第535話師弟
自身が見たり、聞いたりして理解できることについては自己完結して次に進んでしまうわけであるが、それは誰しもができるものではないというか個人差がある。
そして、ギャマナと自身にその差があり過ぎることを感じ、ギャマナが分かっていないことを察して、自身に説明をしてくれる訳であるが、それも全ての場面でそうとは限らないのに加え、回数を重ねるごとに申し訳ないような気持がどんどんと蓄積されてしまうようだ。
「ウィリィンちゃんの頭の柔軟性ならしっかりとついてこれると思うわよ。
知識面もすぐ身に着くでしょうし、挑戦させてみる価値はあるわよ」
「・・・そうだとしてもまだ時期早々ではないかと思うのですが。
まだ入部されてからほぼ時間も経っていませんし、見極めるのはまだ先でもよろしいでしょう。
一度弟子としてしまうと、申請も必要になってきますので、ウィリィンさんもプレッシャーを感じてしまうかと」
「あ、あのー。
話を遮ってしまって申し訳ないのですが、弟子入りって申請が必要なのでしょうか?
というより、何かしら公式な契約を結ぶものなのでしょうか?」
ウィリィンはナタトの口から出てきた申請の言葉について詳細を訪ねる。
最初はウィリィンとエトゥのようなほぼ口約束のような関係性かと思っていたのだが、どうやら話が違うようである。
「あ、ごめんなさいね。
ウィリィンちゃん、当事者そっちのけでお話しちゃって。
ナタト、説明おねがいできるかしら?」
「はい。
ウィリィンさん、いきなり弟子など言われても何が何だか分かりませんよね。
申し訳ない。
弟子の制度について説明させていただきますね」
ナタトによる説明が始まった。
と言っても大した制度ではなく、弟子と師匠にそれぞれ恩恵があるという話であった。
弟子側は師匠が関わる案件に師匠の許可があれば師匠の交わしている契約に付随する形で携わることができ、様々な取り交わしを省略することができるとともに過去の案件や、資格の必要な情報に関してもアクセスが可能となる。
その相手が魔法部の部長となるととんでもない量の情報を閲覧することが可能になるだろう。
そうなると確かに弟子となる恩恵は大きい。
また、師匠の方は弟子を取ると、学園から補助を貰えるのと、弟子の活躍に応じて実績となり、学外へのアピール材料となるようだ。
そして、どちら側も搾取できるような構造とはならないように、情報の閲覧には許可がいるのに対し、弟子側は師匠らしからぬ仕事を押し付けたりしていた場合に通報され、処罰を受ける制度が存在している。
また、弟子が不祥事を起こした場合に師匠にも責が及ぶ場合も存在する。
まあ、これらは保険としての制度であり、別段皆師弟関係がギスギスしているというわけではないようだ。
「あと、問題は、私は気にしなくていいって言ってるのに、皆気を使っちゃうのよね」
「そりゃ、与えられているものの価値を正しく理解している者でしたら誰でもそうなりますよ」
どうにもギャマナはほぼなんでも閲覧を許可して学ばせてしまっているようだ。
懐の深さもあるものの、ギャマナにとっては他の人が喉から手が出るほど欲しい情報であっても沢山ある情報のうちの一つでしかなく、ギャマナとの自身の差を感じそれが教示を受けることで縮まるのであればまだしも、広がっているような感覚を味わうこととなればなかなか続けることは難しいだろう。
また、完全に自身の利益ベースで考え、寄生してやろうと考えるような人はそもそも審査に弾かれるので弟子になることはない。
「だから、弟子、なりましょ、ウィリィンちゃん」
「・・・う、え、えーと・・・。
もう少し交流を深めてからで・・・」
確かにメリットの大きさは理解できたものの、流石に二の足を踏む。
相手は魔法部のトップであり、今しがたウィリィンをとんでもないハンデを背負った状態で勝った人物である。
流石にここで安易に弟子にしてくださいと言えるほど肝は座っていない。
「ええー、いいじゃないー。
減るものでもないんだからー」
ギャマナはウィリィンの慎重な態度に不満げなようだ。
「ギャマナ部長、無理強いは良くないですよ。
ひとまずはウィリィンさんが魔法部になれる期間を設けましょう」
「そうね。
一日ぐらいあればいいかしら?」
「そんな短い期間でどうにかなるわけないでしょう!?
それに、ウィリィンさんの予定を拝見すると、明日は生徒会に顔を出すことになっています。
そもそもこちらには来られませんよ。
それにお忘れかもしれませんが、まだウィリィンさんが学園に通い始めて数日しか経っていませんからね。
ということで、まずは、期末試験終了するまでは様子を見ましょう。」
「むー、分かったわ。
ただ、ウィリィンちゃんの方からお話があればその限りではないわよね?」
「・・・諦めが悪いですね。
それは構いませんが、必ず私を通させてもらいますからね。
まあ、書類の申請上、通さないことはできませんので、必ず確認させてもらいますよ」




