第9話 依頼主は見かけによらず器用だったようで
ブランケットを羽織り身体を温めるルーシア。陽が傾き空気が冷え始めるこれからの時間を屋外で過ごすのは、冷え症にとっては苦痛の時間の始まりである・・・。冷え症のルーシアにとってこれは耐えがたい状況であるが、さらに問題なのが今日は野宿ということであった。甘芋に釣られ野宿覚悟で出てきたとはいえ、寒いのはかなり致命的である。
「この辺りにしておくか、良いかなルーシアさん?」
街道の左側、森がちょっと開けたスペースを見つけたハマーは、そこに荷馬車を寄せるようホーに指示する。
三人とも荷馬車から降り、ホーは馬を木に繋ぎ、ハマーは早速甘芋料理の準備に入る。ルーシアは引き続き索敵と警戒だ。
ハマーはその辺の石ころを集め簡単な竈を作りを火を起こすと、その中に炭も放り込む。水を入れた鍋を火にかける。甘芋をブロック状に切り刻むとそれを鍋に放り込み茹でる。その間に別の甘芋を短冊状に切る。炭に火が付いたところで取出し、もう一つの竈に移し、炭の上に石を軽く敷き詰めそこへ甘芋を置き石焼き芋を作る。
ルーシアは何時の間にかハマーが起こした火に当たりながらその様子を眺めていた。もちろん警戒の手は緩めず、索敵魔法は解いていない。
(このオジサン、ガタイに似合わず器用だな・・・)
そんな失礼なことを思いつつ、手際よく甘芋料理を作るハマーを眺めるルーシア。慣れた手つきで次々と甘芋を捌いていく姿を見ると、どんなステキな料理が出てくるのかと期待しかない。
ハマーは先ほど茹でた甘芋を引き上げ水気を切った後、すりつぶし始める。そしてバターやら何やら色々混ぜてこねて、いくつかの小さい塊をつくりフライパンに並べ蓋をし火にかける。
その側で次は短冊状に切られた甘芋を鍋に入れ少し加熱した後、引き上げて水気を切り、もうひとつのフライパンに移し、バターと塩で焦げ目が付くまで炒める。まずこちらのほうが先に出来上がった。
「ほらよ、甘芋の塩バター炒めだ!」
見るからに美味しそうなのが出来上りルーシアに差し出された。




