表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/66

夜の襲撃

夜の襲撃


 

 ロガスターから回された殺し屋は、州警察本部長の屋敷まで来た。

FBIの人間を見て身を潜める。上層へ問い合わせた。ジェイビス=ロッソという男なのだそうだ。

FBI長官の直下、影のGメンである判断者ハノス=カトマイヤーの直属の部下で、実行人の男だ。いずれ警察にも娘の身元から本部長の名前は知られるだろう事は分かってて、あの男が出てくる事も半ば分かっていた。

「ねえちょっと。いい男なんだけど。素敵な人」

彼女を行かせたのは間違いだった。最高幹部長はぴしゃりと言った。

「任務に私情は厳禁です」

「分からないのよ。難しい言葉は止めてちょうだい。姉イジメよ」

「しっかり様子を窺って下さい」

「可愛いから許す」

彼の目元を引きつらせる冷静な怒り顔が手に取るようで、女殺し屋は意地悪そうに舌を出した。

 ロッソは辺りをノスリの様な目で見回すと、煙草に火をつけ煙を吐き出した。妻が入れたポットの中の薫り高いジャスミン茶をカップに注いで飲んだ。

相変わらず見張りだとは思えない様子だ。匂いに釣られて猫も鳴きながらガサガサと葉の音を鳴らし歩いてきては、煙が立ち昇って吸い尽くす毎に赤い光が一瞬広がるのだから。

ロッソは猫を見つけると引き寄せて頭を撫でた。首輪が嵌っているから屋敷の飼い猫だろう。毛足が長いホワイトシルバーの猫で上品な顔をしていた。

彼はふと顔を上げ耳を澄ます。塀の中の広い庭にある林を見た。この屋敷はやはり巨大だ。調べでは曽祖父の代からの権力者。闇と繋がりがあるのでは無いかと懸念されていたが、証拠も挙がらずに調べを付けられずにいた中を、今回の件が起きたのだ。

ロッソは張り込みだという物を、指笛を吹いた。いななきが聞こえ、庭に美しい馬が踊り出た。

彼はどんなじゃじゃ馬でも乗りこなせる自信があった。唇を舐めてから上目になり高い塀を軽々飛び越えた。いわゆる張り込み中の反逆行為である。このマイペースさがたまにハノスを呆れさせるが任務は確実だ。

しかもロッソはそのまま馬に飛び乗り出した。どうどうとあやして庭を歩く。ジャケットの中の何か、さっき取った柔らかい花だ。それを馬に食べさせ歩いていき、背を伸ばし見回した。まるで夜警だ。その経験はあった。

腰に差した拳銃を一度確かめると、馬の背に立ち窓の外枠に飛びつき体を大きく揺らした。ベランダテラスに鮮やかに飛び移る。

 女殺し屋は目を光らせ、微笑む口元を舐めてからジャンプし、木の幹に手を掛け回転し、塀を飛び越えると庭に降り立ち木の幹を背に微笑し背後を見た。屋敷の構造は頭に入っている。男とは逆方向から進入する。

 ロッソは先程、猫をあやしている内にコンピュータを操作し、警備サイレンのセキュリティーをストップさせていた。

白灰のベランダの中を月光が青く差す。美しい夜だ。

内側にヴェールカーテンの引かれた室内うぃ覗いながら月影を引き歩いていき、、ベランダから塔に飛び移ってその小さな窓を開け、さらりとレースカーテンが頬を掠め、黒影の差す円形の屋内へ飛び降りた。

暗闇に白い目と明るい鳶色の瞳が浮かび、辺りを覗っては即刻慣れた闇の輪郭を捉えると高い位置の小さな窓を振り仰いだ。

扉から外の様子を窺い出て音も無く歩き出した。

さっき、一陣の風に乗せ、塔に飛び移った瞬間「女の匂い」がした為注意深く進んでいく。

娘と妻を追い出した屋敷には現在、本部長が一人で暮らし、10人のメイドはこの時間既に別館で就寝している時刻だ。浮気も一切しない男。離婚してからも新しい女の影も無い。

MMか誰がしかが渡した刺客の筈。彼がする事はその刺客の排除と本部長を確保する事だ。

本部長を狙った刺客、もしくはMMが渡したのならば本部長をFBIから護る為だ。MMと関わりがあり渡されたのならば、利害関係を聞く必要があった。

女相手に手を上げる事は嫌いだが、まあ、聞けば応えてくれるだろう。彼の聞くが生易しく済むはずも無いのだが、あの冷酷な狐野郎ハノスよりはましだ。稀に彼はハノスを未だに狐野郎と心の中で言っていたりする事もあったりする心の中での事だが……。

ロッソは歩いていき、見回してから主の寝室の前に来る。

耳をそばだてて廊下を挟んだ向かいの書斎の扉側に耳を向けた。

先客がいる。ターゲットを捕まえてから行くべきか、なんらかの情報が入る筈のマザーコンピュータを破壊される前にそちらを片付けるべきか。

ロッソは2つのボタンを押すと書斎ドアの様子を見ながらそっと開けた。

「ハアイ」

女は書斎テーブルに足を組み座っているのを微笑み、ロッソは背を伸ばして綺麗なイタリア女を見ると銃口を下げた。

「君は?ここの主人の愛人かな」

喋ると今までの愚行の数々が嘘かの様に落ち着き払った紳士的な雰囲気になり、目深く被った黒のニット帽を少し上げた。

反する女殺し屋は素敵でダンディーなおじ様に思い切り女っぽく微笑した。年齢は見た目40代もばりばり前半の男だろう。

「愛人なら、貴方の愛人になって彼から逃げる」

そう蛇紋岩の天板デスクから立ち上がりケツを振りながらそこまで来ると目を伏せ気味に微笑んだ。ロッソもはにかんでから彼女の背後のコンピュータを見た。

それを女殺し屋は体を横に反らして視線を自分に向かせて「駄目よ」と言った。

「そうか。君が女性の匂いのした素」

「あら。鼻が利くのね。香水なんか着けてこなかったのに」

「野性的臭覚がね」

ロッソは女から離れて口端を小さく上げ微笑んでから、銃を構えた。

「どいてもらおう。怪我をする」

「まあ、駄目だって言ったでしょう?」

「機械を調べなければならない」

「あおうでしょうけれど、あたしはそうされるわけにはいかないわ」

「君の方は調べないが……」

「ふふ、そう?」

ロッソは時間を確認すると女を一度見て、一瞬で女の横面を蹴り女は撃鉄を上げ飛び退り発砲した。その背にバックハイキックを受けて彼女は絨毯に回転し飛んでいき、血唾を吐き捨て女よりコンピュータに走ったロッソの背を目で追い、画面を打ち抜いた。

だがロッソは重い本体ごと持ち上げ窓枠に飛び乗り窓を開け放った。

けたたましいサイレンが鳴り響き、白のヴェールカーテンが風を含んで水色の夜を澄み切らせロッソは振り向き様、目元まで微笑んで3階の高さから飛び降りた。

女殺し屋はとんでもない事をするロッソを追いかけ窓に飛び移り銃弾を飛ばした。馬に彼は飛び乗って疾走して行き、そのまま塀に飛び庭には馬しか残らなくなった。

 女は本部長の方へ駆けつけた。

扉を蹴り開け、見てから怒鳴った。

「んもう!!!」

既に死んでいる。

メイド達が駆けつけて来る。女殺し屋は扉前で悪態を叫んで窓からベランダ、庭に飛び降り走って木に飛び移った。

視界の隅を車両が走って行った。ロッソだ。

彼女は歯軋りしてその車の屋根に木の上から飛び移り、ロッソは驚いて蹴り割られ飛び込んできたさっきの美人が硝子を光り舞わせ自分の額に銃口を突きつけるのを、彼女の低くする体勢で見えない前方のまま激しく走らせて行く。この女、プロか。

女殺し屋は振り上げ彼のこめかみをグリップで払いつけたがびくともしなかった。まるで機関銃で横殴りされる事など慣れた風だ。

ロッソは彼女の体を片腕でなぎ倒し助手席に叩きつけて腕を伸ばしてドアを開けると乱暴に蛇行しては振り出そうとする。彼女は後部座席に猫の様に飛び乗ってコンピュータの本体を抱え持ったからロッソはハンドルを放し後部の女の体を掴み、その瞬間車が電柱に激突しスピンした。

車は横転し2人は車の中で体をぶつけながら襟元を掴みあい、ロッソは咄嗟の事で宙に浮いた重いコンピュータの角が女の小さな頭に激突しそうになったのを彼女の頭を抱え込んだ。車ががしゃんと地面に着陸した瞬間、ばらばらに飛んで行ったリアガラスからコンピュータ本体が元気良く飛び出して行った。目で追い、そのままアスファルト地面に落ちて行ったのを見た。その瞬間、自分の背が横になった車内で地面に叩きつけられ狭い中またがり銃口を額に突きつける鋭い顔の女を見上げた。

その彼女の腹を蹴り上げ女は拳銃を飛ばし叫んだ。ロッソは抜け出すと彼女も引っ張り出し、女はコンピュータに駆け寄ったがロッソが足元の地面を火花と共に散らせたのを肩越しに睨み、ザッと振り返って彼を上目で睨んだ。

「離れなさい」

「断るわ。命令された事には背く質なの」

「そうみたいだね。困ったお嬢さんだな」

「よく叱られるわ。その度にもっと反抗したくなっちゃう我が侭さなの」

「成る程ね」

女殺し屋は背後のコンピュータににじり寄り、ロッソの銃口から目を離さずに足並みを揃えた。

ロッソは依然銃口を下げる事の無いままコンピュータを狙っているが、本当にあのコンピュータだけとはいえない事だ。今他の待機させていた人間に本部長を事情を聞く為に連れて行かせ既にその場を去った。共にレプリカの死体用意し殺し屋を引き寄せている内に残った捜査官達に屋敷中を探させている。

ロッソは女を睨み、女は下目になって構えた。

女は飛び蹴りをかましてロッソは避け、彼女の背後に回るとさっと首筋にナイフを突きつけた。女は背後に肘鉄と共にナイフももろともせず身を返し彼の鳩尾を激しく膝打ちし回転した事で、彼女の長いパーマの髪がばさっとナイフで断ち切られた。

女は離れ、首筋に軽く髪が当たったのを瞬きし振り返った。その瞬間彼女の体はどさっと地面に飛んだ事で気絶した。

ロッソは大破したコンピュータから記憶ブースを取り出しジャケットに仕舞うと、一瞬女を振り向いた。

「ああ、全く困ったな」

そう言って彼女の体を肩に担いでセキュリティー会社のワゴンが駆けつけるのを走って木に飛び乗った。

様子を見てから木伝いに離れていき、影に入ると木から下りて女の頬を叩いた。目覚めればきっと切られた髪の事実に怒鳴り叫んでビンタが飛んで来そうだった。ロッソの17歳エジプト女の妻も本当、高飛車で我が侭で手を焼いているからよく分かる。しかも髪と来たら、何かされたなんて手入れをしている女性からしたらとんでもない暴力だ。

女は目を覚ますと痛みに顔を歪めて涙で濡れた目でロッソを見つめた。危うく引っ掛かりそうに成って彼は頭を振るとジャケットの中の記憶ブースを取られる前にその場から走り去って行った。

「もう!」

女は駆けつけ、既に消えていた。

一方警備員に成りすましたロガスターの工作員達は、屋敷内の3人のFBIの人間を始末し死体もダミー人形だと分かると上に報告してから壁内部のコンピュータを探し当て、マザーを打ち抜いた。女殺し屋からロガスターへの通信回路の入った男を逃がしたと報告されていた。

ひとまず2手に分けさせ捕えている本部長の場所とジェイビス=ロッソの場所へ向かわせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ