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②呪われた館、1899年12月24日 夜7時半

マリアンヌは、吹雪の中、頼りなくよろめきながら、扉を叩いた。


うやうやしくマリアンヌを出迎えたのは、銀髪の上品な老執事・・・いや、口許の歪んだ笑みに、隠しきれない下品さが漂っていた。


マリアンヌ「あの、有名な奴隷商人のビルが主催する、怪談の集いの会場はこちらでよろしくて?」


執事「秘密の合言葉とお名前をどうぞ、マダム。」


マリアンヌ「合言葉を聞かれたら、この手紙を出すんだったわね・・・アタシはマリアンヌ。ブルターニュの踊り子よ。」


執事「マリアンヌ嬢、フランスからはるばる、よくぞいらっしゃいました。お館様は、マリアンヌ嬢がブルターニュで魔女裁判にかけられたお話について、興味津々でございますぞ。ささ、どうぞこちらへ。」


広間に通されて人心地つくと、長旅の疲れがどっと押し寄せてきた。しどけない格好で暖炉のそばの長椅子に倒れこむと、執事からブランデーが出された。壁一面には、人狼に殺されたかつての館主の肖像画がずらりと並び、陰鬱な表情で客人を睨んでくる。マリアンヌは早々に帰りたくなった。


魔女裁判の一件ですべてを失い、フランスの凍てつく町で途方に暮れていた彼女のもとへ、「人狼崇拝者」と悪名高いビルから手紙が届いたのは、約一か月前のことだ。


「鬱屈した日々を過ごすジェントルマン・クラブの連中を、ほんの気まぐれで我が館に招待した。フランスの魔女よ、彼らを楽しませに来るがよい。君の不幸な身の上話が聞ける日を心から楽しみにしている。 呪われた館の主 ビル」


(この奴隷商人、汚い連中と稼いだお金で、貴族に成り済ます気ね・・・)


一介の踊り子であるマリアンヌには、上流階級の新しいパトロンを見つける以外、生きていく道は無い。


マリアンヌ(まだよ、マリアンヌ、アタシはここでは終われない・・・どんなに悲しくても、生き続けて見せるわ・・・)


虚空を睨むマリアンヌの横顔が、暖炉の灯に美しく照らされる。

雪は深々と降り続く。


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