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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
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一章・壱ノ上 ~駿河の動向~

DTKです。

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、第6作目です。


今回はタイトルの通りです。






「くそっ!」


剣丞は愛刀を袈裟に薙ぐ。

ドオッと倒れる敵兵。


「はぁ……はぁ……」


謎の白装束の集団に囲まれ、一分とも一時間とも感じられる時間が過ぎた。

襲われる覚えなど無いが、敵意を持って武器を向けられる以上、抵抗しないわけにはいかない。

個々人の技量は剣丞のほうが圧倒的に勝っているのだが、さすがに多勢に無勢。

護衛の鞠ともはぐれてしまい、絶体絶命の危機だった。






――――――――

――――

――






「小波ちゃんから、まだ連絡ないですか?」


評定に顔を出したひよは、開口一番、そう尋ねた。

小波が斥候に出て五日、そして音信不通になって三日ほど。

どこかに潜入するにしても、定期連絡は入れるはずだし、ここまで連絡が無いとなると、不測の事態が起こったとしか思えなかった。

緊急的に今ここ、駿府館にいる剣丞隊の面子、俺、ひよ、詩乃、そして駿府の屋形となった鞠が集まり、評定を開いたのだった。


「残念ながら、まだ何の連絡もありません」

「そう、ですか…」


詩乃の答えに落胆するひよ。


「ころと小夜叉の方は?」

「そちらとは早馬を交わしていますので、問題はありません」


今、ここ駿河では不思議なことが起こっている。

駿河の国だけ切り取られたように、どこか別の場所に飛ばされたようなのだ。


最初は、届くはずの物資が届かない、という些細なことから発覚した。

調べてみたら四方、駿河の国境であろう形に見事に切り取られ、荒野に放り出されていた。

駿河湾を望んだところ、海が無かったのを見た時は度肝を抜かれた。

自分の目で確かめたわけじゃないが、富士山もスッパリいってるらしい。


不幸中の幸いだったのが、駿府の街にまだあまり人が居なかったこと。

どちらかと言えば、漁師の人の混乱が大きかった。

とりあえず蔵を開けて、生活の保障をしつつ、周囲の村々には、ころと小夜叉を派遣して慰撫と調査に回ってもらっている。

まぁ、どういう原理か分からないけど、川は流れてたりするので、農家の人にはほとんど影響が出ていないらしく、ころと小夜叉が言うには、全く気付いていない村もあったくらいだ。

そんな折、現状打破のため、駿河の外の調査を小波にお願いしたのだが、数日で小波との連絡が途絶えてしまったのだ。


「で、今後の方針だけど……」

「却下です」

「ちょ…まだ俺なにも言ってないけど」

「目を見れば分かります。どうせご自分で偵察に行くと、そう仰るのでしょう?」

「……さすがは詩乃」


完全に見抜かれていたようだ。両手を挙げて降参のポーズをとる。


「ダメですよお頭!お頭がそんな危ないことするなんて絶対ダメです!」


心配性のひよも反対のようだ。


「でも、ここで誰かが出なきゃ小波を見殺しにすることになるだろ?」

「それは、そうですけど…」

「とりあえず、これを頼りに小波が最後に連絡をくれた場所まで行くだけにするからさ」


これ、とは小波が定時連絡時に伝えてくれた大まかな距離や方角、ポイントポイントで目印になるものなどを、絵地図にしたものだ。

往復で三日か四日程度の距離を最後に更新が止まっている。


「確かに、小波さんは心配ですが、せめてころと小夜叉さんが戻ってきてからでも、遅くはないのでは?」

「予定では確か二人は四日後くらいに帰ってくる予定だろ?今から出れば、ちょうど同じ頃に帰ってこられるし、そこで領内外の様子を報告しあう大評定を開くってことにすれば効率的だと思うんだけど?」

「……分かりました。それでしたら――」

「鞠も行くのっ!」


鞠が右手を上げる。


「鞠さん……鞠さんは一応駿府のお屋形様となられたわけですし…」

「屋形になっても、鞠は剣丞の護衛なの!」

「う~ん……」


詩乃は額を押さえる。

まぁ、詩乃の言うところ、俺の無謀な行動に、常識的に考えれば無茶を言い出す鞠。

頭の痛いところだろう。

でも、現状を考えれば、俺が出て鞠が護衛についてくれる形が最善の選択なはずだ。


「はぁ…分かりました。ではお二人に、外の偵察と小波さんの捜索をお願い致します」

「おう!」「分かったの!」

「しかしくれぐれも。くーれーぐーれーも!無茶はなさいませぬよう、重ねてお願いします。

 小波さんの連絡が途絶えた地点まで行ったら、必ず戻ってくること。分かりましたね?」

「うん、分かった」


不安です、と頭を抱える詩乃。

気をつけてくださいね、剣丞さま!と、心配してくれるひよの頭を撫でる。


「ありがとうな、ひよ」

「えへへ~」


「はぁ……」


惚れてる弱みなのでしょうかね。

ため息を一つつくと、こっそりと頭を剣丞に差し向ける詩乃だった。






………………

…………

……






「…これ、川……か?」


駿府を出て二日目。

小波が伝えてくれた最後の地点が『大河の川岸』だった。

川を渡る手段を探します。というのが最後のメッセージだったのだが…

目の前に広がる川は、大河と呼ぶのもおこがましい、対岸が見えないほど大きな川だった。


「はぁ~…大井川よりも広いの~」


駿河と遠江の国境を流れる大井川。

江戸時代には『越すに越されぬ大井川』と謳われた川だ。

大井川もかなりの川幅と水量がある川だが、この川の前ではそれも霞んで見えた。

ちなみに大井川が国境なので、今は大井川もきっちり半分になってたりする。


(この川って、もしかしたら…)


俺の中で予感めいたものが像を結ぼうとしていた。


「これからどうするの、剣丞?」


が、思索は鞠によって遮られる。


「ん?そうだな……」


川の濁り具合や流速、川幅を見ても、如何に小波とはいえ、泳いで渡れるとは思えない。

また左右をざっと見渡しても、人里らしき場所も、渡しをしている波止場のようなものも無い。

だからまず間違いなく、何事も無ければ、こっち岸にいると思うんだけど…


「鞠のお守り袋も、反応無いよね?」

「うん…ないの」


俺と鞠の首にはお守り袋が下がっている。

この中には小波の陰毛が入っており、これを持っていれば小波のお家流・句伝無量で連絡を取る事が出来るのだが、距離が離れすぎると使えなくなる。

単純に怪我で動けないとかで、俺たちに念が届かない範囲で足止めせざるを得ない場合もあるかと思い、定期的に呼びかけてはいるが、反応は無い。


「とりあえず、川上に少し歩いてみようか」

「分かったの!」






…………

……






「な~んにもないの~」

「そうだなー」


しばらく上流に向かって歩いたが、取り立てて目に付くものはない。

人家は愚か、川の周りには大きな木などもほとんど生えていない。

恐らく、この川が度々氾濫しているのではないだろうか。

だとしたら、ものすごく広大な範囲を巻き込む氾濫だ。

全てにおいて、桁違いの川だということになる。


「どうする、剣丞?」

「そうだなぁ……」


見渡す限り、小波が隠れるような場所も休めるような場所もないし、ましてや調査すべき場所も見受けられない。


「う~ん、下流だったかなぁ?」


渡るなら、川幅が狭くなる上流だと思ったが、流速が弱まる下流に行ったのかもしれない。

…まぁ、この川相手じゃあまり関係ないけど。


「じゃあ、ちょっと戻って下流のほうも調べて、それで何も分からなかったら、いったん戻ろう。詩乃との約束だしね」

「うん…」


しょんぼりと肩を落とす鞠。

小波を見つけられずに戻るのが残念なのだろう。


「もしかしたらさ、俺たちと入れ替わりで小波はもう駿府に戻ってるかもしれないよ?」


確率は極めて低いが、努めて明るく振舞う。


「そう、だね…じゃあ、早く戻るの、剣丞!」


察してくれたのだろう。

そう言うと、鞠も明るく、率先して踵を返した。


「ほらほら剣丞ー!早くしないと日が暮れちゃうのー!」

「はいはいっと……ん?」


見渡す限り地平線だった目の端に、何か見えた気がした。


「どうしたの?」

「ちょっと鞠、あれ……なんか白いのがいっぱい動いてないか?」

「ん~~~??」


俺の視力じゃ良く見えないけど、時代が違うせいか、戦国の武将たちは、総じてみんな目がいい。

鞠ならあれが何か見えるかもしれない。


「人…みたいなの。すごいいっぱい。みんな白い服着てるの」

「なんか気味が悪いな」

「こっちに来てるみたいなの」

「こっちって……」


こっちには何もないよな?


「まさか俺たちが目的なんてことは…」


ないと考えたい。

もっと向こうに目的地があると信じたい、なぁ。


「どうする、剣丞?」

「逃げる……わけにもいかないし、初めて会う人だし、ちょっと話を聞いてみようか?」

「ん~…鞠、ちょっと嫌な感じがするの」

「そうか……」


こうした時の鞠の勘は当たることが多い。

そうこうしてる間にも、白装束の集団はものすごい勢いで、みるみる近付いてくる。


「とりあえず、何があってもいいようにはしておいて」

「分かったの」


鞠は腰の左文字の鯉口を少し切る。

と、白装束の集団は、俺たちに突っ込んできた。


「ちょっ!」

「剣丞ーーーぇ………」


満員電車にさらに人が乗ってきた時のように、人に押されて足が宙に浮く。

鞠はそれに巻き込まれて、遠くへ運ばれてしまったようだ。


「ちょ、ちょっとっ」


半分胴上げされているように、身体が人の塊の中でふわふわと浮かぶ。

そんな中、大量の人間が行進していたため発生したと思われる砂塵が俺たちを包む。


「ごほっ!……ごほっ!!」


視界が奪われる。と同時に、俺を包んでいた圧力が消える。


「いてっ!」


当然、俺は地面に尻から落ちる。


「っっつっーーー」


痛めたお尻をさする。

砂塵が晴れ、視界が開ける。と、


「な、なんだぁ?」


白いマントのようなものを羽織り、これまた白い頭巾のようなものを被った白装束の集団。

その集団が、俺の周りをぐるりと囲んでいた。

不気味なその光景は、某映画のお友達に囲まれたような気分だ。

そんな馬鹿なことを考えていると、正面にいた一人が一歩進み出た。


「お前は北郷一刀か?それとも新田剣丞か?」

「――――っ!?」


なん…だって?

何で俺と伯父さんの名前が、こいつらの口から出てくるんだ?

何者だ……こいつら…


「お前は北郷一刀か?それとも新田剣丞か?」


機械のように、同じ言葉を同じトーンで繰り返す白装束。

不気味さしかない。

鞠は……?


…………


耳を済ませるが、鞠の声は聞こえない。

鞠のことなら剣丞剣丞と声を上げてるはず。

声すら届かない距離まで連れ去られてしまったのか、あるいは……

鞠の強さなら、万が一にもないと思うけど、こうして待っていても仕方がない。

現状を打開するしかないか。

そう決心すると、目の前の白装束を睨み付ける。


「…俺が北郷一刀、だとしたら……どうするんだ?」


鎌をかけてみる。

顔立ちは少し似てるかもしれないけど、年齢が違いすぎる。

本当に俺と伯父さんを知ってるとすれば、こんな嘘に引っかかるはずはない。

が――――


「世界を穢し罪、その身で((贖|あがな))え!貴様を滅し、私たちは自由になるのだ!!」

「うおっ!!」


いきなり斬りつけてきた。

どこに隠し持っていたのか、全員長刀を手にしている。

後ろにいる連中は、儀礼のように切っ先を空に向けて、絶対に逃がさないという意志を表しているかのようだ。


「ちきしょっ!」


事ここに至ってはやむを得ない。

腰の刀を抜き、戦闘体勢をとる。


「俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだよっ!!」






大見得を切ると、刀を正眼に構える剣丞。

白装束の大軍を相手に、絶望的な勝負を挑むのだった。





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