第552話色欲の領地
「今日は社会か」
画面に表示される内容を確認しながら、ウィリィンは席に着く。
まずは自身の住んでいる色欲の領主が治める地域について説明されるようだ。
「ほとんど私有地?の中でしか行動したこと無いからなぁ。
知らないことだらけだ」
ウィリィンの生活圏はかなり狭い。
用事が無ければ生活は館内の自室、食堂、中庭、大浴場で完結してしまっている。
主にフェアと出掛けることになった時も人がいるようなところに出向くことは無く、所有しているダンジョン、山、湖といった形になる。
「そう考えると、人が沢山いるようなところに行くことはほぼ無いなぁ」
思い返しても、キュスとオルキルのライブ関連でライブ会場とその後の打ち上げみたいなのに参加したぐらいだろう。
まあ、ウィリィンも先程の戦いで実感したことであるが、まだまだ未熟である。
これはウィリィンが鍛錬を凄まじく頑張っているとはいえ、身体の成育や魔力、経験といった時の流れをどうしてもかけなければならないものが多々ある。
格上に対して勝てる方法というのも身に着けてはいるものの、それは相手への対策が上手くはめるという工程が必要なわけで、素のスペックだけを比較した場合は負けているわけだ。
「うーん、やっぱり人がいる所はいいかな」
有象無象がいる場所では何が起きるか分かったものでは無い。
学園内こそ、クラスに一人教授が着き、防衛に関してもしっかりとした組織や体制が存在する。
それに対し、今見ている色欲の治める領土の栄えている場所であったり、観光名所と呼ばれるような場所を見ると、物騒なものばかりである。
「まあ、メイド達の話しには聞いてたけど、色街が凄いね...。
田舎の方も精がつくものが特産って、それで良いのか?
観光名所は安産とか、恋の成就...略奪、寝取りって、そんなの祈願したり、パワースポットにするなよ」
地図と土地の説明を見ながら解説を受けているわけであるが、領土の複数ヶ所に大規模な色街が存在しており、それ同士を繋ぐ形で道路等のインフラが整えられている。
色恋沙汰を扱うサービスがメインであり、そういった欲求の発散以外にもシンプルに人との出会いを求めて日夜宴会騒ぎをやっているようだ。
また、地方になると、そういった騒がしさとは無縁となるが、デートスポットであったり、過去のロマンチックな伝説、一部曰くつきな出来事があった場所が観光名所となっている。
デートスポットでは二人の関係性を深め合ったり、その出来事と同じようなことが起こる様に祈るようだ。
それらの場所を順々に巡るツアーも積極的に開催されているようで、色街とは異なる意味で栄えているようだ。
そして、それらの名所も無いような場所に関しては自然に囲まれており、そこで精のつくものを育てている、または山、川、草原など、自然の中から取っている。
まあ、著名な恋の占い師がいるなど、例外は存在するようであるが。
色街などがあるからそういった精の付くものが特産となったというよりは、精のつくものが特産となりやすい自然状況が整っており、それの近くにそれを消費することができる施設ができていって、繁栄していった感じのようだ。
「人口は一番多い・・・。
まあ、流行ってるものが流行ってるものだしなぁ。
それに合わせて、子育て支援とかそういった政策がしっかりあるから、思った以上に暮らしやすいんだろうなぁ」
出会いの場が多い分、結婚する人数も多いため、子供も生まれやすい。
それに、特産が特産なので、盛り上がりやすいという環境が整備されており、それに加えて子育てのケアも充実しているとなれば、人口が増えないわけがない。
といっても色恋沙汰にはトラブルがつきものであり、ドロドロとした人間関係によって争いや、犯罪が絶えないような区画もそうでない場所との棲み分けこそできているものの存在するようだ。
「人間関係トラブルは怖いなぁ。
特に好きとか嫌いの感情って周囲が見えなくなるからなぁ」
恋は盲目とはよく言ったもので、好きといった感情は際限なく大きくなりがちであり、そうなった際の人の行動は人知の範疇を超える。
その人に対して全てを捧げたり、勝手に相手を美化して理想像をその人物に押し付け、周りを攻撃し始める。
そして、何かしらの理由でその感情が反転し、負の感情となると、騙された、憎いといった感情へと変わることになる。
好きの感情が強ければ強いほど、反転した際の感情も強くなるわけで、そうなった際に種族的に粘着された時の厄介さはすさまじい。
死んでも復活し、痛みも別に罰とはならないし、一応拘束するなど対処の方法は無くはないが、確固たる意志を持てばそれは耐えられる恐れがあり、強い感情はそのまま呪いとして攻撃に転用される恐れがある。
寿命を迎えるまで、それが残り続けるどころか、強まり続けていく可能性があるのは穏やかではない。
特にウィリィンの場合、体質上他の人より嫌だと感じることが多いわけで、あまり誰にも恨まれたくない。




