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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
95/107

伍章・弐ノ陸 ~右翼左翼侵攻~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、95本目です。


雑賀の庄を攻めようと、二つの道を攻めあがる猪々子と斗詩。

そこで見たものは…




山間にぽっかりと空いた更地。

ここは山中で軍を展開できそうな数少ない土地だ。

いつもはここに柵が設けられ、足止めされたところで敵兵器の餌食になっていたのだが…

猪々子は部隊の先頭に出て、報告どおりの光景に目を丸くした。


「……翠?」


以前のような柵は一切なく、広場には一本のはためく旗と一人の少女が立っていた。

旗の文字は『馬』

髪を一本に結い上げた少女は、美しく輝く槍を携えている。

その少女のことを、猪々子はよく知っていた。


「翠…お前、なんでここに…」


さすがの猪々子も、居るはずのない人物の突然の出現に驚きを禁じえない。


「訳は言えないけど、分かってる事は一つ!お前とここで真剣勝負が出来るって事だぜ!」


ビシッと銀閃を構える翠。

見るものに溜息すらつかせるほどの見事な口上と立ち振る舞い。だったが…


(風に、こう言えって言われただけなんだよな…間違えなかったかな?)


と、内心おっかなびっくりの翠。

こう言えば、猪々子なら深く考えもせず突っ込んでくるだろう、という作戦だったのだ。

ただ、演技などの類が苦手な翠は、自然に出来ていたか?勘付かれやしないか?とヒヤヒヤしていた。

のだが…


「へっ…そこまで言われちゃ~引き下がれないよなぁ~?」


翠の心配を余所に、猪々子は一も二もなく乗ってきた。


「今まで戦えずに退屈してたし…この勝負、乗ったっ!」


ダンッ!と背にしていた愛剣を地面に叩きつけ、猪々子は大見得を切る。

翠はホッと心で一息つき、頭を戦闘態勢に切り替える。


「よっしゃあ!なら猪々子、勝負だ!」

「あぁ…真剣(まじ)なんだよな?首が飛んでも文句言うなよ?」

「抜かせっ!」


同時に大地を蹴る二人。

巨大な剣と白い槍が火花を上げながら交錯した。






――――――

――――

――




一方その頃、猪々子とほぼ同時刻、斗詩にも奇妙な知らせが届いていた。

やはり、先の空き地にある人物がいる、との内容だった。

慌てて前線に来た斗詩の目に飛び込んだのは、はためく『夏侯』の二文字と…


「ほぅ…ようやくお出ましか」


蒼きアーチャーだった。


「秋蘭…さん?どうして…」

「あぁ。故あって、今はこちらの味方をしているのだ」

「ええぇ~~~!?」


吃驚仰天の斗詩。

いるはずのない人物が、味方するはずのない側にいるのだから無理もない。


「しかし、袁紹も思いのほか大軍を連れてきたようだな」

「え、えぇまぁ……それが麗羽さまが唯一できる策ですから…」


あはは、と苦笑いしながら割と酷いことを言う斗詩。


「なに。まずは相手より多くの兵を集める。これは兵法の基本だからな」


孫子には『少敵の堅きは大敵の擒なり』とある。

簡単に言えば、兵数の少ない時は敵と戦うな。

逆に言えば、戦う時は敵より多くの兵を集めろ、ということだ。


「少敵の堅きは大敵の擒なり、か…さすがにこれは少々数が多過ぎる。ここは退かせてもらうとしよう」


そういうと秋蘭は優雅に踵を返す。

と同時に、更地の外の木々もガサガサと音を立てて揺れる。

チラチラと見える格好から、弓兵が伏せていたようだ。

その弓兵も秋蘭に従って撤退していく。

ポカーンとその様子を見ているしか出来なかった斗詩。

すると、その後ろから


「何をしておられるのですか、顔良さま!後を追いましょう!」

「え?」

「彼奴らは我々の数を恐れ、尻尾を巻いて逃げたのです!今なら鬼門のここを突破できます!」


毎回ここで足止めを喰らい、苦汁を舐めてきた袁紹軍。

確かに好機だが、秋蘭がタダで行かせてくれると斗詩は思わない。


「え…や、うん……だけど…」

「行くぞっ!」

「「「うおぉぉぉぉぉーーーー!!!」」」


血気盛んな副将の声に応え、兵卒は斗詩の左右を抜け、逃げた秋蘭を追って駆け出す。


「ちょ、ちょっと……待ってよ、みんな~!!」


止めに入る斗詩の声は、兵たちの喚声と足音で掻き消される。

斗詩はポツンと取り残された。


「ふぇぇぇ~ん…絶対罠だってばぁ~~!!」


斗詩は泣く泣く、自分の隊を追いかけることとなった。






――――――

――――

――




ギィィーーン、ガキンッ、と金属が激しくぶつかる音が響く。


「やるな、猪々子!」

「はん!あたいを誰だと思ってるん、だっ!!」


猪々子が大剣を振り下ろす。

翠はその横面を叩いて弾くと、そのまま槍を繰り出す。

それを猪々子は前進しながら躱すと、その勢いを利用して大剣を薙ぐ。

互角といっていい勝負だ。

勢力そのものが早くに消えてしまったので忘れられがちだが、猪々子の武勇は三国でも上位に位置しているのだ。


「はっはー!楽しいなぁ、翠!」

「あたしとやり合うのに楽しいとは、随分余裕じゃないか。猪々子!」

「当たり前だろ!?アタイはまだ実力の半分も出してないんだからな!」

「言ったな!!」


そんな二人の一騎打ちが五十合を超えたところで、


ピィィィーーー!!


と音を立てた鏑矢が翠の後方、先へと続く道の辺りから放たれた。


「――なんだ!?」

「チェッ、もうそんな時間か」


翠は後ろに大きく跳び、間合いを一気に離す。


「じゃあな猪々子。またやろうぜ!」


そう言うと、そこからか出てきた馬に乗り、背を向けて逃げ出した。


「ちょ…おいっ、待てよ翠!!」


しかし、翠は山道など苦にせず馬を走らせ、あっという間に見えなくなってしまった。

取り残された猪々子は、


「なんなんだよ、これからって時にー!おい野郎ども!すぐに翠を追いかけるぞ!」


そう言うと猪々子は先頭切って翠を追いかけ広場を抜けると、再び狭い山道へと入っていった。






――――――

――――

――




ピーーー…ヒョロロロローーー………


「剣丞さま、お茶が入りました」

「ありがと、詩乃」


雑賀の庄にはとても静かな時間が流れていた。

今が戦中であることなど忘れてしまいそうなほどだ。


「こんなゆっくりとした時間、いつ以来だろうね?」

「さて…なんだかんだで、私が剣丞さまにお仕えしてからは色々ありましたからね。このような時間が果たしてあったのやら…」


ズズッとお茶をすする詩乃。


「いま戦ってる皆には、少し悪い気がするけどね」

「それはもちろんですけど、私たちが行って出来ることの無い以上、こうして信じて待つのも、私たちの責務ですよ」


待つ辛さを知っている詩乃の言葉には重みがあった。


「うん、そうだね」


笑いかける剣丞。

その時、


「あ……」


剣丞と詩乃の手の先が、ちょんと触れた。


「剣丞さま…」

「詩乃…」


近付く二つの影。

その影が交錯す…


パーーーーン!!!


寸前、火縄銃の発砲音が山中に響き渡った。

かなりの至近距離だ。


「敵襲!?」


剣丞が咄嗟に詩乃に覆いかぶさる。


「い、いえ剣丞さま。敵方は鉄砲を持っていないはずですが…」

「あ…そっか。でも、だったら……」

「おーい!主様ーー!!」


正面から一葉が手をぶんぶんと振りながら、剣丞らに駆け寄ってきた。

後ろには風と稟の姿も見える。

そして、一葉の手に握られているのは…


「火縄銃もなかなか面白いのう!ま、音が大きいのが玉に瑕じゃが…」


そう言いながら鉄砲を構えて撃つ振りをする一葉。

先ほどの一発は彼女が放ったようだ。


「十間先の焼き物が木っ端微塵でした。驚異的な兵器ですね…」

「だけど、音がとっても大きいのですよーー…」


それを見学していたのか、風と稟はともに眉根を寄せている。

理由は違うようだが。


「あはは……」


仲良くやっているらしい一葉たちを嬉しく思いながら、少し機嫌を損ねてしまった詩乃をどうやって宥めるかを考えなければならない、剣丞だった。




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