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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
29/107

零章・壱ノ肆  ~失策~

DTKです。

少し間が空いてしまいましたm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、29本目です。


先ごろ1章完結しましたが、2章突入前に今まで全くスポットの当たっていなかった地域に光を当ています。

時系列的には序章の並び、過去改変前のお話です。


漢中という地域で何が起こっていたのか?

今までに書いた話とリンクするところもあれば、これからの話とのつなぎになる部分もありますので、もしよろしければお付き合い下さいm(_ _)m


なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。

その辺、お含みおき頂ければと思いますm(_ _)m



何とか陽平関まで退いた蜀軍。

星は、内門と外門の間の広間で、鈴々や桔梗らを出迎えた。

少女らも星の後ろに控えている。


「よくぞ無事に戻ってきたな」

「星も支援ありがとうなのだ!」


陽平関近くまで執拗な追撃を受けていたのだが、関の上からの一斉射撃によって、敵軍はやや後退。

今は矢の射程の外に駐屯している。

陽平関は元々、漢中を外敵から守る関のため、漢中側からの防御力はあまり無い。

そのため、予断を許さない状況には変わりがない。


「わしは上の兵の様子を見てくる」


桔梗が息つく間もなく、広間を出て行った。



…………

……



「……さて、娘らよ。少し聞きたいことがあるのだが」


沈黙が訪れる前に星が切り出す。


「はい……なんなりと」


黒髪の少女は、ある程度覚悟はしていたのか、あまり動揺は見せない。


「まずは名前を聞かせてもらえるだろうか?あぁ、我が名は趙雲。こっちは張飛。今出て行ったのは厳顔と言う」


よろしくなのだ!と鈴々。

そんな彼女らを見やり、趙雲?張飛?と、少し首をかしげる少女。

が、やがて口を開く。


「私の名は、榊原小平太歌夜康政と言います。歌夜とお呼びください」


そう言うと、ほら、綾那も、ともう一人の少女を促す。


「……綾那は、本多平八郎綾那忠勝です。綾那って、呼んでくださいです…」

「…ふむ。あまり耳馴染みのない名だな」

「どっちかっていうと、響きはお兄ちゃんの名前に近いのだ」

「となると、異変内部は天の国なのか?」

「服はお兄ちゃんの感じじゃないけどなー」


やいやいと星と鈴々で話しているのを、不安げに見つめる綾那と歌夜。


「おぉ、すまんすまん。では綾那と歌夜よ。単刀直入に聞こう。何故、戦わなんだ」

「えっ――」


突然ぶつけられた質問に絶句する歌夜。


「見たところ、お主ら二人とも相当の使い手であろう。数の多寡はあれ、背を見せて逃げるような武人ではなかろう?」

「そ、それは……」


言葉に詰まる歌夜。声を出さない綾那。

というのも、星の指摘は図星。

二人とも腕利きの武人なのだ。


「星、きっと二人にも事情があるのだ」

「そう、その事情を聞きたいのだ。端的に言えば、お主らが敵の仲間であり、我々を釣り出すための罠にかけたのではないかと疑って…」

「違うです!!!」


ビリビリと壁が震えるような大声。

それまであまり声を発さなかった綾那の声だ。


「綾那たちを追っていたのは、確かに綾那たちの仲間ですけど……綾那たちは、ワナなんか……

 綾那たちは……そんな……うぅ…綾那たちは……綾那たちはーーーー!!!」


号泣。

涙が流れるというより、溜め込んでいたものを吐き出すような悲鳴を発する綾那。

その様子に、唖然とするほかない鈴々と星。


仲間、という聞き捨てならない言葉が入っていたが、鈴々の言うとおり、何かのっぴきならない事情があるようだ。

だが、その辺りも聞かないわけにはいかない、と星が口を開こうとしたとき、桔梗が慌てた様子で駆け戻ってきた。


「星!璃々を知らんか?どこにもおらんのだが…」

「璃々だと…?――――っ!」


星の顔から一気に血の気がなくなる。


「おい、まさか…」

「…あぁ……この趙子龍、一生の不覚」

「……定軍山に置いてきちゃったのか?」


こくり、というよりガクンと、まるで頭が鉛にでもなったかのように重々しく首を落とした。

と思いきや、ガバッと面を上げる。


「かくなる上はっ!!」


星は得物を手に取ると、馬屋に向かう。


「待て、星っ!お前、まさか……っ!?」

「桔梗っ!鈴々っ!ここの守りは任せた!」


馬に跨ってきた星。


「二刻ほど待っていてくれ!必ず璃々を連れて帰る!もし二刻で戻らなかった場合……判断は任せる。はいやー!!」


言うが早いか、馬を走らせ関を出て行った。


「バカ者っ!待たんか星!!……ちぃ!!星といい鈴々といい、どうしてこう揃いも揃って若いもんは猪揃いなんだ!?」


ダンッと壁に拳を叩きつける桔梗。


「ど、どうするのだ!?」


さすがの鈴々も狼狽している。


「……星の申したとおり、ここの守りを固めるしかあるまい」

「それじゃ、星と璃々が!」

「分かっておるが、そうするより他あるまい…」

「桔梗は星と璃々を見殺しにしてもいいと思ってるのかっ!?」

「そんなわけがあるかっ!!!」

「―――っ!」

「わしとて全てを投げ打って星の後を追い、璃々を助けに向かいたいわっ!しかし、わしらは将だ!

 二千の将兵の命を預かっておるのだ!ここで軽率な行動は取れん。わしとて…苦しいのだ……」

「桔梗…」


般若のような形相で、まくし立てた桔梗。

涙こそ流さないが、その姿は泣いていた。


「今は星を……信じるよりあるまい」

「……分かったのだ」


渋々ではあるが、鈴々も納得する。


「鈴々は正門を頼む。輜重はすぐに動かせるようにしておけ!すまんが、娘らも手を貸してくれんか?」

「あ……はい!分かりました」


こうして陽平関では、防備と移動の準備を平行して進めるのであった。






――――――

――――

――




「どけえぇぇーーーいっ!!!」


馬上の星は、鬼気迫る表情で槍を繰る。

陽平関の前の敵軍は、これをよく迎えたが、その武勇と気迫の前に突破を許した。


その敵を突破すると、ほぼ無人の野だった。

全ての目がこちらに向いていたかのか、と胸をなでおろす星。

まだ定軍山の山頂にいるはずの璃々と合流し、再び陽平関に戻るときは挟撃の形に持ち込めば無事に帰れるはず。


そんな青描写を描いていた星の目に、信じられない光景が飛び込んできた。

先程の敵が掲げていたものと同じ旗が、定軍山を登っているのだ。


「まずいっ!」


星は馬の尻を強く叩いた。






――――――

――――

――




「ひっ……ひっ……」


璃々は声を殺していた。


一人で食器の整理をしていたところ、外が騒がしくなり、気が付くと見慣れた兵たちはいなくなっていた。

いつか戻ってくるだろうと思っていたのだが、そのうちに知らない男たちが陣内に入ってきた。

璃々は慌てて整理をしていた天幕の一番奥。箱の陰に隠れていた。


「璃々、泣かないもん…璃々は、お母さんの子どもだもん…」


勇気を奮い立たせる魔法の言葉を、口の中で唱える。

そんな璃々の耳に、ザッザッ、と複数の足音が聞こえてきた。


「――――っ!」


自分の口を両手で押さえる璃々。


「――――ゃぁぁぁぁ…!」


外から悲鳴のようなものが聞こえてくる。

息をするのも忘れる。

心臓の音がやけに大きく耳に響く。


そして、


「ぎゃぁあああぁぁっ!!」


その悲鳴は、璃々が隠れている天幕の前で轟いた。

そして間髪入れず、バッと天幕の入り口が開かれる。


「――――っ!!」


思わず声が漏れそうになるのを、必死に押さえ込む。

今声を出したら、間違いなく見つかってしまう。

ペタリ、ペタリと足音が中に入ってくる。

璃々の恐怖は頂点に達した。






「璃々っ!どこだっ!?」

「!?」


耳に届いたのは聞き馴染みにある声。


「私だ!星だ!……ここにはいないのか?」

「星……お姉ちゃん…?」


震える膝、感覚のない足でなんとか立ち上がる璃々。


「璃々っ!!」


璃々の姿を覚え、駆け寄り抱きしめる星。


「すまなかった、璃々……辛い思いをさせてしまったな……許してくれ」

「うぅん…だいじょうぶ……だって璃々、お母さんの子だもん……だから泣かなかったよ。えらいでしょ…?」

「あぁ…あぁ!その豪胆ぶり。まるでお主の身体は、全て胆で出来ているかのようだ!紫苑も誇らしかろう」

「え、へへへ…」


璃々の顔に、ようやく笑顔が戻る。


「よし、では私と一緒にこの場を離れるぞ。敵もこちらに向かってくるだろうしな」

「うん、わかった!」


と、璃々が星から離れる。

そして星の全身を見て驚いた。

美しい青みがかった頭髪は、返り血を浴び、ところどころドス黒くなり、艶やかな服も真っ赤に染まっていた。

そんな璃々に視線に気付くと、


「まったく、早くここから出て水浴びでもしたいものだ」


と肩をすくめる。


「すまんな。璃々の服にも少し血が付いてしまったか…」

「ううん。璃々、こんなのへっちゃらだよ!」


星の冗句に触発されてか、むんっと胸を張ってふんぞり返る璃々。


「はは、そうか。しかし早く着替えて、私と一緒に水浴びせねばな。よし、行こう」

「うん!」


差し出される手を元気よく取る璃々。

もう、身体は震えていなかった。






定軍山を登ってくる最中に馬は潰されてしまったので、山頂に繋がれていたものを拝借する。

道中かなり無茶な動きもすることになるので、星はあらかじめ、自分と璃々を紐で強めに縛ることにした。


「少し苦しいかもしれないが、我慢してくれ」

「だいじょうぶだよ。星お姉ちゃんのおっぱいもあったかいし!」


背負った形の方が楽なのだが、後ろからの攻撃は気付けないので、胸に抱えるようにして縛る。

動きにくくはあるが、常に背中に気を使うよりは遥かにいいとの判断だ。


「でも、お母さんよりは小さいね」

「むぅ…」


グサリと、無邪気な刃が心に刺さる。

三国有数の胸の大きさを誇る紫苑。

あれと比べられてもなぁ…

星が口の中で呟く。


璃々は紫苑の娘なのだから、いつか胸の大きさで抜かれる日がくるのだろうか?

そう考えると末恐ろしく、背筋が寒くなった。

しかし、その未来を迎えるためには、璃々を守り陽平関まで戻る必要がある。

恐ろしくも愛おしい未来を守るため、星は背中で紐を強く結んだ。


「さぁ、行くぞ璃々!」


星は勇躍、馬腹を蹴った。






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