第548話ゴーレムの規格
その為、この一瞬であれば対処は薄く、ウィリィンの攻撃は届きうる。
「いくっ」
ウィリィンは炎を纏って出力を上げ、ゴーレム達をはじき飛ばしながら一直線に進んでいく。
女子もこの時間で生み出せた刃を持ったゴーレムをウィリィンに向かって向かわせつつ、一度生成をストップすることでウィリィンの迎撃へとリソースを使う。
ウィリィンが動きやすさを考慮し、物体で覆っていない部分を狙い、石の礫を連射するが、ウィリィンもここを逃せばもうチャンスは中々生み出せないことは理解しているため、かわせるものはかわし、回避が難しいものに関してはダメージを貰いつつも腕で弾き、軌道をずらしていく。
女子を守る石の壁も空気を流し込む要領で破壊し、生み出した剣に魔力を纏わせ、女子を断ち切ろうとする。
女子の方も攻撃を喰らうまいと必死に妨害するが、迫る刃を止めるには間合いが近すぎ、ウィリィンも魔力消費度外視で出力を石を余裕を持って切り裂くことができるレベルにまで高めて対抗している。
刃は遂に女子の首をとらえようとしたが、
「まさか、この手まで使うことになるとはね」
女子がそう呟いた瞬間、キンっ、と頭の中で何かが弾けるような音がし、驚く間もなく、ウィリィンの全身がコントロールを失い、地面へと倒れ伏した。
耳の中から血が大量に流れ出てくるような感触を感じつつも、歩み寄ってきた女子に頭を石の礫で貫かれ、ウィリィンは死んでしまった。
ウィリィンは癒しの炎を纏って、魂再の痛みを軽減する。
そして、身体の再生が終わると、女子がこちらへと手を伸ばしており、ウィリィンはその手を取ると、倒れ込んでいたウィリィンを起き上がらせて、ついでに身体や服についた汚れを取り除いてくれる。
「これで綺麗になったわ」
「ありがとうございます」
ウィリィンは女子に対して感謝を述べる。
そして、ウィリィンは先程の敗因となった頭を突然襲ったあの感覚について考える。
その後は身体が一切言う事を聞かず、感覚すらあやふやな感じであり、頭に何が起きたかは衝撃が強すぎて、意識できなかったが、耳の中から液体、血が流れ出てきている感覚はかろうじて感じられた。
となると、ウィリィンは耳から頭の内部を貫かれ、まともに動けなくなったと考えるのが正しいだろう。
「最後、何が起きたのか気になるかしら?」
女子は聞いてほしそうな顔を浮かべつつ、ウィリィンの方を見てくる。
「はい、是非。
何かで耳から内側に貫かれたのは倒れた時になんとなく感じられましたが、どうやったのか分からなかったです」
とウィリィンが答えると、女子は満足そうに勿体ぶった態度を一瞬取った後に何をしたのか説明し始めた。
「ウィリィンを貫いたのはこれよ。
これを耳の中に忍ばせてたの。
忍び込ませたタイミングは、砂を周囲にまき散らした時ね」
女子はウィリィンに手の平の上に乗せた極小サイズのゴーレムを見せる。
「とても小さいですね。
これに気付くのは難しい・・・。
完敗です」
これがあの瞬間にウィリィンの頭を耳から貫き、脳を破壊したことが行動不能になった要因であった。
見た目こそ小さいが当然硬さは他の石と同様であり、俊敏に動き回ることが可能であるため、その力を持って一瞬でウィリィンの脳を破壊したようだ。
「ふふん。
まあ、これは奥の手だから、本来は使うつもりは無かったのだけれどね?
ウィリィン、とっても強かったわ。
また戦いましょ」
「ええ、是非」
このタイミングで結界が解除され、外へ出るように促される。
ウィリィンは女子と話しながら、一緒に外へと向かう。
「それに、まだ遠くのゴーレムを生成し直したりするのは上手くできないのよ。
よく気付いたわね」
「はい、壊れかけのゴーレムをそのまま使ったり、補充できるならしない理由がない場面が何回かありましたから。
そういえばゴーレムは色々なサイズで作れるんですね。
これも戦略ですか?」
「そうそうっ。
同じ大きさのものばかり作っておけば、耳の中にこんな小さいゴーレムが入っているだなんて思わないでしょ?
勿論、同じ規格の方が纏めて操作しやすいっていうのはあるわよ」
女子は嬉しそうにウィリィンの質問に関して答えてくれる。
ゴーレムを同じ規格で作成することで、操作をしやすくしているのと同時に、相手にその大きさのものしか存在しないように錯覚させる。
それが極小のゴーレムの可能性を認識の外へと少しでも逸らす戦略であったようだ。
ただ、本来であればこの手段は使わずに勝つことを想定したようでウィリィンの奮闘を称えてくれた。
そうこうしていると男子二人の方も終了したようで、わいわいと話しながら外へと出てくる。
「やりいー」
「くっそー、負けたー」
負けたのは先ほどウィリィンと戦った方のようだ。
「俺がウィリィンにも勝てば、2勝1敗で、お前が次勝っても1勝2敗だな。
もし、俺が負けても同点かそれ以下だなっ」
「いや、勝つし、お前は負けるねっ。
仲良く同点で終わろうぜ」




