第10話 甘芋尽くしの最後はお酒のようで
甘芋の塩バター炒めを差し出されたルーシア。雇われ者だから先に頂くのは気が引けると言ったが、ハマーはそんな事気にしていないし、何より甘芋が大好きだというルーシアを自分が育てた甘芋で喜ばせたかった。それではと有難く頂くルーシア。
(・・・これは! とても美味しい・・・芋の甘みと塩バターの絶妙な組み合わせがたまらない!)
一つ、また一つと口に放り込むルーシア。思わずフォークが進む、というか、止まらない。こんな美味しい甘芋料理があったなんて! と感動している側から次の料理が差し出される。
「これは炭火で焼いた石焼き芋だ、まぁ食べてみな!」
差し出された石焼き芋を受け取る。とても熱くて持つのが大変だが、炭火焼独特の香ばしさが美味しさへの期待を高める。二つに割ると断面が黄金色でキラキラしている。早速かぶりつくルーシア。
「・・・ただの焼き芋なのにこんなに美味しいなんて」
「そりゃー品種改良やら何やらみんなで頑張って丹精込めて作ったからな!」
とドヤ顔のハマー。クーレシア共和国は寒冷地でありながら農業国でもある。短い夏の間に農作物を大量生産し、越冬に備えなければならないからだ。また、一部の農作物は対外輸出品として収益を得ている。この甘芋もそういった農作物の一つだ。
焼き芋を半分食べたところで、忘れずに索敵魔法を展開するルーシア。近くに脅威が存在しないことを確認すると、もう半分の焼き芋にかぶりつく。
ホーのほうを見ると、少し離れたところで甘芋料理を食べながら馬の世話をしている。馬はというと生の甘芋をゴリゴリ食べている。ルーシアも近づき、甘芋を馬に差し出す。かぶりつく馬を撫で労をねぎらう。
程々にお腹が膨れ満足そうな表情のルーシア。そこに最後の一品を出すハマー。
「最後の甘芋料理だが、まだ食べられるか?」
「・・・お腹一杯。」
「そうか・・・最後はデザートのポテトケーキなんだが・・・?」
「大丈夫です。イケます。下さい。」
キリッとした表情で向き直るルーシア。そこは女子、デザートは別腹理論である。ハマーが最初に作り始めた甘芋料理はちょっと手間暇かかるポテトケーキだった。夜の空気に晒され適度に冷えた状態で差し出されたそれは、言葉にならないほど美味しかったのは言うまでもない。
簡素ながら甘芋料理コースを堪能したルーシア。その横で瓶の飲み物を用意するハマー。
「え、父さん、ソレ持ってきてたのかよ!」
「へっへっへ、こういうこともあろうかと!」
「・・・何それ?」
雰囲気から察するに明らかに酒だが、この親父が出すものである。きっとただの酒ではないとルーシアは悟った。
「これはな、甘芋で作った酒だ!うめぇぞ!」
(何・・・だと・・・ッ?!)
ルーシアは嗜む程度に酒を飲むが、甘芋の酒が存在するなど知らなかったのだ。




