第669話魔法なしでの攻略
その子らは魔法を攻撃ではなく、タッチから逃れるための防御として使用しており、天井付近に風の魔法を活用して浮かんでいたり、石の魔法で堅牢な建物を作成し、壊そうとするのをひたすら中から補填して耐えることをしている子もいる。
こちらは魔法を使用できないので、天井付近には飛び上がっても届かず、仮に届いたとしても、相手方はある程度自由に動き回ることができるため、それによってタッチを回避することができる。
引きこもっている方はそのまま、物理的に接触が不可能となっている。
「あれはちょっと良くないかね。
人数差でサクッと何とかなるみたいな感じでもなさそうだし、手伝いに行こうか。
まずは、あの上空で浮かんでいるのから」
「ん、分かった」
ウィリィンとエトゥは上空で浮かんでいる子から一番近い位置へと歩みを進める。
こちらを意識されて警戒されると面倒であるので、ひとまずはなるべく刺激を与えないように、近づく。
そして、ある程度まで近づいたが、やはり、跳躍して届くような距離ではない。
「エトゥを私が投げ飛ばせばあそこに届くし、空中で逃げられたとしても身体を変形させれば、喰らいついて落とせるかなと考えてるんだけど、いける?
まあ、エトゥなら全員一発でやれる可能性が高そうってだけで、周りにいる子に手伝ってもらって、連続で投げればいけるとは思う」
「ん、私一人で大丈夫。
あんな油断しているやつら取り逃がすほど甘くない」
エトゥは上空で構えている子達を見て、増員を不要と判断する。
上空にいる子達はこちらが魔法を使えないことで完全に慢心している。
やはり、自身は絶対に安全だと考えている人の意識にはどうしても隙が生じる。
その状態の子達への奇襲で仕留めそこなうことはまずないという判断である。
「分かった、了解。
じゃあ、飛ばすよ?」
「ん、ばっちこい」
ウィリィンはエトゥを掴み上げると、力を込めて投げ飛ばした。
エトゥは空気抵抗の少ない形に変形してなるべく高度を稼ぎ、そして、そのままそのうちの一人に飛び掛かって、タッチする。
すると赤い鉢巻の効果で墜落するのと同時に驚きの声を上げて、周囲の子に気付かれるが、その驚いている間に、落下し始めた子を足蹴にピョンピョンと素早く子供たちの上を飛んでタッチしながら渡り、最後に、ウィリィンの方へと戻ってきて、全滅が完了した。
「おおー、見事に全滅だね」
「ん、ウィリィンもいいとこ投げてくれた」
2人は健闘を称え合った。
「んじゃ、次行こうか。
と言っても、次は結構困ってるんだよね・・・」
「まあ、そこまで硬くないはず」
「だといいけど」
ウィリィンは次の石の中に引きこもっている子達を見やり、少々不安になりつつも向かう。
これが破壊できないほどの硬さだった場合、ぶっちゃけどうしようもない。
全体をカバーする必要があるため、密閉空間にしており、こちらの接近に気取られないというのは強みだろうか。
「ん、結構分厚い」
「そうだね、壊せなくはないだろうけど、中から補填されると、結構厳しいかも」
ちなみに、コンコンとノックすると
「入ってますー」
と複数の声が返ってくる。
まあ、先ほどの空中にいた子達以上に油断している状態だろう。
「まずは、削ってみようかな」
ウィリィンは再度道中で補給していた手ごろな石を壁に叩きつけると、一発でひび割れを起こすことに成功した。
が、それも衝撃が外から来たことに感づいた中の子達が急いで修復してくる。
修復のペースより速く叩き続ければ破壊することは不可能ではなさそうであるが、
「これさ、壊せなくはないかもだけど、確実にこの持ってる石の方がもたないのと、穴空いたら確実に邪魔してくるよね?」
「ん、十中八九してくる。
わざわざ壊してくるのを傍観する必要はない」
素手でも壊せなくはないだろうが、どちらかというと問題は穴を空けた後の内側からの妨害だ。
当然、人ひとりが入れるほどの穴をいっぺんに開けるのは難しい。
となれば、そこまで穴を広げる間、こちらからの反撃を許さず、一方的に攻撃されることになる。
「じゃあ、どうするのー?」
「壊せないー?」
周りの子達もウィリィンとエトゥの検証を見て、どうするのか見守っている。
「うーん・・・。
まだ青鉢巻きの子を誘導して、ここに魔法で攻撃させる?
いや、確実性がなさすぎる。
石を沢山回収して、複数人で削ればできなくはないけど、穴を破壊してから集中砲火されて、その間反撃できないことを考えると、現実的じゃない。
あっ、ちょっと試していい?」
一つ思いついたウィリィンは石の壁の地面と接触している部分を確認し始める。
「ん、何がしたいのかなんとなく分かってきた、確かにこれならいける?」
エトゥもウィリィンが確認し始めた場所を見て、何をしようとしているのか感づいたようだ。
「えー?」
「どういうことー?」
「これってさ、地面から生えているんじゃなくて、地面の上に石のボウルが置かれているような状態なんだよね」




