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冷え症あるある1 夏のオフィス

冷え症は夏でも辛いんだぞ

 冷え症なのに水と冷の魔法が身に付いた不幸な魔導士、イリューシャ・グランセリウス。当初、彼女は自分の運命を呪ったが、どうせ抗えないのならと受け入れ、それを徹底的に利用するため魔法技術廠、通称マギに入廠した。


 イリューシャは実験部に配属され、元々根暗でひきこもりがちな性格であることから、研究や実験に没頭できる実験部は適材適所であった。

 そしてイリューシャをはじめとしたメンバーにより開発された冷房装置すなわちクーラーはマギの大ヒット製品となる。冷魔法と大気魔法を組込んだその装置は魔石に込められた魔力で動き冷風を出す。オプション装備として、通信魔法を組込んだ操作盤いわゆるリモコンがあり、遠隔操作が可能となるスグレモノである。夏が短いクーレシアであっても暑いものは暑いので喜ばれたし、特に南方への対外輸出は高額にも関わらず好調である。


 そしてイリューシャがいるオフィスにも当然付いているのだが・・・。


 「・・・ちょっとクーラーの設定温度低くない?寒いんだけど。」


 季節は夏だというのに、イリューシャは建物の中でカーディガンを羽織り、膝掛けを使い、ふわふわもこもこのスリッパまで履いている。冷え症ではない者には理解できないかもしれないが、夏場のクーラーを効かせ過ぎると身体、特に手足や肩が冷えて辛く、仕事などに集中できない。これが冷え症なのである。

 

 「ん?そんなことないぞ。23度だ。」


 同僚のヒューマンの男が答える。大体の男はこのくらいが快適らしい。それに23度というのはこの室内で一番温度が高い所の設定になるので、実のところ足元はもっと低い。なので冷え症にとってはかなり寒い。


 「いや寒いし。28度でいいだろ・・・。」


 エコ運転か?ってほどの室温設定を言い出すイリューシャ。でも冷え症にはこの位が快適なのだ。


 「いやさすがに28度はカンベンしてくれ。全然涼しくないっていうか温いだろ・・・。」


 間を取って26度に設定する。寒くなく、程よく涼しく、快適な温度になったところでカーディガンと膝掛けを外すイリューシャ。でも足の冷えは簡単には戻らないのでふわもこスリッパは履いたままである。そこへ外作業から帰ってきた男どもがオフィスになだれ込んで来た。


 「いやー暑い暑い!リモコンはどこだ?!」


 ぴぴぴぴぴ!と一気に設定温度を下げる男ども。見るとクーラーの能力上限値である18度にされている。クーラーが唸りを上げ強力な冷風を吹き出す。


 「あー涼しい!キンモチイイ!!」


 クーラーに癒される汗だくおっさんズ。気持ちいいのは分かるが、汗で肌に貼り付いたシャツなど見てくれが悪い。


 「・・・ちょっと!寒いんだけど!」


 ずっとオフィスにいてすっかり冷えてるイリューシャはクーラーの設定温度を下げられたため、当然抗議する。


 「こんなに汗だくになるくらい暑かったんだからちょっとくらいいいだろ!」

 

 「脱ぐにしてもこのシャツ一枚脱いだらあとは皮下脂肪しか無ェよ!」


 コレでもかと暑いアピールをする男ども。そしてトドメの一言。


 「コッチは暑いんだよ!寒かったら着ろ!」


 ごもっともである。寒いのは着ればいいが、暑いのはそれ以上脱ぐものが無いのでどうしようもない。


 (・・・分かってはいる。分かってはいるが、分かるワケにはいかん!)


 ガタッとイリューシャが動き出す。


 「・・・ほう、そんなに暑いなら、新開発のちょーっと良く冷える魔道具の試験に付き合ってもらおっかなー?」


 たじろぐ男ども。やばいヤツを怒らせちゃった感がオフィスに漂う。イリューシャは一人のヒューマンの職員をふん捕まえる。


 「え、グランセリウスさん?!いや、あの、その、な、何を・・・?」


 「・・・動くんじゃない、じっとしてろ。」


 そう言い放つと、職員の首にU字型の物体を取付ける。


 「こ、これは・・・冷たくて気持ちいい・・・いやいや凍ってきたんですけど?!」


 「・・・試作品。ネッククーラーとでも呼ぼうか。冷の魔石を組込んである。」


 「うおおおおおお凍ってる凍ってる冷たい痛いヤバい死ぬ!」


 「・・・ちょっと持ち主の魔力反応に過敏か。改良の余地ありだな。」


 試作ネッククーラーをようやく外し一命を取り留めた職員。次の試作品の試験をドワーフの職員にさせる。


 「・・・次はこれ。手に持って魔力を送って。」


 「なんじゃこりゃ?魔力を送れば風でも出そうじゃの?」


 ドワーフは手に持つ送風機みたいな形の試作品の魔道具を受取り、いきなり魔力を送り込む。すると猛烈な吹雪が出てきた。


 「ほっほー?!こりゃ冷たくて気持ちいいな!!・・・いや寒ッ!?冷たッ!?凍るッ!とっ・・・止め・・・ッ!?」


 「・・・ふむ、出力調整に難有りか。リミッターも付けたほうがいいな。まだまだ改良の余地ありだな。・・・で、他に清涼アイテム試したい人、いる?あたし、寒いのキライだから、自分で試したくないんだよね。」


 一斉に首を横に振る男性職員の皆様。


 「・・・暑いのは分かったし、そういう人の為にこういうのも開発中だから。涼んだらクーラーの温度戻してくれる?」


 一斉に首を縦に振る男性職員の皆様。


 オッサン共の暑苦しく見苦しい姿を見るくらいなら、と我慢してまたカーディガンと膝掛けを出すイリューシャであった。

コレ読んだら夏のエアコンで寒がってる人に気を遣ってあげてね。

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