第536話代わりのご褒美
ということでウィリィンを弟子にするかどうかの話は一度保留となった。
とにかく今すぐにでも弟子にさせたいギャマナをナタトがうまく丸め込んでくれた。
そう、かなりウィリィンが成熟して見えるのであれだが、まだ学園を通い始めて3日しか経っていないのだ。
色々踏み込んだことを決めるには時期早々だろう。
そして、ウィリィンとしても学園生活が濃厚過ぎて胃もたれしそうである。
「となると、どうしましょう。
今日ウィリィンちゃんにあげることができるものがないわね」
「弟子としての仮期間というだけでも十分では無いでしょうか?」
「それだけだとちょっと寂しいじゃない。
っ、なら、この魔導具をあげるわ。
魔法の練習、実験、色々なことに使えるわよ」
ギャマナ的には弟子入り検討期間を設けるというだけではどうも不満らしく、先程まで使っていた指輪の魔導具を差し出してくる。
「いやいやいや、これって高級なものってお話じゃ...」
そう、炎の検証について行っているグループで聞いた話ではあらゆる属性に対応した魔導具は単体の属性のみを扱うものに比べて価値が高い。
わざわざグループとして節約するぐらいだ、汎用性を取らないだけの価値の差が存在するはずである。
「まあ、ちょっと高いけど、言うほどではないわよ?
それに常備しているのはそれだけだけど、何個か持ってるし、私なら簡単に一から作れるわ。
しかも新品じゃなくて、私が沢山使った後のお下がりだから更に価値は下がるわよ」
ギャマナは何事も無いようかに告げる。
「だとしても、貴重な素材を使っているのには変わりないので、一般的に人が10日ぐらい働かないと稼げない価値にはなりますが。
まあ、ウィリィンさん、ギャマナ部長もこう言っていることですし、実験用器具としてお借りしているぐらいに思っておけば良いですよ。
というより、受け取って頂けると助かります。
この調子では次ギャマナ部長が何をウィリィンさんに渡そうとするか、見当がつきませんので」
ナタトがウィリィンに対して受け取ってくれるように頼む。
「あ、はい、分かりました。
では、ひとまずはお借りするということで」
ウィリィンはナタトの意見を聞き、指輪を受け取ることにした。
確かに、ここで更に受け取りを拒否すると、次は突飛な物を渡しかねない為、少し高価ではあるが、無難なものを提案している今のところで納得しておいた方が良いだろう。
「何よ、これじゃ私がわがまま言ってるみたいじゃないの。
それに、ウィリィンちゃんは色欲領主のご令嬢よ?
これぐらい持ってても浮いたりしないわよ。
なんなら、その腕輪の魔導具の方がよっぽど価値が高いわよ。
というか、それにこの指輪と同じ機能、付いてるんじゃないかしら?
ちょっと調べ「そこまでです」」
ウィリィンの腕輪の機能について話が発展しそうになったところでナタトが割り込む。
「ご褒美のお話については指輪の魔導具で決定としましょう。
魔導具の構造を調べるのもいい勉強になりますから。
ギャマナ部長、分解したり、最悪壊れてしまっても構いませんよね?」
ナタトはまくし立てるように話して、会話の流れを変える。
「ええ、問題無いわ。
ウィリィンちゃんがそれから得られることが多いに越したことは無いもの。
なんなら、壊したら代わりをあげるわ」
ギャマナは気前の良く壊れた際は2つ目以降を渡してくれることを約束してくれる。
ウィリィンであれば破壊するにしても有意義に使ってくれるだろうという信頼に加え、性格的に壊すような真似はまずしないという小心な所まで読み取られているかもしれない。
ということで、ウィリィンは指輪を受け取ることとなり、それで解散となった。
ナタトについていく形で部屋を後にしたウィリィンであるが、ナタトが部屋を離れてすぐに話しかけてくる。
「ウィリィンさん、指輪を受け取ってくださり、ありがとうございました」
「いえ、私は何も...。
上手く話が纏まったみたいで、良かったです」
「いえ、こちらこそ、急に話しに割り込んで決めてしまって、申し訳ありません。
特にウィリィンさんの腕輪に話が向いた際はかなり危険でした。
ギャマナ部長がほぼ核心をついてましたが、その魔道具、指輪と同じような機能も実装されているのでしょう?」
「調べてみます」
ウィリィンは魔道具を調べて、機能を確認する。
ウィリィンも腕輪の全ての機能を理解しているわけではないが、とても多機能な腕輪である。
ウィリィンのよく使う機能の中で近しい機能では指定した魔法を出力する感覚を体験させるものがある。
そして、探した結果、
「ありました。
えっと、なので分解したりしてもいいのか確認したのですか?」
ウィリィンが魔法の出力に関する機能を操作し、探したところ、同様の制限を設定することに成功した。
となると、同じ機能を有した魔道具を持っていれば要らないという話しに発展する恐れがあった為、ナタトはかなり強引ではあったが、話を止めた上で、指輪の魔道具に機能以外の価値を見出した。




