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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
19/107

一章・参ノ肆 ~援軍~

DTKです。

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、19本目です。


賀茂大橋からの撤退を決断した双葉、幽、雫たち。

撤退と見るや、傘にかかって襲い掛かる松永衆。

一行は苦戦を強いられることになる…



「ふぅ……ふぅ……」


幽が息を乱している。

普段は本音を顔にほとんど出さない、京人間の鑑のような人物だ。

例え戦と相成ろうと、鬼と切り結ぼうと、お家流を使おうと、息一つ乱さなかったこの幽の呼吸が、乱れている。

松永衆の執拗な追撃で、それほどの激戦となっているのだ。

隘路を利用し、なるべく消耗を避けながら後退していたが、先ほど姫路衆の玉薬が底を尽き、戦線を支えていた主力の火縄銃が使えなくなってしまった。

今は、幽と姫路衆の剛の者数名が代わる代わる戦線を支える動きを見せているが、徐々に疲労の色が強くなりつつある。

後方で兵の差配をしている雫は、自分も槍働きが出来ればと、悔しさのあまり強く唇を噛み締めた。

切れたのか、少し血が滲んでいる。


「姫路衆、前へ!幽さん、下がってください!!」


応っ!という掛け声と共に、姫路衆が勇躍する。

賀茂大橋から二刻以上戦い続けているのに、文句一つ言わない。

私は良い((輩|ともがら))を持ちましたね。

と、心の中で感謝しつつ、下がってきた幽を出迎える。


「幽さん、お疲れ様です!お水です」

「これは……かたじけない」


一口二口と嚥下する。

疲労の色は幽が一番強い。

何故なら、先ほど先行して双葉を後方へ下がらせた際、幕府衆のほとんどを護衛としてつけてしまった。

幽が前線のときは、姫路衆の弓兵隊で援護はしているものの、ほぼ一人で戦線を支えている。

一葉や鞠、綾那などの武勇が突出しているので気付きにくいが、彼女もまた一騎当千の実力の持ち主なのだ。

しかし…


「いやはや……状況は金ヶ崎や本能寺と似ておりますが……これは、なかなか…」


崖を背に、尽きるともない敵と戦った金ヶ崎。

壁を背に、次々と沸いてくる敵と戦った本能寺。

確かに、似ているといえば似ているかもしれない。

が、あの時と致命的に違うのは、援軍の見込みがない、ということだ。

と、


「金ヶ崎と似ている……――っ!まさか!?」


雫は左右の山を見上げる。

と同時に、


「「「ガアァアアァアァアアア!!」」」


鬼の咆哮が隘路に木霊する。

山頂からの奇襲。


「まずい!このままじゃ……」


前方からは松永衆の猛攻。

左右からは鬼の奇襲。

絶体絶命の危機だった。






――――――

――――

――






「いたっ!」


双葉の過去に行き、双葉が来た道を戻っていた剣丞一行。

山城国に入ってしばらく、大声を出せば届くかという距離に雫と幽の背中が見えた。

どうやら、まだ無事のようだ。


「おーーい、しず――――」

「剣丞、上なの!!」

「上?」


鞠に促され、視線を上へ向ける。


「なっ…」


道の両側に聳える山の((頂|いただき))には、大量の鬼が控えており、今にも逆落としをかける気配を見せている。

と、その矢先、咆哮と共に山肌を駆け下り始めた。


「鞠!姉ちゃんたち!お願い!!」

「分かったの!」


鞠は駆け足の勢いそのままに左文字を抜くと


「随波斎流、疾風烈風砕雷矢ぁぁ!!」


左側の鬼に向かって氣弾を放つ。


「よっしゃ!タンポポ!」「うんっ!」

「行くで!明命!」「はいっ!」


翠と霞は素早く前方に駆け抜け、ある程度の距離でピタリと止まる。

その後ろから、蒲公英と明命の二人は、タンッタンッ、と大きく助走をつけると、


「「はっ!!」」


助走の勢いそのままに、高く跳躍する。

着地点は翠と霞、それぞれ得物の穂先を地面に突き立てた柄の先。


「「しゃらああぁぁぁぁっっ!!!」」


二人が柄の先に足をつけたのと同時に、翠と霞が得物を思いっきり前方へと振り回す。

勢いよく弾き飛ばされた蒲公英と明命は、まるで空を飛ぶように飛翔し、右側の鬼の群れに着弾した。






――――――

――――

――




「随波斎流、疾風烈風砕雷矢ぁぁ!!」

「「えっ!?」」


両側から鬼が逆落としを仕掛けてきたとき、後方から聞き覚えのある声がし、二人は思わず振り返った。


「雫!幽!」

「「鞠ちゃん!?」殿!?」


突然の、いるはずのない鞠の登場に雫も、さしもの幽も驚きを禁じえない。


「鞠ちゃん、どうしてここに…」


目が点の雫に、鞠はにっこりと笑うと、


「鞠だけじゃないの!たっくさんのすっごい援軍に、剣丞と双葉も一緒なの!」


半身を引いた鞠が、バッと手を後ろに向ける。

そちらへ目を向けると、剣丞と、彼にお姫様抱っこされている双葉。その傍らには湖衣。

そして、いかにも((武士|もののふ))といった風体の女性が二人、立っていた。


「降ろすよ、双葉」


抱いていた双葉を下ろすと、一歩二歩、雫と幽に近付く。


「け、剣丞さま……」

「久しぶり、かな?辛いことがあったと思うけど…よく頑張ってくれたね。お疲れ様、雫」

「剣丞さまっああぁあぁあああっぁぁ~~~~!!」


剣丞の胸に飛び込む雫。

それをしっかりと受け止める剣丞。

剣丞と出会って以来、長く側を離れることがなかった雫。

失って初めて気付かされた、心を占めるその存在の大きさ。

使命感で補ってきた、目を背けてきたその空白を、再び心に取り戻すように強く、強く、温もりを求める雫。

剣丞もそれに応える。




「雫…よかった」


その光景に双葉は涙ぐむ。


「双葉さま、これはいったい?」


まだ事情をつかめない幽は双葉に尋ねる。

つい先ほど幕臣をつけて後方に下がってもらった双葉が、何故か剣丞たちを引き連れて戻ってきた。

どう考えても話が繋がらなかった。


「幽、詳しい話は後です。直ちに戦線を押し上げ、お姉様を助けに向かいます!」

「は……はっ!」




…………

……




「おーい、終わったよー」


両翼から鬼を狩り終えた鞠、蒲公英と明命が合流し、雫も剣丞に背中をさすられながら復帰した。


「申し訳ありません、私ったら…」


顔を赤らめながら、恥ずかしそうに帽子を押さえる。


「ま、可愛いかったし、大丈夫だよ」


ポンポンと頭を撫でる剣丞。


「とりあえず、戦い続けて疲れてるだろうから、幽と雫、姫路衆は後ろで休んでてくれ」

「え?」

「急ごしらえだけど『剣丞隊』が、この場は引き受けるよ」


いくよ鞠、湖衣、姉ちゃんたち!という掛け声に応えながら敵軍に吶喊する、鞠と四人の見知らぬ武将たち。

五人は湖衣の指揮の下、松永衆を縦横無尽に駆け巡る。

姫路衆を下がらせた雫と幽は、鞠も含めて一騎当千の働きをする彼女たちを、後方から眺めていた。


「……すごい」


あっという間に算を乱す松永衆。

撤退させるのに、多くの時間はかからなかった。


「どう?雫、幽。少しは休めたかな?」


実は後ろでほとんど何もしてなかった剣丞が二人に声をかける。


「休めたといいますか…なんだか、爽やかな森一家の戦を見せられたような…」


冷や汗を垂らしながら、あはは、と苦笑いをする雫。


「いやはや、彼女らが何者かは後でご説明頂けるとは思いますから聞きませんが…

 何と言いますか、お一人お一人がまるで((古|いにしえ))の武将・呂奉先の如き武者たちですなぁ」

「…まぁ、似たようなもんかもね?」

「ひょ?それはどういう…」


「おーい剣丞!終わったぞー!」

「なんや、さっきの鬼もそうやったけど、骨のない連中やなぁ」

「タンポポは楽だからいいけどねー」

「次はどうしましょうか、剣丞さん」


わらわらと剣丞の元に集う、その武士たち。


「……剣丞殿?それがしが申すことでは御座いませんが、あまり一葉さまを泣かせるような真似だけはないさいませぬよう、伏してお願いを…」


ジト目で肩をすくめる幽。


「いや!この姉ちゃんたちは、絶対にそういう人たちじゃないから!!」


ぶんぶんと、手といい首といい、全力で振って否定する剣丞。


「ってそうだ一葉!一葉は今どこっ!?」

「公方さまなら、まだ恐らく、二条館で三好軍と戦っておられるはずです!」

「三好軍っ!?てか一葉一人で戦ってるの!?」

「はい、お姉様は私たちを逃がすために、一人で三好軍を引き付けると…」

「…マジか」


いくら一葉が冗談みたいに強いとはいえ、無茶が過ぎる。


「湖衣っ!ここから見えるか!?」

「やってみます」


スッと、聞き耳を立てるように、手のひらを顔の横にかざす。

聞き耳と違うのは、耳の後ろではなくこめかみの辺りに手を添え、目を瞑る。

((金神千里|こんじんせんり))。

遠くを見渡すことが出来る、湖衣のお家流だ。


「――――見えました!一葉さまのお姿は確認できませんが、三好軍と思われる鬼の軍勢は、二条館で未だ交戦中のようです!」

「となると、一葉はまだ無事ということか…みんな急ごう!幽と雫は行ける!?」

「はいっ!私も姫路衆も充分休ませていただきました!」

「それがしもそれなりには。一句詠める程度には回復いたしましたぞ」


お家流一回分ということは、普通に戦う分には問題ないということだ。


「よしっ!それじゃあ二条館に進軍する!行き方が分からないから、雫と幽、先導よろしく!」

「はいっ!」「承った」






幽と雫、そして姫路衆を救い出した剣丞。

そのまま一葉を救いに二条館へと歩を進めるのだった……




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