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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
18/107

一章・参ノ参 ~賭け~

DTKです。

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、18本目です。


一葉、そして双葉たち。

二つの場面で、それぞれある決断が下される…




二条館


「三千世界っ!!」


中空に浮かんだ無数の武具が、鬼の大群目掛けて踊り飛ぶ。


「「「ギャァァアァァァアアァァ!!!」」」


断末魔を上げながら、百あまりの鬼が塵と消える。

が、三好軍にはまだまだ余力がある。

一方……


「はぁ……はぁ……」


愛刀を地面に突き刺し、立っているのがようやくという風体の一葉。

脂汗をかきながら、身体全体を使い何とか呼吸をする。

心身ともに限界を超えていた。

それもそのはず。既に鬼と切り結ぶこと数刻。

さらにその中で、お家流・三千世界を三発も放っているのだ。


しかし鬼はまたぞろ沸いてくる。

前回と同等の三千か、それ以上の大軍。

仮に同等であっても、前回は剣丞と鞠に剣丞隊。八咫烏隊、姫路衆。そして織田の大軍をもってして、ようやく撃退した大軍なのだ。

如何に個の武に秀でた一葉であっても、退けることなどそもそも不可能な所業。

むしろ、これほどの大軍を数刻も釘付けにしているだけで大健闘といえる。


三千世界の間合いの外から、ジリジリと一葉の様子を窺いながら間合いを詰める鬼。

好機と見たか、数匹が一葉に襲い掛かる。

が――


「なめるなぁーーー!!!」


突き立てた刀を抜きながら、反動を利用し斬り上げる。

一刀(いっとう)の元に、鬼たちの身体を上下に分断してしまった。

だが……


「ちぃっ!」


度重なる酷使のせいか、一葉の愛刀・大般若長光も真っ二つに折れてしまった。

得物がなければ、剣豪とて戦えない。


これまでか……


目を瞑り、天を仰ぐ。

瞼の裏に映るは、想い人の顔。

誰より優しく、誰より勇ましく、誰より愛しい(おのこ)


『この世界』に彼がいることは、異変が起こったすぐ後、三千世界を通じて感じていた。

…もう一度、あの腕に抱かれるまで




「死ねるわけがなかろう!!」




得物が無ければ、如何にする?

得物が無いなら、ある所から持ってくればよい!


「須弥山の周りに四大州。その周りに九山八海。その上は色界、下は風輪までを一世界として、千で小千世界。その千で中千世界、更に千で大千世界。全てを称して三千大千世界、通称・三千世界という」


洋の東西、時の過去未来を問わずに中空に顕現した、幾千の業物。

しかし、その光景は普段と異なっていた。

いつもならば前方の敵を向いている切っ先が、全て真下、一葉を向いている。

そしてそのまま……


「三千世界!!」


ドドドッと音を立てて、次々と突き刺さる数々の武具。

舞い上がる砂塵。

自棄になって自害でもしたのか?

遠く安全地帯から眺めていた三好某は、その光景を見てそう思った。


二条館に一時の静寂が訪れる。

そこへ、スーっと、一陣の風が吹いた。

砂塵を晴らす。

そこに見えたのは……


「ふむ……なかなか手に馴染む」

「な、なんだと!?」


五体満足の一葉の姿。それどころか両の手には鈍色の(やいば)と輝く刀が握られていた。

右手には、別の世界から呼び出した自らの愛刀・大般若長光が。

そして左手には、これまた別の世界から呼び出した剣丞の刀が握られていた。

一葉の周りには、地面に突き刺さった数多の武具が、出番を待ちわびるかのように妖しく光っている。




「さあ来い下郎共よ!貴様らが散るのが先か、余の力が尽きるのが先か。存分に死合おうぞっ!!」




三千世界と繋がり続け、顕現した武具を使い、敵を屠る。

一葉がその場の思いつきで試した、最後の手段だった。






――――――

――――

――




「左翼、撃てぇ!!」


火縄銃の一斉射撃が轟く。

渡河の姿勢を見せていた松永衆の足が止まる。


「ふぅ……」


雫は一息つく。

正面、賀茂大橋では小寺家きっての剛の者が松永衆の侵攻を押し止めている。

川を渡ろうとするものあらば、両翼の鉄砲隊が行方を阻む。

さらには北と南にも兵を配し、奇襲にも備えている。

構えは万全、のように見えるが…


「ふむ…松永衆はどうにかなりそうですな」


幽がそう漏らす。

元々、松永衆の人数は五十ほどという報告を受けていた。

数や装備では負ける要素はない。

松永衆も無理をせず、鴨川を挟み賀茂大橋で睨み合う形になっていた。


「はい。ですが、いつまでこうしているわけには行きません」


こうなった以上、一葉を助け出したい。

しかし、睨み合いが続く以上ここを動けない。

なおかつ、清水寺から沸いて出た鬼の全てが二条館に進軍しているとは限らない。

だから南と、念のため北にも兵を配置し警戒をしていた。


しかし……


「「「ギャアオオォォーーー」」」


ここから北東、即ち斜め後方から、獣の雄叫びのようなものが聞こえる。


「後ろ!?」


後ろからの奇襲は想定していなかったため、備えや気構えは全く出来ていない。


「雫殿。ここはそれがしが」

「幽さん、お願いします!」


北東から出現した鬼を前に、幽が悠然と一人立ち向かう。


「やれやれ、一句詠むには少々風情が足りないのですが、仕方がありませんな…

 か楢ず栃桐樒柿柾根葉椎て松よの杉柚桑うし」


幽の言霊を受け、周囲の木々が鬼に襲い掛かる。

ある鬼は身体を貫かれ、またある鬼は絞め殺される。


「…ふむ?」


その光景を見ながら、幽は小首を傾げる。


「どうしたの、幽?」

「いえ、双葉さま。以前、金ヶ崎でも言挙げしたのですが、その時と比べ、鬼の動きが少々違うように思いましてな」

「違う?」

「えぇ。何と言いますか、どうにも野性びてると申しましょうか…」

「野性?…人から為った鬼ではない鬼。……まさかっ!?」


雫がバッと、鬼が現れた方角を振り返る。

方位は、北東。


「…なるほど。山城国が切り取られたと言うことは、叡山も無くなっていたのでしたな」

「あっ…」


雫の行動と幽の言葉で、双葉も気付いたようだ。

北東。丑寅。即ち、鬼門。

最も『悪しきモノ』が入ってき易い方角。

まして京の都は、四神相応の地。

風水学上、良くも悪くも『氣』を集めやすい土地なのだ。

その京の鬼門を護っていたのが、比叡山延暦寺だった。

しかし延暦寺は、国割的には近江国にある。

つまり今、この京の都は、魔に対する防衛装置がない状態。

魔を集めやすい土地になってしまっているのだ。


「これは、三好松永の氣に当てられて出てきたようですな」

「ど、どうしましょう…」


先ほどの鬼の群れは幽が全て討ち取ったが、この状態ではいつまた沸いて出るとも限らない。

しかも川を挟んだ西には松永勢。そして南北から奇襲の可能性がある。

何処かに逃げなければジリ貧で囲まれる危険性がある。


「……やむを得ません。敵が未だ薄いと思われる東方を突破。いったん京を出て、異界の地へと避難しましょう」


雫が、苦渋に満ちた表情でそう告げる。


「それしか……ないでしょう、な」


一葉を助け出すことも出来ず、慣れ親しんだ京、山城を出て、何があるか分からない『外』に出る。

三人は賭けに出るしかなかった。




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