息を飲む。


「よォォうやくッ腹を割って、お話ができるなァ? ヘェッドゥハァンタァァァ???」


 砕けたマジックアイテムの向こう側は、卑しく嗤った悪魔の姿。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ