第670話追いかけっこ終了
「ということは、これは破壊せずとも、持ち上げてひっくり返せば、中にいるやつらを外に出すことができる」
「っ!?
なるほどー」
「確かにー」
結局はボウルのように石が地面の上に乗っかっていて、中に子供たちがいるだけの状態である。
また、地面は完全に平というわけではないため、地上と接している部分には十分に指をかけて、持ち上げるだけの隙間がある。
「中の人たちには気付かれないようにね。
あと、少し協力者が欲しいんだけど、周りの皆集められる?」
ウィリィンは指を口元へと持っていき、静かにするように伝えつつ、小さな声でそう告げる。
周りの子はコクコクとうなづいて、周りの子を招集し始める。
「よし、これで後は集まるのを待つだけかな」
「ん、でも、実際私とウィリィンがいれば持ち上がったんじゃ?」
エトゥの目算だとこれぐらいの壁であれば2人でも持ち上げられると判断したようだ。
まあ、実際ウィリィンも触った感じから、一人で持ち上げるのは厳しいが、エトゥぐらいのサポートがあれば十分に持ち上がりそうだという感じはしていた。
だが、ウィリィン的には持ち上げた際の中にいる子達からの攻撃に被弾したくなかったため、人数を増やし、安全策を取ったわけであるが、
「重さ的にはそうだけど、確実に仕留めるなら人数は多い方がいいよ。
中から反撃されるのは確実だし、持ち上げられることに気付かれたら、すぐにタッチまで行きたいしね。
一回失敗したら色々対策もしてきそうだし」
「なるほど」
ウィリィンはもっともらしい意見をエトゥに説明し、納得してもらった。
そうこうしているうちに子供たちが集まってきた。
「んじゃ、一気に行くよっ」
「「「「おおー」」」」
ウィリィンの掛け声に合わせ、皆で石の壁の下の部分を掴み、一気に持ち上げ、ひっくり返した。
「お?」
「ふぇ?」
「今だぁぁぁぁぁ」
「「「「わー!!!!」」」」
中の子達が急に防御が解かれたのに気づき、とぼけている間に、ウィリィン達は突撃する。
そして、そのままタッチすることに成功した。
「皆、協力ありがとう」
「タッチできて良かったー」
「楽しかったー」
ウィリィンが皆に感謝を述べると、返答をしつつ、他の獲物を狙いに、別の場所へと向かっていった。
「これでもう大丈夫だとは思うけど、ああいう感じで身体能力だけじゃ解決が難しそうなのがいたら潰して回ろうか」
「ん、そうする」
ウィリィンとエトゥが認識している中で突破が困難そうだと判断したのは今の2つ。
他は完全に手が届く余地がないような戦術を使っている子はいないため、時間が経てばそのうち全員がタッチされることだろう。
「いやー、色々試行錯誤される前にタッチできてよかったよ。
足元含めて檻状にされるだけでも結構厳しかっただろうし、石の鎧を全身に着られる方がよっぽど対処がしにくかったと思う」
「ん、確かに。
檻の方が壊しにくいし、補填も簡単、石の鎧なんて纏われたら、タッチできないのに、逃げ回られて、かなり大変だった可能性高い」
檻であれば破壊されたとしても補填する量は少なくて済むし、それに加えて強度に関しても全体を覆うより集中させることができる。
それに、外の様子も伺うことができるし、その分軽くなるが、足元も檻で覆っておけば、ひっくり返されてもいきなり防御が機能しなくなるということはない。
石の鎧をまとわれた場合は、鎧部分でないところに触れなければならないのに加え、その状態で逃げ回るので、かなり苦戦を強いられる可能性が高かった。
彼らにはそれらを実現できるだけの実力は備わっていたため、そこまで昇華させずにタッチさせることができたのは良い判断だっただろう。
その後はウィリィンとエトゥはそんな感じでたまに手を貸したり、魔法なしで対処が難しそうなものの対応を行った。
そして、
「終了でーす。
全員が赤鉢巻きになりましたー」
ミラナから全員がタッチされた旨のアナウンスがなされ、終了となった。
「ふう」
ウィリィンは無事に終わり、少し肩の力を抜いた。
一応、常に攻撃に晒される可能性があったので、全方位に注意を払いながら行動していたうえ、魔法が使えないので少々普段より強く気を張っていた。
「ん、まあ当然の結果」
エトゥは全滅させることができたことについてご満悦のようだ。
まあ、このクラスの強者であるウィリィンとエトゥが協力して勝てないわけがない。
最後の方はほぼ消化的に残りの子が人数差に押し切られ、やられていく様を見ているだけであったが、時間内に決着がつかなそうであれば本格的に参戦する算段は立てていた。
「はい、皆さん。
お時間もほとんど終わりに近づいていますので、これでおしまいにします。
また、好評でしたら実施しますからね。
皆さん、追いかけっこ楽しめましたかー?」
「「「「「わー!!!!」」」」」
これで今日の授業は終了のようだ。
ウィリィンはもう一試合あることを想定していたので、ないことが判明してさらに力が抜けた。




