第29話 南国の海辺の村に着いたようで
ドイツとかでは冷えてないビールを好むらしいけどね。
シーズヒル王国南岸の村、デーフック。基本的に漁業と農業で成り立っており、季節により特産の魚介類がある。海沿いに走る街道があるので一応宿場もあるがなかなかの田舎である。というのも馬車で半日もしない距離の内陸部にそこそこの大きさの街イワーデンがあり、そちらのほうの街道はよく整備されているため、この国の東西を行き来する者のほとんどがそちらを通るからだ。
村長が是非にというので寄ってみたルーシアだが、悪い気はしなかった。むしろ好印象であった。
(・・・程よい田舎っぷりだな。これなら魔石とか魔道具とかぼちぼち売ってスローライフ出来そう。いいぞいいぞ・・・。)
季節は秋口とはいえそこは南方、昼間はまだ暑さが残っており、しかも海沿いともなると湿度も高く、厚手の服しか持ってこなかったルーシアは堪らず軽く冷魔法を展開し自身の周囲を冷やす。
(・・・これはいかん。まずは服を何とかしないとな。でも服屋とかこの村にあるのか?)
あれこて考えているうちに村長のギリアスが、山賊から助けてくれた礼として一週間分の宿と食事を提供してくれるとのことで、ルーシアはひとまずその宿を拠点として村の状況を見て回ることにした。
ギルドは冒険者、魔法、商業の出張所があるが、イワーデンにある支部への取次ぎをする程度の場所なので、依頼や報酬の授受、その他手続きがすぐにできるわけではない。店に関しては農作物、肉、海産物、生活用品、食堂などの店が数店舗並ぶ程度の商店街はあるが、服屋は無かったので他の街に行かねばならない。
陽が傾き、ルーシアの服装でも冷魔法を使わずに済む程度の気温になった頃、村長に呼ばれ村の食堂で夕飯をご馳走になることとなった。
「何もない村だが、さぁ食べてくれ、遠慮はいらん!」
「・・・それじゃ遠慮なく。頂きます。」
村長婦人や食堂の主人、従業員、他の客などを交え、山賊に襲われた時のルーシア武勇伝を語る村長。本来であれば目立つのがイヤなルーシアであるが、それよりも気になることがあった。
エールが冷えていないのだ。
常温保存されていると思われるエールは温く、いまいち美味しさにキレがない。いや、これがこの村の流儀なのかも知れないと思いつつも、皆に尋ねてみる。
「・・・村の皆さん、冷えたエールって、どう思います?」
やっぱ冷えたビールって美味いよね。




