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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
76/107

肆章・弐ノ弐ノ弐 ~落涙~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、76本目です。


紫苑救出のために函谷関で干戈を交える一刀たち。

その結末とは…




「よーし!こっち持ち上げるぞ。せーのっ!」


函谷関から数百mほど離れたところで、雲梯の組み立てが急ピッチで進められていた。

関からは絶え間なく鬼が漏れ出しており、小夜叉を筆頭に近付かないように奮戦している。


「放てー!!」


シャオ率いる親衛隊も弓で応戦するなど、戦局はこちら有利で進んでいた。


「阿呆が!その部品は向こうだと真桜さまに言われただろうが!」


真桜は自身で細かいところの作業をしているため、全体作業は各務さんと沙和が指揮している。


「この○ンカスどもー!夜に手を動かす暇があったら、いま手を動かすのー!!」

「「「サーイエッサー!!!」」」


いつの間にか森一家も完全に調教…いや、教育されていた。

そのおかげもあってか、雲梯の組み立ては順調に進んでいた。




――――――

――――




「フンッ!」

「ひゃわっ!滝川家以下略!」


中級の鬼の一撃をお家流で躱す雛。


「くっ…なんて卑劣な…」


鬼の戦法に雛と湖衣は苦戦していた。

関を越えようとしている下級の鬼を投げつけてきては、その死角から攻撃を加えてくる。

身のこなしが軽い二人なので何とか躱しているが、まともに喰らえばただではすまない。


「はっはっは!威勢よく登場しましたが、やはり羽虫は羽虫のように逃げ回ることしか出来ないのですねぇ?」


鬼は下卑た笑みを浮かべる。


「むぅ…感じ悪いなぁ~」

「感じのいい鬼なんているんですかね?」

「う~ん…いないかも?」


軽口を叩いて余裕を見せるが、切羽は詰まりかけている。

雛はまだかなぁ、と視線を一刀たちの方へ向ける。


「あ、そろそろ出来そう」

「雛さん、声っ…」

「ん?」


鬼も雛の声に釣られて雛が向く方に視線を向ける。


「あ、あれはっ!?」


鬼の目に映ったものは、突然現れた立派な攻城兵器だった。


「ちぃっ!」


鬼は関を飛び降りると、それに向かって一目散に駆けていった。


「うわちゃ~…マズいことになったよ、これは」

「止むを得ません。あちらには小夜叉さんたちがいますし、遅れは取らないでしょう。こちらは下級の鬼の数を減らしながら補助をしましょう。黄忠殿もご助力お願いできますか?」

「えぇ。少し休ませてもらったから大丈夫よ」


函谷関上の三人は、鬼の流出を少しでも防ぐことに専念した。




――――

――




「か、一刀さま!大きな鬼がこちらに向かってきます!」


周囲の警戒をしてたころが叫ぶ。


「バレたか!?迎撃を…」

「オレ一人でいい。テメェらは絡繰護っとけや」


そう言うと小夜叉は単騎で駆け出した。


「あ、おい、ちょ…待ちぃ小夜叉!」

「待って、霞!」


小夜叉を追いかけそうになる霞を止める。

いま霞に抜けられたら戦線が崩壊しかねない。


「今は小夜叉を信じよう!俺たちは雲梯の防衛に集中するんだ」

「…了解や!」

「隊長ー!組み立て終わったでー!」

「タイミングが良いんだか悪いんだか…よし!じゃあ少しずつ進んでいこう!」


雲梯から延びた縄を森一家の力自慢たちが引っ張ると、ゆっくり車輪が動き出す。


「前曲を翠とタンポポ。後曲を霞と沙和。両翼を残りの森一家が固めてくれ!」

「「「応っ!!!」」」


雲梯を大将とした陣形を整える。

残りの面子は後ろから押す係だ。

目指すは…函谷関っ!


「進軍、開始!」




――――

――




「ん?」


敵の攻城兵器目掛けて走る鬼。

その目に、前方から小さな人間が走ってくるのが見えた。

背丈は小さいが、槍を手にしているところをみると兵なのだろう。

あの様子だと自分を止めに来たのか、と鬼は思った。


「次から次へと羽虫羽虫…バカにしないで頂きたいものですね」


鬼は足を止め、かの者を迎え撃つことにした。


「嬲り殺した死体でも見せ付ければ、向こうの態度も変わりましょう」


ニヤリと口角を上げる。

そのうちに兵は見る見る近付き、地を蹴り宙を舞った。

そして突進の勢いそのまま、身の丈以上の槍を横に薙ぐ。

受け止めてやろうか、弾いてやろうか。

そう思案していた鬼に、第三の選択肢を取らせたのは、本当に直前だった。


「つっ…」


後ろに一歩引いた鬼の頬を、僅かに穂先が掠める。

切り裂かれた肌からは血が流れ出す。

人の身であった時とは比べ物にならないほど強靭な肌。

生半可な矢や刀では傷をつけることすら能わない身体を、いとも簡単に切り裂いた。


「チッ!浅ぇか」


舌打ちする少女に、鬼は鬼になって初めて、恐怖を感じた。




――――

――




「あ…」


遠目にも見えていた鬼の巨体が消えた。

小夜叉が見事討ち果たしたのだろう。さらに関の方へ駆ける金色の髪が揺れる。


「大型の鬼は倒れたぞ!みんな、速度を上げるよ!」

「「「応っ!!!」」」


邪魔するものがいなくなった俺たちは、雲梯の速度をさらに加速させた。




――――

――




函谷関の上では、必死の攻防が続いていた。

紫苑、雛、湖衣が手練とはいえ、如何せん鬼の数が多すぎる。

函谷関の向こう、関中側の道には鬼で埋め尽くされ、函谷関を登ろう、破ろうとひしめいている状態だ。

それらをなるべく登らせないように、越えさせないように、そして自分たちの身を守りながら戦うとなると、骨が折れる。


「こ、黄忠さま!!」


そんな折、紫苑の部下が突然大声を上げた。


「どうしました!?」

「あ、あちらから、ものすごい速度で駆けてくる者が…」


兵が指差す方向は、関中側ではなく中原側。


「手に槍を持ち、金色の髪を靡かせ、や、夜叉のような表情をした…」

「あー、それは多分小夜叉だねー」

「大丈夫です!それはお味方です」

「み、味方、ですか…?」


この兵にはそうは見えないのだろう。

それは、二人にも想像に難くは無い。


「……ひゃーーーっ」


耳に届いたのは、雛と湖衣には馴染みの、紫苑らにとっては初めて聞く奇声。


「こ、ここ、黄忠さま!かの者、関の壁をはは、走って登って…」

「っっはーーーー!!!!」


奇声とともにぴょーんと飛び出た金色の夜叉。

そのまま周りにいた鬼を文字通り、掻き消す。

異常な身体能力に表情。

知らぬ者が見たら、確かに鬼の一味にしか見えない。


「でりゃあぁぁ!!」


小夜叉は瞬く間に関上の鬼を駆逐してしまう。


「雛ぁ!獲物はどこだぁ!?」


まだまだ狩り足りない!とばかりに、爛々と輝かせた目を雛に向ける。


「あっちー」


ピッと関中側を指す雛。


「おほっ!こりゃ大漁だなおいっ!」


下を覗きこみ、思わず涎が垂れそうになる小夜叉。

鬼の大群を見て恐怖の悲鳴ではなく、歓喜の声を挙げるのは、世界広しと言えど小夜叉くらいであろう。


「ひゃっっっはぁ~~~~!!!!」


小夜叉は縁に足をかけたかと思うと、地上の鬼の群れ目掛け、迷わず飛び込んだ。

ドーンと轟音を立てて着地したところに、ポッカリと鬼の穴が空く。


「鬼が…宙を舞ってますね」


その光景に、湖衣は思わず半笑いを浮かべた。

つられて雛や紫苑、そのほか戦っていた兵も、ものすごい勢いで減っていく眼下の鬼を呆然と眺める。

その時、背後でドンッという音がした。

雲悌が横付けされたようだ。

すぐにダンダンッと誰かが登ってくる音がし始める。


「紫苑っ!」


真っ先に駆け上がってきたのは一刀だった。




――――――

――――

――




小夜叉が壁を登っていってしばし、鬼はほとんどこちらに現れなくなった。

そのおかげもあり、雲悌は妨害を受けることなく、スムーズに函谷関へと近づけた。

もうすぐ、紫苑を助けられる。


「はーい!ちょっとずつ速度落としてやー!!」


関は目の前。真桜が最後の調整に入る。


「おーらい!おーーらい…止まれーー!」


進行方向とは逆側についた縄をみんなで引っ張り、真桜の指示通りの場所に止める。


「今度はそっちや!左右息を合わせるんやで!せーのっ!」


一、二、という掛け声をかけながら、雲梯の左右についたハンドルを翠とタンポポが同時に回す。

すると、充分高い雲梯の上から伸びる二つ折りにされた板がゆっくりと動き出す。

跳ね橋のような要領で板が伸びると、その先端がちょうど函谷関を越える。


「紫苑!」


その瞬間、俺は雲梯を駆け上った。


「一刀!?」

「おいっ!ご主人様危ないって!!」


後ろからの声は聞こえないフリをして、一気に頂上へ。


「紫苑!!」


関の上を見渡す。

雛…湖衣…小夜叉は…いない。

見たことのある紫苑の兵たち、そして…


「ご主人、様…?」


目をまん丸にした紫苑が、そこにいた。


「紫苑っ!」


側に駆け寄ると、思い切り抱き締める。


「良かった…紫苑、無事で……」

「ご主人様……どうして、ここに…?」

「それは後で話すよ。大変だったんだろ?今は、いいよ」


優しく、子供をあやすように、右手は頭に添え、左手でゆっくりと背中を撫でる。


「ご主人さ…ぁ、う……ああぁぁあ~~~!!!」


箍が外れたように紫苑は泣き出した。

以前の、翠たちを助けられた過去ですら、助けることが出来なかった紫苑。

かなり厳しい、死の恐怖に直面してきたのだろう。

今まで紫苑を助けてあげられなくてゴメン、という気持ちを込めながら、紫苑の心を受け止めた。






「なんや二人とも、ヤキモチ焼いとるんか?」


霞は羨ましそうな、恨めしそうな目で一刀たちを見ていた翠と小蓮を、軽く小突いた。


「あ、あたしは別に…」

「ふんっ!今日は紫苑に譲ってあげるんだから。大人の女は待てる女なのよ!」

「素直やないなぁ~」


羨ましい半面、小蓮はちゃんと紫苑の気持ちも分かっているのが分かる故に、霞は苦笑う。


「さ、ウチらは下で警戒しとこか。蒲公英は…しばらくエェか」






蒲公英は少し離れた場所から、翠たちとはまた違った視線を、一刀と紫苑に送っていた。


世界に異変が起こってすぐに離別した翠と紫苑。


自分が一番若かったから。

自分が一番未熟だったから、散らせてしまった命。

一番最後まで生き残ってしまったからこそ、今まで誰より悔いてきた。

紆余曲折はあったが、ようやく二人とも助けることが出来た。


「……よかった」


穏やかな顔で雲梯を降る蒲公英の目からは一筋、光るものが落ちた。





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