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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
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一章・弐ノ肆 ~慟哭~

DTKです。

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、11本目です。


今回で、異変直後の『蒲公英の過去』が終わります。

まぁ、剣丞や鞠が活躍するのは、もうちょい先になりそうですが…^^;


なお、作中の地形や距離は、実際のそれとは合致しないことがあります。

そのあたりは、よろしくご理解くださいm(_ _)m



「ちきしょっ!」


長安から東へ十数里。

いったんは翠が退けた化け物だったが、長安に伝達でもされたのか、大軍が差し向けられていた。


翠と蒲公英が下馬し、敵軍を押し止める。

足が止まった敵軍を、騎馬隊が縦横無尽に割る。

散々に敵を掻き回し、


「退けーー!!」


その隙に撤退する。

これが、いま翠たちが取れる数少ない戦法だった。

しかし、何度も繰り返すと効果も薄くなる。

作戦を変えようにも、そもそも兵の数が少ない。

加えて函谷関への隘路に入り、騎馬隊を効果的に展開させる広さも、伏兵を潜ませるような場所もなくなってしまった。

とにかく、函谷関へ着けば、紫苑の兵がいる。

今はただ、全速力で前へ向かうだけだった。






「「「グオォォォォォッッ!!」」」


あと少しで関と知っているのか、ここに来て敵の勢いも増してきた。


「くそっ!」


もともと翠の隊は全兵が騎乗する騎馬隊だ。

脱落者はいないものの、馬を失くした者が半分を越え、不慣れな((徒歩|かち))での戦闘を余儀なくされている。

隊の戦闘力は落ちているのに、相手は勢いを増し、その数はどんどん増えてきている。

関を目前にして、隊の足が止まってしまった。

ここで翠は、一つの決断をする。


「ここはあたしと蒲公英で引き受ける!他のものは函谷関に向けて駆けろっ!!」

「馬、馬超様!?」


突然の命令に、慌てふためく隊員。


「いいから、あたしの言う通りにしろっ!これは命令だ!!」


化け物を三匹同時に切り伏せながら叫ぶ。


「そうだよっ!ここは蒲公英と姉様だけで大丈夫だから、みんなは早く逃げて!」


蒲公英も負けじと一匹を突き殺し、返す槍でもう一匹の身体を二つに割る。

隘路が幸いし、二人で戦えば敵に背中を取られることはない。


「わ、分かりました!ご武運を!」


副隊長格の兵士が兵をまとめて、東に駆ける。


「…さあ、蒲公英。ここが気張り所だぞ!」

「分かってるよ、姉様!!」


化け物の大軍を前に、静かに、しかし雄々しく、槍を構える翠と蒲公英。



「「はあぁぁぁぁぁああぁあっっ!!」」



裂帛の気合と共に、敵軍へ突っ込む二人。

その気合に気圧される化け物たち。

そこへ、


「しゃらぁあっ!!」

「てやああぁっ!!」


二本の閃きが走る。


「「「ギャアアァァアアアァッッッ!!」」」


銀色の閃きが舞うたびに、化け物の首が飛び交い、

鈍色の閃きが瞬くたびに、化け物の胴に穴が開く。


果たして、化け物どもの目にはどう映るのだろか?

閃きを目にする、即ち、地獄への片道切符だ。

涼州に名を轟かす馬一族の二人は、化け物にとっての悪鬼羅刹となった。


そして、十二分に敵軍を蹂躙し、


「よしっ!蒲公英、退くぞ!」

「うんっ!」


控えさせていた馬に飛び乗ると、一気に加速させる。

敵軍との距離も離すことが出来た。




…………

……




そしてしばらく。

立て直した化け物が半里ほどに迫ったところで、前方に函谷関が見えた。

隊のものも、開け放たれた関の所で待っているのが見える。

関の上には、作戦通り紫苑の隊が、まさに手ぐすねを引いて待っているようだ。

やがて化け物たちが射程に入ると、


「うてーーーー!!」


まさに矢の雨。

敵先頭集団が針鼠となる。


「よっしゃ!」


騎乗しながら振り返り、それを確認する翠。

これでどうにかなりそうだ。

翠と蒲公英が関を越える。


と、


ギィィィィ……


二人の後ろで、低い音が鳴る。


「え?」


蒲公英が間抜けな声を出し、音の方を向く。

その眼前で、ズゥゥン、と函谷関の扉が閉まる。


「おいっ!お前ら、何やってんだ、開けろっ!!」


翠は扉に縋りつき、右拳を叩きつける。


「すいません、馬超様。俺らに出来るのは、これくらいしかありませんので……」


分厚い石造りの向こうから聞こえてきたのは、先の副隊長の声だった。


「まさか……おいっ紫苑!!いるんだろっ!?こりゃどういうことだっ!!」


翠は標的を、関の上にいる紫苑に変える。

すると頭上から、たしなめるような、それでいてよく届く声が聞こえてきた。


「ダメなのよ翠ちゃん。この関を閉じただけじゃ、すぐに突破されちゃうわ。それにこの化け物をここで食い止めないと、中原へ向かわせてしまうことになる。だからここで誰かが戦わなくてはならないの」

「なら、あたしたちも……」

「翠ちゃんたちは、この中で一番速いわ。二人が急いで洛陽に向かって、援軍をつれてきてちょうだい。

 …大丈夫よ。私たちも死ぬ気はないわ。危なくなったら逃げる。約束するわ。だから早く……お願いっ!」

「くっ……分かった!出来る限り早く援軍を連れて戻ってくる!無理するんじゃねぇぞ!!」


歯を食いしばり、翠は蒲公英と二人、函谷関を背にして洛陽に向かった。






しかし、すぐに一匹、二匹と足早の化け物が翠と蒲公英を追跡してきた。


「くそっ!」


数はそれほど多くないので、函谷関が陥落したわけではないのだろう。

しかし函谷関は元々、中原から関中への侵攻を防ぐための関。

つまり、関中側からの侵攻に対する防衛力は著しく低下する。

あちら側には階段もあるので、そこから登られているのだろう。

囲んで紫苑を討たないのは戦略的に翠たちを逃がさぬ方が先と踏んだのか、あるいはその頭もないのかは分からないが、数は少ないものの敵が追ってくる状況に変わりはなかった。

数匹であれば対処できようが、このまま増え続けると、洛陽に着く前に取り囲まれるやも知れぬ。

そう考えた翠は、馬を止め、降り立った。


「お姉様っ!?」


と同時に、左右から追ってきた化け物を切り捨てた。


「あたしはここで追っ手を食い止める!お前は洛陽に行って、援軍を連れてきてくれ!」

「そんなっ!」

「お前一人があたしの馬も使って乗り継げば、二人で行くより早く着く!頼んだぞっ!!」


そういうと翠は蒲公英に背を向けて振り向かなかった。


「うぅ~~~……分かったよ!出来るだけ早く援軍を連れて戻ってくるから、それまで無事でいてね、お姉様!」


蒲公英の言葉にも翠は振り返らず、ただ右手の拳を上げた。

そして、来た道を戻るように走っていった。

後ろ髪を引かれながらも、蒲公英は愛馬の手綱をしごいた。






翠の馬と乗り換えながら、馬を走りに走らせ、眼前には洛陽の城壁が見えてきた。

しかし、何故か洛陽の城門が、日中にもかかわらず、堅く閉じられていた。


「開門ー!開けてー!!」

「誰だっ!?」


城壁の上から、武器を携えた兵士が顔を出した。


「蜀の馬岱です!緊急事態なんです!月と詠に話がっ……」

「馬岱?そんな者が来るとは聞いていない!いま洛陽は厳戒態勢に入っており、得体の知れぬ者を入れるわけには……」

「いいからっ!!それなら詠…賈駆をここに呼んで来て!!急いでるの!早くしてっ!!」


蒲公英の態度に気圧されたのか、城壁の上の兵士は後ろを向き、何やら指示を出したようだ。


「いま賈駆さまの元へ人をやっている。申し訳ないが、しばらくそこでお待ちいただこう」

「……分かった!」


少しの時間も無駄にしたくはないが、今は仕方がない。

足をパタパタと貧乏ゆすりをしながら蒲公英は待つしか出来なかった。




…………

……




「ちょっと、蒲公英!あんた、こんな所でどうしたのよっ!?」


待つことしばらく。

待ち望んだ声が、城壁の上から降ってきた。


「詠っ!大変なの!事情は後で話すから、とりあえず中に入れて!」

「分かったわ!ただちに開門しなさい!」


城門がゆっくりと開く。




…………

……




「蒲公英ちゃん、大丈夫?」


出迎えた月が心配そうに近寄ってきた。


「私は大丈夫。それより、お願いしたいことがあるの」

「なによ」

「軍を貸してほしいの!関中で化け物に襲われて、いま紫苑とお姉様が函谷関で化け物の侵攻を防いでるんだけど、兵が全然足りないの!お願い!」

「化け物…ね」


月と詠が顔を見合わせる。


「ねぇ、蒲公英。あなたが言う化け物って、角が生えてて、牙が生えてて、みたいな感じ?」

「そ、そう!なんで詠が知ってるの!?」

「それがね…」


数刻前、商隊護衛についていた兵士から、西方でおかしな化け物を見た、との報告が上がってきたという。

面白そう、という理由で洛陽に詰めていた霞が単独で偵察任務に出発し、念のため洛陽はすべての城門を閉め、警戒態勢を布いていたようだ。

その報告にあった『化け物』には獣のような角や牙が生えていたらしい。


「それ…多分、たんぽぽたちが戦ってたのと同じやつだ…」


驚きと同時に、霞と入れ違いになったことに衝撃を受けた。

もしかしたら洛陽まで来ずとも、霞と合流し戦場に戻れば、戦局を打開できたかもしれないのに……


「それで兵だけど、ここには一万しかいないわ。将軍である霞がいない今、多くを委ねる訳にはいかないけど、どうする?」

「騎馬隊はどれくらいいるの?」

「確か、霞さん配下の隊が千ほど居るはずです」

「じゃあその隊を貸して!急いで行かなきゃ間に合わないかもしれないし!」

「…分かったわ。ボクが責任を取るから、隊を動かすことを許可するわ。副長にはボクから話をつける」

「ありがとう、詠!」


西門で待ってて、と部屋を後にする詠。

続いて部屋を出ようとする蒲公英を、月が呼び止める。


「蒲公英ちゃん、気をつけてね。勝てないと思ったら、絶対に無理をしないで、翠さんと紫苑さん、霞さんと一緒に、帰ってきて下さいね」

「…うん!」


こうして蒲公英は、騎馬隊一千を引き連れ、函谷関を目指し、馬を走らせた。






蒲公英は焦る気持ちを抑えて手綱を握る。

まだ大丈夫。お姉様なら絶対大丈夫。

そう言い聞かせて、何とか心を落ち着かせる。


だが……



「うそ……」



蒲公英は目に飛び込んできた光景に絶句する

遠くには見ゆるは、ボロボロに崩れ去った函谷関。

そして目の前にあるのは、主なく地面に突き刺さる翠の愛槍・銀閃と、霞の得物・飛龍偃月刀だった。



「お姉様ーーーーーー!!!!!」



蒲公英の叫びに応えるものは無く、ただただ虚しく、荒野に響くのであった……







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