第550話3連戦終了
ウィリィンはここまでの熱量を纏うと熱に対して耐性があると言っても身体が焼けてしまう。
ヒリヒリする感覚を冷やして抑える。
「くぅぅぅぅぅ、負けたぁぁぁぁ。
いやぁ、いい火力だったわ」
男子の魂再も終了し、ウィリィンの方へと話しかけてくる。
「いえ、何とか溶かせて良かったです。
それにナイフ捌き、凄かったです。
特に遠隔からの操作の精度がとても良くて、中々当てられませんでした。
魔力で直接動かしてるのはそういった、精密操作を実現するためですか?」
「そうそう。
遠隔操作する手段は色々あるが、あれが一番動かしやすいんだ。
糸や磁力でもやれないことは無いが、どうしても干渉されやすいし、自由自在とまでは中々いかねえな。
ま、その代わり燃費は悪いから、もっと大量に扱うなら精度を下げて、それらの手段で対抗するか、さっきのゴーレムみたいに物自体に命令をインプットしておくかだな」
魔力での操作はその物自体に自身と同じ魔力を付与しているため、物理現象、特に磁力等で操ろうとした際に比べ、相手が同様の方法でこちらの操作を奪おうとした場合の容易さが大きく変わる。
磁力であれば出力勝負となり、出力が低くとも、圧倒的な差がなければ妨害する余地が十分にあるし、相手に拮抗する分の余分な魔力を使用させることができる。
のに対し魔力での操作の場合、物が魔力に対する識別を行える為、自身の魔力による操作しか受け付けないということが可能なのだ。
まあ、相手に自身の魔力を真似られてしまうと奪われたりする恐れはあるため、確実に奪われないというわけではないし、魔力の繋がりを相手の魔力によって包まれたりして、シャットアウトされたりしても動かせなくなってしまう。
「ゴーレムのようにしないのは理由があるのですか?」
ゴーレムの場合、常に魔力で繋がっているわけではない。
既にどういう動作をさせるかゴーレム内にインプットされており、自身で思考して動く。
そして状況に合わせて魔力を放って、命令を追加、変更を行う形だ。
生成にこそコストが多くかかるものの、その後の維持は常に繋がって操作するよりは軽く済むし、繋げて操作する場合と異なり、そもそもが独立して動くため、魔力が遮断されたとしても命令通りに動き続けることができる。
「精度とコストだな。
やっぱ直で繋いで操作した方が動きが断然いい。
攻撃を掻い潜るなら断然そっちのほうがいい。
そして、ナイフは壊れやすいからな。
そこまで一つに魔力を使えねえ。
あと、ナイフの場合、ゴーレムと比べて、そこまで複雑な構造をしてるわけじゃ無いから命令をインプットしたところで大した動きが出来るわけじゃない」
「なるほど...」
魔力を直接繋ぐことでよりリアルタイムに動きの反映を行うことができ、先程のウィリィンの防御を掻い潜ったナイフ捌きは繋がっているからこそできる動きだ。
また、ゴーレムは手足や胴体等、複数のパーツが組み合わせれて作成されている。
その為、歩くという動作をするだけでもかなり複雑な命令を与える必要があり、それを一つ一つ行うのは面倒である。
であるなら歩くときの一連の流れを予め構築しておき、ゴーレム自身で実行させた方が、手間がかからない。
そして、ナイフは、ゴーレムに比べると消耗が激しい。
直ぐ壊れるものにそこまでのコストをかけ、すぐに壊されてしまっては魔力が勿体ないため、この方法を取っているとのこと。
「ま、動きが良くても近づいたら問答無用で溶かされちゃ、意味ないけどな。
んじゃ、負けちったが、楽しかったぜ。
ダチが負けたか聞いて、いじらないといけないからな、またやろうぜ」
「はい、ありがとうございました」
ウィリィンと男子は結界の外へと出る。
外では既に2人は戦いを終えていて、祈るような恰好で男子の方がこちらの方をじっと見ていた。
出てきたのが分かるとこちらに向かって大きな声で話かけてくる。
「おーい、どうだったー?」
「ああ、負けたよ。
お前は?」
すると、拳をグッと握りしめながら、声高らかに答える。
「っしゃあ。
俺は勝ったぜ、これで同点だな」
「っくーうぅぅぅ。
まじかよ。
せめてお前が全敗だったらと思ってたんだが」
「残念だったなー」
男子2人はわいわいと戦績について話し合っていると、女子の方がウィリィンの方へと近寄ってきて話しかけてくる。
「負けちゃったわ。
全勝できるかと思ったのだけど、そううまくはいかないわね。
ウィリィンは勝てたようだけどどうだったの?」
「ナイフを頑張って炎で溶かして勝ちました。
そちらは何が敗因だったんですか?」
「ゴーレムたちがバターみたいに切り裂かれちゃったのよ。
あの大剣、破壊力高すぎるわ」
「ああ、そういうことですね」
女子が扱うのは石にまつわる魔法である。
金属ほどではないが、硬さが売りであり、これをスパスパとまとめて破壊されたりされると、流石に厳しい。
石の壁含め、勢いそのままに破壊され、倒されてしまったようだ。
「私は、うまく握れなくしてその隙をつけました」




