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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
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一章・弐ノ参 ~四面楚歌~

DTKです。

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、10本目です。


前回から引き続き、翠たち中心の話です。

明記はしませんが、今回、ある家がチラリと登場です。


なお、実際の作中の地形や距離は、実際とは合致しないことがあります。

そのあたりは、よろしくご理解くださいm(_ _)m



異変調査の拠点としていた天水が、化け物によって陥落したとの報せを受け、天水奪還のため、漢中へ向かうことにした翠一行。

一路、五丈原へと歩を向けていた。

それまでの行軍と違い、緊張感を持ち、方々を警戒しながら進んだ。

しかし、道中は何も起こらず、眼前には漢中への入り口、五丈原の台地が見えてきた。

と、


「なんだ……ありゃ?」


翠が思わず声に出した。

その気持ちは、全員同じだった。


高台の上には、何故か兵がひしめき、旗が林立していた。

旗には、常識的な姓ではなく『厭離穢土欣求浄土』と書いてあり、中央には牙門旗ではなく、金色の扇が掲げられていた。

見たこともない、所属不明の軍。


敵なのか。それとも味方なのか。

あの部隊から伝わる異様な雰囲気は明らかに…


「かかれーーーっ!!」


敵だった。






………………

…………

……






五丈原から東へ十里弱。


「はぁ……はぁ…みんな、大丈夫か?」


所属不明の部隊に急襲され、這々の体で逃げ出した翠たち。

弓兵による一斉射と歩兵の突撃を仕掛けられたものの、紫苑の輜重兼弓兵隊以外は騎馬隊となっているので、一当てした後に後退し、被害はほとんど無いといって良い状態だった。

所属不明部隊は、何故か執拗な追撃はしてこなかった。


「えぇ…落伍者もいないようだし、重傷者もいないわね。奇跡的だわ」

「姉様……この後、どうするの?」


部隊全員の無事を確認したものの、状況は明るくない。

天水は落ち、そして五丈原も封鎖されている。

しかも五丈原にあれだけの大部隊が居たとなると、漢中方面にも暗雲が漂ってくる。


「ひとまず、長安を目指そう。漢中に向かうにしても、万全を期す必要があるだろう」

「そう、ね……」


紫苑は顔を曇らせる。漢中に残した璃々のことが心配なのだろう。

が、今は足踏みをしている場合でもない…


「よし、長安に急ぐ!飛ばすぞっ!!」

「「「応っ!」」」


一路、長安へ。

駆けに駆け抜け、ようやく長安が見えてきたのだが…


「長安、まで…」

「そ、そんなぁ……」


城内から煙が上がり、城壁はところどころ崩れている。

遠目に見ても、長安も陥落していた。

そして、その中からは……


「あれが……化け物、か」


先の門番の報告どおりの異形のものが、街から少し溢れ出している。


「ね、ね、姉様……」


不安げな瞳を見せる蒲公英。

久々の本格的な実戦。そして命の危機。

さすがの蒲公英も不安の色を隠せないようだ。


どうする…どうするっ!?


翠は頭を最大限に回転させる。

西は天水・五丈原。南は漢中。東は長安。そして北は五胡の領域…

まさしく四面楚歌。


しかし、この場に留まっているわけにはいかない。

ならば……突破口は、


「…前だ。函谷関を抜けて、洛陽を目指す」

「……どういうこと?」

「五丈原に敵が溢れてた以上、漢中は、少なくとも敵に包囲されてる可能性が高い。子午道を通って漢中へ向かっても、挟撃される。

 また、北の五胡を抜けて大回りに河北方面へ向かうのは危険すぎる」

「…それで?」

「長安の奪取もこの人数じゃ無理。かと言って、このままここに留まるのも愚策。ならば答えは前しかない。

 幸い、まだこっちに気付かれた様子は見られないし、何とか気付かれないように大回りに長安を避けて通れば、なんとか…」

「函谷関も既に落ちている可能性は?」

「別働隊があれば話は別だけど、それは無いと思う。天水が落ちたのが三日前。そして見たところ、長安が落ちたのは恐らく数刻前。

 化け物を遣ってる奴の侵攻速度を考えれば、まだ落ちてはいないはず」


この隊の総大将である翠の言を受け、紫苑はしばし思案する。

そして……


「この状況では、翠ちゃんの状況分析が最も妥当だと、私も思うわ。成長したわね、翠ちゃん」


このような状況ながら、我が娘の成長を喜ぶかのように、柔らかく微笑む紫苑。

本当の自分の娘の心配は、胸の奥に閉じ込めて…


「よしっ!それじゃすぐ行くぞ!!蒲公英もいいなっ!?」

「うんっ!!」

「速度が命よ。慎重かつ大胆に進みましょう」


こうして長安迂回策が採られた、

のだが……


「クソッ!!」


運悪く、たまたま長安から離れてうろついていた化け物の一団と遭遇してしまった。


「紫苑っ!先に函谷関へ向かってくれっ!!ここはあたしたちで食い止める!!」

「分かったわ!黄忠隊っ!弓を斉射ののち後退し、函谷関の確保に向かいますっ!ってーー!!」


弓矢の雨を受け、化け物の進撃がやや弱まる。

その間隙を縫い、翠と蒲公英率いる騎馬隊が化け物と黄忠隊の間に入る。

こうして、翠と蒲公英で化け物の足止めをすることになった。




…………

……




「だっしゃらああぁぁぁあぁっ!!!」


翠の銀閃が化け物たちを切り裂く。

奇妙なことに、化け物たちは断末魔をあげると、骸を残すことなく消え去る。

最初は数を数えていたが、十を超えてから止めた。


「体躯の割りに素早いぞ!機動力を活かして間合いを取りつつ、一匹に必ず二、三人で当たれっ!

 後ろを取られないように気をつけろっ!!」

「「「応っっ!!!」」」


さすがは涼州の騎兵。

馬を繰りながら三人一殺でうまくやり過ごしている。

しかし…


「お姉様ーー!!」


悲鳴のような蒲公英の声。


「分かってるっ!!」


蒲公英の言わんとしている事は分かってる。

化け物の中には、前に門番が言っていた通り、兵に支給される鎧兜を身にしている者も見られる。

そして、普通の服を身に着けている者も…

何より、化け物が消える直前、一瞬だけ人の姿になる。

信じられないが、人が化け物に『成って』しまった証左だろう。

だが…


「そいつらは化け物だっ!人じゃねぇ!!生きたかったら、ここでこいつらを()るしかないんだ!」


殺らなければ、こちらが殺られる。

自分の仲間を護るため、一匹、また一匹と銀閃を走らせる。

その度に視界がぼやけていく。


自分たちが守るべき人たちを守れなかったこと。

そして、その人たちに刃を向けている自分がいる。

仕方がない。殺らなければ殺られる。

仕方がないと分かっていても、綯い交ぜになった感情が、涙として翠の目から溢れ出る。

だが、それでもやらなければならない。

翠は弱気の虫を追い払うように、腹からの大音声を発する。


「我が名は馬孟起っ!!かつての西涼が太守・馬騰が娘。人呼んで、錦馬超たぁあたしのことだっ!!

 化け物どもっ!!!死にたい奴からかかってこいやーーーー!!!!」


戦場中央で、地を鳴らし、空をも響かす大見得を切る。

迷いを捨て、大事な人たちを守るために、人修羅にならんと。

と…


「ん?」


化け物たちが明らかに怯んでいる。

戦列は乱れ、腰が引けている。

まるっきり獣に落ちたというわけでもないのか?

しかし、これは好機っ!


「退けっ!退けーーー!!」


退却命令を出す。一団は蒲公英を先頭に、一気に東方へと駆け抜ける。

一人、殿として残った翠は、


「白銀乱舞っ!!!」


戦意を失った化け物に追い討ちをかけると、馬に飛び乗る。

目指すは函谷関。

そしてその先にある洛陽へと、馬首を向けた。






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