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番外編1 氷龍のくしゃみ 前編

長い冬が終わり、いよいよ春の農耕シーズンを迎えようとしていたクーレシア共和国を、突然の寒波が襲った。どうやら北部の山イウォーゼンに住み着いている氷龍の仕業らしいとのことで、クーレシア軍から討伐隊と、マギから調査隊が編成された。


 「・・・で、何であたしなの?寒いのキライなの知ってるでしょ?パワハラですよ?」


 調査隊メンバーに指名されたイリューシャはいつものジト目に加え機嫌ナナメ全開である。氷龍の調査イコール雪山でクソ寒いのは分かりきっている。マギの実験部職員ならイリューシャの極度の冷え症は部長以下全員知っている。なのにイリューシャが指名されるのには訳がある。実験部長が部長がいけしゃあしゃあと


 「軍からの要請もあってね、こちらとしても戦力と調査の両方を兼ねることが出来るグランセリウス君に行ってもらったほうが都合が良いのだよ、色々と。あと個人の能力と組織要求を鑑み適任者として指名したのでパワハラには該当しません。」


 と宣う。これだから冷え症に理解の無いヤツはとは思いつつも、自ら雪山に冷の精霊に会いに行ったりはしているので、あまり文句は言えない。仕方なく話を受けることにした。


 「ではいつも通り、コードネームは〈クーレシアの霧〉で。調査お願いします。」


* ⁑ ⁂ ⁑ * ⁑ ⁂ ⁑ * ⁑ ⁂ ⁑ *


 「〈クーレシアの霧〉さんですか?軍からあなたのサポートを仰せつかりました。」


 防寒装備ガチガチで不機嫌なイリューシャにヒューマンの軍人が声を掛けてきた。中年というには若く、青年というには年配な感じの男である。


 「・・・〈霧〉でいい。サポートとはどの程度の?」


 戦力として来た自分に何のサポートができるのやら?と不機嫌なまま尋ねる。しかし軍人は物怖じすることなく回答する。


 「自分は熱魔法が使えますので、主にその辺りのサポートとなります。寒かったり手足が冷えた時などは遠慮なくお申しつけください。」


 熱魔法と聞いてイリューシャの不機嫌な表情が若干和らいだ。冷えた手足や耳を温める魔道具は無いので、魔法で温めてもらえるなら有難いことである。


 「・・・頼りにしている。名前は?」


 「ロバート・アッシュビーです。階級は軍曹です。〈霧〉さん、よろしくお願いします!」


 「・・・そう。ではアッシュビー軍曹、よろしく。」

 

 かくして討伐と調査の編合部隊は氷龍が棲まうとされているイウォーゼンへ向け出発した。

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