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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
30/107

零章・壱ノ伍  ~あと一歩~

DTKです。

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、30本目です。


そろそろ零章も終盤。

今しばし零章にお付き合いいただければ幸いです^^


文中に『丈』という単位が出てきますが、一丈=約3mで計算しています。


なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。

その辺、お含みおき頂ければと思いますm(_ _)m




実は、星は傷だらけだった。

返り血で隠れているが、大小様々な傷を負っている。

満身創痍だ。


定軍山は敵兵で埋め尽くされていた。

そこを無理に突破したこともあるが、何より兵一人一人が強い。

魏の精兵の練度と、呉の兵の気概を兼ね備えているような強さを覚えた。

しかし、文字通り、帰り道は一人の命ではない。

趙子龍の決死行が始まった。






速度的には登るより降りる方が圧倒的に有利だが、敵も馬鹿ではない。

兵を伏せたり、関に拠って星の襲来に備えていた。


しかし、勝手知ったる自領の山。

璃々と遊びまわったり、ふらりと散歩したりと、星にとって定軍山は庭のようなものだ。

なので、関を迂回するため崖を飛び降りたり、伏兵の裏をつき、逆に後背から襲い掛かったりと、武力知力を総動員し、定軍山は何とか突破した。




――――――

――――

――




「ふぅーー……ふぅーー……」


定軍山からしばらく、敵の影がないところで手綱を緩めた。

息を何度も深く長く吐く。


流れ矢の一つも許されない極限の緊張状態であったため、一度気を緩めたのだ。

この間、太刀筋がゆっくり見えたり、飛来する矢の軌跡が見えたりと、不思議な感覚を覚えていた。

そのおかげで、璃々を山から無傷で降ろすことができた。

ただ、頭が酷く疲れた。


「ふぅ…」


もう一つ、今度は小さく息をつく。


「星お姉ちゃん、だいじょうぶ?」


珍しく息を乱す星に、璃々が心配げに声をかける。


「あぁ…大丈夫も大丈夫だ。璃々の方こそ怪我はないか?苦しくはないか?」

「うん!星お姉ちゃんのおかげで、璃々どこもケガしてないよ!」

「そうか…なら今しばらく、私の平たい胸で辛抱してくれ」


冗談を飛ばし、余裕を見せる。

あとは陽平関前に布陣している敵を突破し、戻るだけだ。

星は手綱を軽くしごいた。






――――――

――――

――




「うぅ~~~……星はまだなのかーーー!!」


関の上から敵軍後方を見ながら、地団太を踏む鈴々。

そろそろ星が言った二刻が経とうとしていた。

輜重の準備は既に整い、一部は先行して剣閣方面に撤退させてある。

あとは星の到着を待つだけなのだが…


「ふむ…して、綾那、歌夜よ。お主らの国の兵数はどれくらいおるのだ」

「およそ、一万ほどです」


鈴々がずっと星を気にしている最中、桔梗は綾那と歌夜から様々なことを聞いていた。


突如現れた土地の名が『三河』であること。

その土地を治める領主は『松平』という姓であること。

二人はその松平の家臣であること。

そして、三河が突如現れる(向こうの感覚で言えば、元々の土地から切り取られる)少し前から、主君の様子がおかしくなり、無体を働くようになったらしい。

二人はそれを諌めたところ、兵を差し向けられたとのことだ。

兵卒や同僚の様子もおかしかったが、同胞に手を出すわけにもいかず、逃げていたらしい。


ここまでの説明は、全て歌夜がしていた。

もう一人の綾那は、主君の変貌と仲間に槍を向けられたことで、精神的に参っているようだ。

一度興奮状態になったが、それを過ぎると、糸が切れたように静かになってしまった。


「それだけおるとなれば、定軍山にも兵が向けられている可能性は充分にあるな」


物見の報告によれば、陽平関前にいる兵は約五千前後。

歌夜の言が正しければ、まだ半分ほど兵が残っている。

松平が漢中の完全制圧に乗り出すなら、定軍山も押さえるべき地となる。


「星の奴、無事だとよいが…」

「桔梗っ!!星!星なのだ!!」


上から高揚した鈴々が降りてくる。


「まことかっ!よし、わしらも打って出て、星の動きを助けるぞ!」

「応っ!なのだっ!!」


蛇矛をぶん回し、やる気充分の鈴々。


「綾那、歌夜。お主らは、この関を守っていてくれ」

「えっ…」


突然のことに面を食らう歌夜。

桔梗らが敵と見なしているものたちの仲間だと告白した自分たちを、後背に残すことになる。

そんな不安が目に出ていたのか、桔梗はニヤリと笑う。


「わしは曲がりなりにも((武士|もののふ))として研鑽を重ねながら、この齢まで年月を重ねておる。目と目を合わせ言葉を交わせば、敵味方はともかく、人の正邪くらいは見極められると自負しておるでな」


そう言いながら、傍らに置いていた豪天砲を担ぎ上げる。


「同胞と戦え、とは言わん。ただもし、わしらが突破されたときは…関にいる兵らを、守ってやってくれんか?」

「……分かりました。この命に代えても」

「…………」


まだ綾那は吹っ切れていないようだが、歌夜は強い決意を持った目をしてくれた。

自分を信じてくれた人を裏切るわけにはいかない、と。

もしものときは、同胞に槍を向けてでも、事を為さねばならない、と。


「うむ。ならばいくぞ、鈴々!」

「了解なのだっ!!」




――――――

――――

――




陽平関から狼煙が上がった。

こちらの存在に気付いてくれたようだ。

恐らく、向こうも討って出てくれるはず。


璃々を助けきる最終関門。

山を下るときのような勢いも、伏兵を避けたような裏道もない。

陽平関まで、小細工無しの正面突破。


「すぅ~~…………ふぅ~~…………」


深呼吸をし、一度頭を真っ白にして、集中を高める。


「いくぞ、璃々!私に力いっぱい掴まっていてくれっ!」

「うんっ!」


胸に強く感じる、守るべき存在。


「はいやぁ~!!」


馬も一鳴き、猛然と駆け出した。




――――

――




「突撃なのだーー!!」


鈴々を先頭に、約五百の槍兵が突撃をかける、が…


「槍衾、叩けっ!!」


相手の槍兵が掲げていた、二丈ほどはあろうかという槍が、穂先を揃えて叩き下ろされる。


「にゃにゃっ!?」


鈴々と言えど、その揃った穂先の壁を前にして、受け止めることしかできない。

部隊の足が止まる。そこへ、


「射てーーー!!」


弓矢の雨が降り注ぐ。


「ぐはぁっ!!」

「うわあぁ…!」


鈴々の部隊に被害が出る。


「くっそお~~!!」


頭に血が上った鈴々は、単独で再突撃をかけようとするが…


ダンッ!ダンッ!


後ろから高速の矢が飛んできた。

それが敵兵を二人ほど吹き飛ばす。


「いったん退けぃ、鈴々!!」


豪天砲の号砲で目が覚める。

敵兵の殲滅が目的ではない。

あくまで、星の支援が目的。

敵の気を引き続けることが重要なのだ。


「分かったのだ!みんなー、いったん退くのだーー!!!」


鈴々の隊が退くのを、桔梗ら弓兵隊が援護する。

陽平関側では一進一退の攻防が始まった。




――――――

――――

――




星は奮戦していた。

相手は陽平関を向いて構えているので、後背から攻める形となった。

もちろん後備えは多少いるが、その向こうには軍の大将がいると思しき小隊が見える。

星はまず、そこを目掛けて突撃をかけた。


「あ゛あぁぁぁ~~~~!!!!」


馬をものすごい速度で繰りながら、敵兵相手に龍牙を突き、薙ぎ、払い、千変万化の攻め筋を見せる。

璃々が胸にいるため、多少窮屈ではあるが、馬上で器用に身体を入れ替えたり捻ったりと対応していた。


蝶の羽が象られた袖は、槍を振るうたび、まさに蝶のように舞い踊る。

その袖は血が乾き、どす黒く染まっており、敵兵にはさながら、地獄へ誘う黒き蝶に見えるだろう。

軍神の如き星に危機を感じた敵軍は、星を追うよりも大将を守る動きを見せる。

その隙に星は、大幅に陽平関へと歩を進めた。






一方、陽平関側。


「うりゃりゃ~~!!」


こちらでは一進一退の攻防が続いていた。

鈴々が威勢よく突っ込んでは、桔梗の援護射撃で退く。

これを何度か繰り返すうちに相手の攻め手が分かってきた。


槍衾は大勢が密集して槍を持っているために、脇からの攻撃に弱い。

右方向からの鈴々の突撃に対応できずに、槍の穂先が乱れる。

槍衾は時機がずれると威力は半減する。

その隙に、さらに鈴々が歩を進めると、矢の一斉射撃もバラバラになり、こちらも威力半減。

なので、討っては退き、討っては退きを繰り返し、少しずつ相手を削りながら、星のほうに気を向かせまいと奮闘していた。


唯一の脅威に対しては…


「――っ!桔梗!!」

「おうさっ!」


鈴々の声を受け、敵陣のある部隊に、ダンッ!ダンッ!と豪天砲を打ち込む。


パンッ!パンッ!


その直後、散発的に乾いた音が敵側から鳴り響く。

未知の兵器、歌夜の話では、火縄銃、というものだそうだ。

鉄の筒の中で火薬を爆発させ、その力で鉛玉を飛ばすという兵器らしい。

射程距離は弓よりも長いが命中精度はあまりよくない。

そのため、弓と同じで一斉射撃をしないとあまり効果がないそうだ。


なので、届きはしないが、豪天砲を鉄砲隊の前方に打ち込み、射手の誤射を誘っている。

一斉射撃でも、そのほとんどを叩き落した鈴々であれば、散発された弾ならば確実に防げる。

発射に必要な火縄が燃える臭いを鈴々はかぎ分けることができるので、察知は容易だ。

しかも、火縄銃は一発撃つと再発射にかなりの時間を要するらしい。


前線で鈴々が獅子奮迅の活躍を見せ、後方からは桔梗の絶妙な援護を見せ、戦線を保っていた。

そんな折、敵後方が騒がしくなった。


「あ゛あ゛ぁぁぁぁーーー!!!」

「星なのだ!」


星の咆哮が聞こえる。


「桔梗!!星が来たのだ!!」

「うむ。全軍、総力を持って敵に当たれ!星に敵の目を向けさせるな!星と合流次第、関に戻るぞ!」

「「「応っ!!」」」


星の生還まで、あと一歩。

蜀軍は全力で、敵にぶつかるのだった。






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