第4話 こんなの、私じゃない!!
「――というわけで、これが貴方の首よ」
数日後、教会に呼ばれたデュラハンは、自分の首の入っているという箱を固唾を飲んで、見つめていた。
「拾った人が、優しい人で良かったわ。理由を説明したら、快く譲ってくれたわ」
ハイドランジアが説明する後ろで、VDT’sはやけに愉しそうに嗤っているのは、気になる。
だが、それ以上に、デュラハンはその箱に収められている、自分の首の方が気になっていた。
「では――」
おぼろげな記憶の首によく似た金色の長い髪に触れ、首を持ち上げる。
「――――」
そこには、VDT’sが作ったイラストと特徴が似ている、目を閉じた女の顔。
「――――違う」
だが、記憶とは異なる。
「違う……! 違う! 違う違う!! こんな醜い顔が、私なはずがない!!」
何かが決定的に違う。記憶にある顔は、もっと美しかったはずだ。
この首は、似ている何かだ。
「おっと……そう来たか」
「違うんですか? やはり、悪魔の事なんて、信じるべきではありませんね」
「貴方が納得するまで、勝手に失くした、ない首を探せとでも?」
三者三様の反応を見せる中、デュラハンは怒りに体を震わせながら、勢いよく立ち上がる。
「もう結構!! この程度の見分けもつかない、貴方方に頼んだところで、時間の無駄です!! 自分で探します!!」
デュラハンはそう言い残し、教会を出て行ってしまった。
「……でェ? その首どうする?」
残された三人は、すっかり興味も失せ始めていた、デュラハンの首に目をやる。
またヘッドハンターの元に返却するのも、正直めんどくさいが、教会に置いておくほど、生首は好みではない。
ハイドランジアは、またデュラハンの首を箱にしまうと、VDT’sへ放り投げた。
「同類のお友達に、結婚祝いに送ってあげたら?」
「……十年遅れの結婚祝いかァ?」
VDT’sは、少しめんどくさそうな表情をしていたが、またすぐに愉しげに、口端を上げた。
「犬は食わなくても、デュラハンは食うかもなァ?」
「下世話ね」
「これを送って何が起きるかも、ろくに考えてねェマスターには劣るがな」
だが、箱を軽く投げながら、教会の奥へ消えていくVDT’sだった。
*****
数週間後、とある新聞記事にて、霧深い夜にやってくる馬に乗った殺人鬼が話題に上がった。
輝くような金色の長髪を女だけを狙う殺人鬼で、それ以外の特徴の者が、玄関に出ると、大量の血を浴びせかけられるのだという。
「あらやだ、近くじゃない」
ハイドランジアが、特に怖がる様子もなく声を上げれば、VDT’sも呆れたように言葉を返した。
「鏡が必要でしたら、どうぞ洗面台でじっくりゆっくり、現実をご覧ください」
ため息交じりの言葉に、ハイドランジアは、ゆっくりと視線を巡らせ、目の合ったエレ・フットに、笑顔を向け、VDT’sには指先を向けた。




