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演出の少ない賭場

これほど大規模なセットを、ドッキリのために作れるだろうか。

いや無理だ。

あったとしたら、

知らない間に海外に連れてこられたくらいだろう。


しかしオカシイ。

知らない文字なのに、

あの男たちの言葉はわかった。


なんだ。

違和感しかない。


まぁ良い。

この世界が何なのかはよくわからない。

現実かもしれないし、

夢という可能性だってあるだろう。


でもどっちでも良い。

鳶だった世界に戻っても、

やることは一緒。

毎日博打だ。


こっちの世界にも博打があるなら、

それで良い。


それに夢だっていい。

ギャンブルで勝つ夢は、正夢になるという。

という事を聞いたことがある。


それに夢なら、楽しむだけ楽しめばいい。


とにかく、

早く賭場にいって、

楽しもう。

俺はそう思った。


……

見知らぬ街だが、

なぜだか、賭場はすぐわかった。

それにしても、

いろんな所で、

ミックと呼ばれる。


知らない奴に知られているのは鬱陶しい。


俺は賭場に入った。

石造りの室内は昼間だというのに薄暗く、

蝋燭の炎が辺りを照らす。


俺は賭場の雰囲気を確かめる。

賭場特有の臭いがした。

汗の臭い、タバコのような臭いと酒の臭い。男臭さ、

胃が荒れた時の口臭のような臭い、

それらが混じりあい、

賭場特有の臭いを作る。


俺は賭場をずらっと見渡す。


パチンコはもちろん、スロットもない。

カードゲームもない。


ただやってるのは、サイコロだけ。

いわゆる丁半博打だろう。


台の真ん中に、

筒のようなものがあり、

一番上に、サイコロが置かれている。

そしてその下には、大きな盆状の丸い容器が置かれてあった。

レバーのようなモノをひくと、

筒の上の蓋が開き、

サイコロが筒の中に落ちるようになっている。

筒の中には、

不規則に凹凸が付いており、

サイコロは凹凸にあたり、あちこちと方向を変える。

そして最終的に丸い容器に着地し、

その時の数字を予想するようだ。


さらに詳しく見ると、

丁半に賭ける。

偶数か奇数に賭けるのではなく、

低いか高いかに賭けるゲーム。

見た目は少し複雑だが、

123が低い

456が高い

単純なゲームだ。


客は金の入った袋から、

金をとりだし、

「低い」もしくは「高い」と言って、皆同時に台に置く。

ディーラーのような男が掛け金を回収し、

客の目の前に、

「低い」と「高い」という意味の文字を書いた木札を置く。

その客がどちらに賭けたかという事を示す印のようなモノだった。


掛け金は硬貨一枚ずつのようだ。

今のところ、

それ以上賭けている奴は見てない。


今回は低いが1人、高いが5人だった。


サイコロが落ちる。

神に祈る者。

目を見開く者。

拳を握りしめる者。


結果は数字の1。

勝負は低いが勝った。


結果、低いが硬貨5を手に入れた。

残りの硬貨1はてら銭のようだ。


……

俺が観察していると、

ディーラーのような男が

「おい。お前は賭けねぇのか?」

と言ってきた。


「賭ける前に、ルールとか、賭け方とか、観察してるんだ」

と俺は言った。


客の一人がクスクス笑い出す。

「お前面白れぇな。こんな簡単なの。子供だってわかるだろう」

そう言った。


「おあいにくさま。俺は子供以下の脳みそなんだよ。それで、これはどうするんだ?」

俺は尋ねた。


「これはな。数字が123、456のどちらになるか決めるゲームだ」

ディーラーのような男は言った。


「それはわかる」

俺は答える。


「それがわかってりゃ、賭けられるだろ」

先ほどの客が笑い出す。


釣られて周りも笑う。


あぁ、こいつらもアホなんだろう。

ゲームをしながら、見極めよう。

俺はそう思った。

サイコロがセットされる。


そして賭けだ。

「低い」

俺は低いに賭けた。

高いが3、低いが4だった。


サイコロが落とされる。

サイコロが筒の中を転げ落ちる音が聞こえる。

緊張。

胃の辺りが掴まれたような感覚がする。


「高い」

いきなり負けた。


胴元に集められた硬貨7枚の中から、

てら銭として硬貨1枚が引かれ、

残りの6枚を勝者3人でわける。


つまり硬貨2枚ずつが、勝者に配られた。


単純だが、面白いな。


勝率は五分。

だが配当は人数で変わる。


もしかして、

これは皆が賭けてない方に賭けると期待値が最大になるという事か?

そう思った。


競馬では皆が賭けていないのが、大穴になる。

でも実際に勝率は低い。

これはどうだ。

皆が賭けてない方を選ぶと期待値は大きくなる。


しかし、

どっちに賭けるかは、予想できない。

ちょっと待て、

本当にそうか?


たしか、

前に半にしか賭けない博徒がいたよな。


そんな奴がいるんじゃねぇか。

サイコロがどちらに触れるかは予想できない。

しかし、

博徒の性格がわかれば、

期待値だけはコントロールできるんじゃねぇか?


そう思った。


俺は周りを観察しながら、

賭けを続けた。


癖があるようで、

ない。

ないようである。

つかめそうで、つかめない。

そんな状態が長く続いた。


勝っては負ける。

勝っては負けるの連続。


勝ち続けることは、

難しい。

50%で勝てるゲームなのに、

なぜすんなり勝てない。

俺は苛立った。


外はすっかり暗くなり、

所持金も半分を切った。


いつもなら、

ギリギリまで粘るところだが、

ここがどこなのかもわからない。

俺は一度冷静になろうと、

宿に戻った。


街灯もない。

ライトも持ってない。

俺はこけそうになりながら、

歩いて帰った。


部屋に戻ると、

ニコが一人本を読んでいた。


「おかえりなさい。ほかの二人は酒と女です」

ニコはそう言った。


「あぁそうか」

俺は愛想なく答えた。


「賭場ってどんな事をするんですか?」


「あぁサイコロの数字が123、456のどちらになるか予想する賭けだ」


「じゃあ。お金だいぶ減ったんじゃないんですか?」


「なんで分かる」

俺は言った。


「なんでって簡単じゃないですか。確率の問題ですよ」


「バカ言え。確率なら五分五分だろ」


「いえいえ。賭博は客が負ける仕組みになってるんですよ」


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