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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
39/107

弐章・弐ノ壱ノ肆 ~鬼武蔵と姉明命~

どうも、DTKです。

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、39本目です。


駿河編小夜叉の章?が今回で一区切りです。

次回からは駿河編は一休みで、一刀らの陳留編に入ります。

ようやくまともにもう一人の主人公を描けます^^


なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。

その辺、お含みおき頂ければと思いますm(_ _)m







頭を過ぎったのは、母の姿だった。

いつか越えてやりたいと思っていた、あの背中。

今にして思えば、死ぬ覚悟を決めていた、あの目。

見ることが叶わなかった、母の最期の瞬間に思いを馳せる。






母もこんな心地だったのかな?


死にたくはない。

殿や剣丞を邪魔する輩をぶち殺してやりてぇし、もっともっと強ぇ奴とも死合いてぇ。

でも…大切な奴を護って死ぬってのは、こんなにも誇らしく、清々しいもんなんだな。


剣丞を護ったわけじゃねぇが、ころならオレよりずっと器用だから、これからも剣丞のことを色々と助けてやれるに違いねぇ…








すまねぇな、各務。

森一家のこと、任せたぜ。


すまねぇな、お蘭、お坊、お力。

次はお前らが、殿と剣丞を護るんだぞ。


すまねぇな、剣丞。

不甲斐ねぇけど、先に母のところに逝くぜ。








……祝言、挙げたかったな。








――――

――




小夜叉が戦っている集落まで辿り着いた剣丞たち。


「あちらです!」


ころが指差す方には、鬼の小山が見えた。

あの中に小夜叉がいるのか。

現有戦力でどうにかできる数ではない。


「雫!」

「はい!剣丞さまが敵後方を撹乱。その隙を突き、明命さんが小夜叉さんを救出。その後、速やかに撤退します」

「上等!」


剣丞が全てを言う前に献策をする雫に、思わず笑顔で頭を撫でる。


「それで行こう。明命姉ちゃん、よろしく!」

「了解です!」






早く来やがれ、鬼ども…


小夜叉は精も根も尽き果て、大の字に倒れていた。

しかし、散々に散らされた同胞の姿が焼きついているのか、鬼は小夜叉を囲んでいるものの、なかなか動こうとしない。

人間無骨を未だに握っているのも、鬼を警戒させている理由の一つだろう。


一方の小夜叉は、澄み切った心持ちだった。

常に戦いの中に身を置いてきたが、死を覚悟したのはこれが初めてだった。

しかし、全力を出し切り、護るべきものを護った。

そして残った想いを吐き出した今、悟りにも似た境地にあった。

のだが…


「――ちっ!」


舌打ちをし、目を見開く。


「嫌なもの…思い出しちまったぜ」


小夜叉の脳裏には、いつか見た、祈りを捧げている梅の横顔が映った。

全く理解できなかった穏やかな顔。気に食わない顔。


オレも、あんな顔をしていたのか?


「んな顔して…死ぬわけにゃいかねぇなっ」


最後の力を振り絞り、愛槍を杖に立ち上がる。


「鬼武蔵に相応しい死に顔は、敵の返り血浴びながら笑った顔がお似合いよ!さぁ来いゴミども!小夜叉最期の死に舞台だぁ!!」

「「「ギャァァァアアァァ!!!」」」


小夜叉の口上を遮るように鬼の絶叫が鳴り渡る。

小夜叉に襲い掛かる喚声でも、小夜叉に襲われた悲鳴でもない。

何故か輪の後方から聞こえてきた。

と――


「あなたが小夜叉さんですね」


突然音もなく、まるで小波のように、小夜叉の眼前に少女が現れる。


「誰だ、テメェ!?」

「御免!」


小夜叉の問いには答えず、小夜叉を抱え上げる少女。


「お、おい、コラっ!」


見知らぬ少女に抱え上げられ、小夜叉は抵抗を示す。

しかし、消耗しきった小夜叉の抵抗など物ともせず、また小夜叉の重みなど感じさせずに、少女は高く跳んだ。

二人は鬼の包囲網から姿を消した。






「シッ!」


剣丞の刀が振るわれるたび、鬼の身体には確実に傷が刻まれる。

相変わらず、鬼に対する効果は絶大だ。

しかし――


「やべっ…」


別の鬼からの攻撃をすんでで避け、一度大きく間合いをとった剣丞。

武器についてはこちらが有利だが、如何せん数が違いすぎる。

ころと雫は戦力にならないので、剣丞の後方、村の入り口でいつでも逃げられるよう、馬と共に待機してもらっている。

突破されれば、二人に鬼の手が伸びてしまう。

しかし、なるべく鬼の目を自分に引き付けなければならない剣丞は、難しい戦いを強いられてていた。


「まだなのか、明命姉ちゃん!?」

「剣丞さん、お待たせです!」


剣丞の言葉が聞こえていたかのような時機で現れた明命。

肩には小夜叉が担がれている。


「ナイスタイミング!」

「け、剣丞だとっ!?」


剣丞の声に驚きの声をあげる小夜叉。


「小夜叉、助けに来たよ。よし、それじゃあ退こう!」


とは言ったものの、明命は小夜叉を背負っていて戦えない。

鬼もただでは見逃してくれるはずもなく、どうしたものかと剣丞が思案していると、


「剣丞さん、これを!」


明命が胸元から何かを二つ取り出し、剣丞に渡す。


「こ、これは…」


剣丞の手元には、拳より少し大きな紙張りの玉が二つ。

まだ少し温かい『それ』を、剣丞はマンガなどで見覚えがあった。


「真桜さん謹製の煙玉です!こんなこともあろうかと、常に持ち歩いていたのです!」

「さっすが明命姉ちゃん!ご都合主義バンザイ!」


剣丞はポケットから火打石を取り出すと、手際よく導火線に火をつける。


「くらえっ!」


放物線を描き、敵軍前方に着弾した煙玉から、濃度の濃い白い煙が大量に湧き出る。


「真桜姉ちゃん、相変わらずいい仕事してるぜ!」


剣丞たちから鬼は全く見えなくなった。ということは逆もまた然り。


「今のうちに逃げよう!」


明命と真桜のおかげで、剣丞たちは鬼から逃げおおせることが出来た。






…………

……




「ここまで来れば、大丈夫かな…」


元々乗ってきた馬に分乗し、かなりの距離を稼いだ剣丞たち。

剣丞は一人で一頭に乗っているが、雫はころと、明命は小夜叉と乗っているため、馬の負担も大きい。

この辺で一度休憩を挟むことにした。


「け、剣丞…」

「小夜叉!」


蚊の鳴くような声で小夜叉が剣丞を呼ぶ。

明命が小夜叉を馬から下ろし、剣丞は優しく抱きとめる。


「大丈夫か?」


まじまじと見ると、致命傷はなさそうだが、大小様々な傷が小夜叉の肌を埋めていた。

意識もハッキリとはしていないようだ。


「んなこたどうでもいい……ころは…ころは無事か?」

「小夜叉ちゃん!」


馬から降り、小夜叉が心配で近寄ってきたころが、小夜叉に縋る。


「ころか…」

「うん!小夜叉ちゃんのおかげで無事だったよ!ありがとう、小夜叉ちゃん!」


小夜叉の手を握りながら、涙ながらに感謝を示すころ。


「そっか……ははっ…」


その様子に笑みを浮かべる小夜叉。


「なぁ……剣丞」

「なんだ?」

「オレは……よくやったか?」

「あぁ。ころを護ってくれて、ありがとう」


そう言い、頭を撫でながら、少しクセのある小夜叉の髪を優しく梳く。


「でも、小夜叉が無茶を…」

「そっか…へへっ……なら、良かっ、た…ぜ……」


ガクッと、小夜叉の身体から力が抜ける。


「小夜叉!」

「大丈夫です。眠ってしまっただけなのです」


そう言うと、明命は剣丞に小夜叉の身体を横たえさせる。


「剣丞さま。今日はこの辺りで野営をしましょう。小夜叉さんをこのまま動かすのは得策ではありませんし、ころも少し休ませませんと」

「でも…」


こうしている間にも、駿府屋形に魔の手が伸びているかもしれない。

そう思うと、一刻も駿府に早く帰りたくなる剣丞。

そんな剣丞を、


「私も雫さんの意見に賛成です」

「明命姉ちゃん…」

「小夜叉さんなら、一晩ぐっすりと休めばきっと元気になります。ころさんも、今は足を休ませることが何よりも大事なのです」


明命は諭す。


「分かってるけど…」

「剣丞さん。あなたは大切な人に無理をさせてでも、他の大切な人を護りたいですか?」

「えっ…?」

「剣丞さんの気持ちも分かりますけど、今は無理をするべき時ではないのです。駿府屋形の仲間を信じ、今は休みましょう。休むことも大切なお仕事です。焦りは禁物なのです」


諭すような口調から、ニッコリと笑顔を見せる明命。

あぁ…やっぱり、姉ちゃんは姉ちゃんなんだなぁ、と剣丞はしみじみと感じた。


「分かった、姉ちゃん。今日はこの辺で野営しよう」

「はいっ!」


最後には、大輪の笑顔の花を咲かせた。


「それでは明命さん、場所の選定と設営を手伝って頂けますか?」

「了解です!」

「あ、俺も手伝うよ」

「いえ、剣丞さまはころと小夜叉さんについていてください」

「こっちは二人で大丈夫なのですよ」


そう言って二人は並んで、近くの森へ入っていった。


「すいません、剣丞さま。こんな時に…」


ころがすまなそうに肩をすぼめる。


「いいんだよ。明命姉ちゃんが言ったとおり、俺も焦りすぎてた。今はひよや詩乃たちを信じて、ゆっくり休もう」


ころの隣に腰を下ろし、ころの頭に手を乗せる。


「…はいっ」

「小夜叉も、ころを護ってくれて、本当にありがとうな」


普段からは想像もできない、童のように穏やかな顔で眠る小夜叉の頭も撫でる。


「ん…んぅ……」


気持ち良さそうな声を出す小夜叉。

思わず目を合わせて微笑む二人。

そんな二人の横顔を、夕日が朱に染めた。


こうして剣丞たちは、しばしの休息を取るのであった。






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