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①プロローグ
マリアンヌは、朧げな灯を頼りに、煙草に火を点けた。
マリアンヌ「一服してもよろしいでしょうね?」
彼女は、こちらの返事を待たずに、赤い唇から煙を吐き出した。
マリアンヌ「あのひとと初めて会ったのは、1899年のクリスマスよ・・・片時だって、忘れたことは無かったわ。」
もう一度煙草を吸おうとして、やめた。
マリアンヌ「・・・ねえ、アタシの選択によっちゃあ、呪われた夜を回避出来たのかしら?」
しばしの沈黙。
彼女は、煙草を持つ指をほんのわずかに震わせた。煙をくゆらせながら灰がひとつ、静かに落ちる。
マリアンヌ「あの時のアタシには、たった一通の手紙だけが生きる望みだった・・・」
彼女は声を詰まらせて、瞳を伏せた。
マリアンヌ「ねえ、もしも本当に、この話の続きを聞きたいのなら・・・アタシを最後まで、決して一人にしないと誓ってくださるわね?」
彼女は遠い思い出に耽っていた。
マリアンヌ「・・・冷たい夜は、アタシを置き去りにするの。また一人きりになるのは怖いわ・・・」
また、しばしの沈黙。
彼女は俯いて決意を固めてから、思い切って、こちらを真直ぐに見つめてきた。
マリアンヌ「・・・あの夜、アタシは馬車から降りて、あの呪われた館の扉をノックしたの・・・こんなふうに。」




