第551話お菓子騒動
「その手があったか・・・。
どう防ぐかに目が行き過ぎてたわ。
ちなみにナイフはゴーレムに指揮しつつ石のドームを作って、完全に塞いで対抗したわ」
女子はウィリィンの話を聞いて、考え込む。
ただ、すぐに授業終了を告げる合図が鳴り響く。
「あら、時間。
また戦いたいわ」
「是非」
足元に魔法陣が出現すると、景色が一瞬ぶれて、元の教室へと戻ってきた。
「ふいぃぃぃぃ」
ウィリィンは椅子に座って脱力する。
実力が拮抗している相手との3連戦は結構体力もそうだが、精神を消耗する。
それを乗り切ったという開放感が凄く、身体が自然と緩んでしまう。
だが、這うようにこちらへと近づいて来る気配を感じて、ペシッと払いのける。
「あうっ」
来たのはエトゥであり、割と疲労した様子でウィリィンの血を飲んで、回復を図ろうとしたのだろう。
「...私もかなり疲れてて、飲まれるとキツイんだけど...」
ウィリィンはやんわりとエトゥに対して血を飲ませることへの拒絶を伝える。
この状態で血まで飲まれると、次と次の授業を乗り切れるビジョンが浮かばない。
っと、ウィリィンの反応を予想したのか、エトゥは何か差し出してくる。
「これ、お納めください」
「...吸っていいよ」
「わぁーい」
許可を出すと、エトゥはウィリィンの腕へと噛み付いた。
そして、ウィリィンは受け取ったプリンを食べ始める。
「プリン、よく持ってたね」
「ウィリィンが朝肉まん食べない可能性があったから、何個か他の食べ物を持ってきてた」
「なるほど」
「ん、お前らはここから好きに食べていい」
エトゥは羨ましそうな顔でこちらを見ている周りの子達に対して駄菓子を色々と出して机へと並べる。
「わーい」
「エトゥありがとー」
「甘ーい」
「私も欲しいー」
「僕も僕もー」
駄菓子を求めてどんどん子供達が殺到してくる。
「...流石にこの人数分は持ってきてない」
エトゥは凄まじい速度で無くなっていくお菓子を少し見やりつつも、血を飲むのは止めずにポツリと呟く。
「え、喧嘩になるんじゃない?」
ウィリィンはプリンを味わってほんわかしていた気持ちから覚めて、少し青ざめながら、尋ねる。
「ん、食べ物の恨みは大きい。
十分にあり得る」
「はーい、私の方からもお菓子を配りますよー。
皆さん授業頑張りましたね。
次も授業がありますから、これを食べて、引き続き頑張ってくださいね」
「「「「わー!!!」」」」
ミラナが同様にお菓子を提供し始め、後ろの方で待っていた子供達がそちらへと流れていった。
これで誰かが食べれないといった事態には陥らないだろう。
「ん、良かった」
「ふう、何も考えずに食べ始めた私も考慮が足りて無かったね。
ミラナ教授にはしっかり感謝を伝えとかないと」
「ん、一緒にいく」
「...ミラナ教授に話す時は離れるよね?」
「勿論」
「ならいいけど」
ウィリィンはミラナのいる机の近くまで辿り着く。
すると、エトゥも流石に離れてウィリィンの横に立つ。
「ミラナ教授、お菓子ありがとうございます。
全員分は持っていなかったので助かりました」
「ん、喧嘩になるところだった。
ありがとうございました」
ウィリィンはエトゥと頭を下げて感謝を述べる。
「いえいえ、皆さんが楽しく、充実した教育を受けられることが一番ですから。
適度な間食は学習の効率を上げますので、いい機会でした。
ただウィリィン、迂闊でしたね。
周囲の目を常に確認することの重要性は理解していると思いますので、自身の動きがどう影響を与えるか、更に意識して考えてみてください。
エトゥはエネルギー配分、効率についてもう少し意識しましょうか。
ウィリィンのおかげで学園内での安定供給ができるようになったとはいえ、飛ばしすぎです。
それができればもっといっぱい戦えるようになりますよ」
「はい、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
ミラナのアドバイスに対し、二人は感謝を述べる。
確かに周りの目は普段から意識しているつもりではあったが、通常時の状態か、明確に異常な状態の時の場合のシチュエーションしか考慮できていなかった。
通常時であれば、ウィリィンがプリンを食べていたとしてもあそこまで周囲の気を引くことは無かっただろうが、今回の場合、皆連戦により少なからず疲労していて、甘い物を欲していた。
そういった些細とも言えるような状態の違いは意識できていなかった。
だがその行動がクラスの大半の注目を引き、エトゥがお菓子を配ったことで足りずに喧嘩にまで発展する恐れがあった。
クラス内のちょっとした動きでも波及する可能性があるとなると、ウィリィンの影響力が高まれば高まるほど波及の仕方も大きくなる。
ウィリィンの出自的に影響力はどうしても大きくなることは確実であるため、より一層気をつけようと、決心を改める。
「そろそろ次の授業ですね。
皆さん頑張ってください」
ミラナがそう告げ終えるのとほぼ同時に授業開始の合図が鳴り響く。
魔法陣が出現し、景色が切り替わると、部屋へと転移した。




