第545話大剣の攻略
「ういー。
防げた、こっからは俺のターンだぜぇぇぇぇぇぇ」
男子は間合いを意識しつつ、両手に持った大剣を振りかざしてくる。
こちらからの攻撃にも同様に大剣を使って防がれてしまうため、中々近づかせてくれない。
「これはまずいっねっ」
男子の大剣を振る速度は段々と速く、ウィリィンを捉え始めており、少しずつ攻撃が掠め始めている。
そして掠めているとは思えないぐらいの切傷がウィリィンには刻まれている。
状況の打開を試みているウィリィンであるが、中々に上手くいっていない。
障壁となっているのは大剣による広範囲の攻撃に対して回避に専念せざるを得ないことと、大剣自体が大きく、2本も振り回している影響で攻撃が通る面積がとても少ない。
そしてそれを振り回すことを可能としているのは素の身体能力と魔力による掛け合わせであった。
「おらおらおらー。
言っとくが、制限時間一杯はこれぐらいの速度で振り回せるからなっ。
息切れは期待するだけ無駄だぜっ」
ウィリィンの中で期待していた事項のうちの一つ、息切れであるが、今の発言ではったりの可能性も否定できないが、かなり可能性は下がった。
ウィリィンは先ほどよりも被弾のリスクを背負いつつも打開の方法を探っていく。
「っち、ぶれないかっ」
「そんな威力じゃなぁ?」
大剣の側面に対して強めに攻撃を叩き込んでバランスを崩させようとしてみたが、受け止められてしまい、目論見は失敗に終わった。
中々に体幹と、攻撃の受け流しがうまく、自身の体重よりも格段に重たいものを振り回しているのにも関わらず、隙がない。
もっと強く攻撃を叩き込めば少しはぐらつくかもしれないが、相手の練度的にウィリィンが望むほどの隙は生じないと考え、次の策を講じる。
「流石に電気を流してもくれないし、腐食に対しても耐性があるか」
「前におんなじようなことをされたからなっ。
あのときは凄いあほ面さらしたってもんよっ」
ウィリィンは電撃を叩き込んで大剣越しに男子を痺れさせようとしたが、金属は耐電仕様になっているようで、電気が伝ることは無く、同様に生み出した毒で腐食させようとしたが、弾かれるか、腐食した部分は素早く捨てられ、新しく補填されてしまった。
そもそもの大剣の生成速度が速いため、武器を削れば勝てるというわけではなく、少し隙は生じるだろうが、勝ちに繋がるほどのものにはならない。
また、本人に対して当てようとした場合はそもそもの大剣に防がれてしまうため、意味を成さなかった。
諦めて次。
「体幹が良すぎるっ」
「そりゃ、これを毎日振り回してんだっ。
足元が悪くなったぐらいで動きがそこまで悪くなったりしねえのよっ」
ウィリィンは次に足元に対して、油を展開し、地面を滑る様にしてみた。
自身は滑性を抑えられるように自身の靴に仕掛けを施し、迎え撃とうとしたが、効果は無かった。
日頃から大剣を振り回している影響で体幹がとても鍛えられており、地面が不安定な状態でも姿勢を正しく整え続けることができるようだ。
一応、可燃性の液体である為、火をつけて結界内全体を燃やしてみたが、ほぼダメージは入っていないし、結界は上が開いているタイプの為、酸欠も期待できない。
金属が熱せられて持つのが難しいということも無かった。
まあ、痛みに対して負の感情を抱くような感じではないので、熱かろうと、問題なく持つだろうという予測は立っていたので、これは確認程度、ほとんど期待はしていなかった。
だが、その発想はウィリィンに光明を示した。
「っち、取りそこなったっ。
が、これは結構深く入ったぜっ!?
んな!?大剣を持てねえ!?」
男子は両手に持つ大剣を何とか持とうと奮闘するが、手からずり落ちてしまった。
「ふう、ふう、げほっ、げほっ、何とかいけた」
ウィリィンは被弾覚悟で突っ込み、男子の両の手の小指を切り落したのだ。
人の握力は小指がかなりの割合を占めている。
それを切り落されたことで、男子は握力が激減し、重たい大剣を持っていられなくなったのだ。
男子の防御は想定以上に硬く、大剣の間合いの内側に入るのは容易ではなかった。
そのため、攻撃の際に脇腹を割と深めにえぐられてしまったものの、無理やり突破し、目的となる場所だけの破壊に集中したのだ。
そりゃ、手首などを丸ごといければ確実に持てなくできるだろうが、その動きは相手方も警戒し、防御に比重を置く。
その塩梅を満たせるのが小指の切断であった。
言動自体は結構ふざけたもののように感じられるが、シンプルに身体能力が高く、中々にこちらの出力では揺さぶりをかけるのが難しく、それでいて、身体強化をしてからの動きは堅実であり、じわじわと追い詰められていたが、ようやく明確な隙を生み出すことができた。
相手が困惑している間に今度こそ、間合いの内側まで詰め寄る。
「っ!?こんにゃろっ」
男子は負けじと手と大剣を巻き付けて固定し、振り回してくるが、
「それだと繊細な動きはできないよねっ」
ウィリィンはひらりと攻撃をかわして、そのまま内側へと侵入を果たした。




