第528話変形の活用
「うぇ!?えーと。
折角変形するのだから、変形する行為自体に何か意味を持たせられたら良さそうかなと思います」
ウィリィンは素直に感じたことを述べる。
「そうか、変形をただの隙として捉えていたが、この時間というか動作自体も有効活用すればいいのかっ。
そうすれば1つの形しか持たない魔道具、武器との差別化も図れる...。
となると、変形時の動作について見直しが必要だなっ、特に様々な持ち方に対応しておかないといけないから...」
ボラトはウィリィンの意見から自身で話を飛躍させ、ブツブツと呟きながら、一心不乱にアイデアを書き起こし始める。
そして、そのまま素材を引っ張り出して加工を始めてしまった。
「あら、完全に自身の世界に入ってしまったわね。
この状態だと聞いてもまともな回答は返ってこないでしょうけど、幸いなことに作業している姿は見れそうね」
「私の方からわかる範囲で何をしているのか解説しましょう」
ナタトの方から作業内容について解説が入る。
まずは素材としてそれぞれの武器の形をした単体の武器を用意し、それらの結合を行っているようだ。
今使用している武器の形状から変形後までの動きについて考える必要があるため、それぞれの組み合わせがどのような動き、攻撃を行うのかを組み込んでいるようだ。
「ただ、これ、さっき以上に使うのが難しくなるわよ?
どのように変形するかも覚えておかないと自身がダメージを受ける結果になりかねないわ。
まあ、ただの待ち時間になるよりは断然良さそうだけれど」
変形自体に攻撃機構を設け、それを複数用意するということはそれらも覚える必要があり、先程以上に扱いが難しくなりそうだ。
「あー、完全にそのことは失念しているようですね。
対応力を上げるためにこれでもかというくらい、変形機構を組み込んでいますね」
ボラトは暴走状態にあるようで、思いつくままに盛り込んでしまっていて、最終的な完成形がどうなるかが見えていないようだ。
「ま、沢山作っておいて、その後から減らす分にはそれほど大変じゃないでしょ。
ただ、この使い方だと資金は確かに足りなさそうね。
次の試作品の出来が余程期待外れでもない限りは追加で出してあげなさい」
「かしこまりました」
もう既にこちらの話は一切耳に入っていないようであるが、ボラトの資金援助の試みは上手くお眼鏡に叶ったようだ。
「ウィリィンちゃん、ある程度見れたら引き上げましょうか」
「はい」
ウィリィンはナタトの解説を聞きながらボラトが魔導具を組み上げていく様を観察する。
荒っぽいように見えるが、しっかりと手順や構造を書き出し、確認を行ってから実際の作業に取り掛かっている。
魔導具の作成に関しては片方の手で魔力を込めて何かを作成したかと思えば、反対の手で計測、材料の混合等色々並行して行っているため、何をやっているのか目で追って内容を理解しようとするだけで手一杯である。
「凄いわね、触られても意に介した様子が無いわよ」
「ギャマナ部長、確かに凄いですが、真剣に頑張っている人に対して悪ふざけはよろしくないですよ」
ギャマナはボラトの頬をツンツンして何も反応がない様子を見て面白がっていたが、ナタトがそれをたしなめる。
ウィリィンは少しずつ魔導具が形作られる様を見ていたい気持ちもあったが、ある程度のところで切り上げ、ギャマナ達の方を見やる。
「もう大丈夫です、ありがとうございました」
「あら、もういいのね。
じゃ、戻りましょうか。
ウィリィンちゃん、戻ってらっしゃい」
ギャマナは自らの乗っている杖へとウィリィンを招き、ウィリィンも周りに気を配りながら乗っかった。
「では、戻りましょう」
ウィリィン達は元来た道を戻るが、その道中ギャマナ達がいることを聞きつけたのか、部員達が道を妨害しない範囲で自身の成果物のお披露目を行っていく。
よく見ると道がお披露目をしても問題ないように寄せられており、多くの人が披露できるように即席の対策がされている。
そして、表向きはウィリィンへの勧誘なのだろうが、どちらかというとギャマナやナタトの目にとまり、援助やアドバイス等を受けたいといった感じである。
「はいはい、皆、その調子で励みなさい」
ギャマナは良い感じにあしらいつつも激励の言葉を投げかけている。
「また、後日しっかりと拝見させていただきますので、失礼いたしますね」
ウィリィン達はそのまま部屋から立ち去った。
「さ、元に部屋まで戻るわよ。
ウィリィンちゃん、見学はどうだったかしら?」
「とても楽しめました。
各々、生き生きとした感じで目標に向かって仲間を募って試行錯誤しているところがとても印象的でした。
私もその一員として自身の目標に対して切磋琢磨できればと思いました。
是非入部させて頂きたいです」
ウィリィンはギャマナとナタトに対して入部の意思を伝える。
元々問題がなければ入るつもりであったが、今回の見学で自身の能力をより伸ばすことができることに対してある程度確信を持つことができた。




