第526話ロマンと実用性
「おう、全然それで問題ない。
今急に欲しいというよりはこの開発が続けられるようにまとまった金が欲しいって話だからな。
申請しておくぜ」
まあ、こういう形でギャマナに申請することが伝われば申請が見られずに却下されることは少なくなり、他のものよりは興味をもって確認してくれるだろう。
「はい、申請お待ちしていますね」
「んで、ウィリィンを引き連れてここに来た理由は・・・、勧誘か。
となると、俺が今何を作っているかとか、作っている様子なんかを見せればいいか?」
「そうね、話が速くて助かるわ」
ボラトはウィリィンが来ている理由を推測し、ギャマナ達に確認を行う。
「お、いいね。
ついでにお二方のお眼鏡に叶うかも確認できるとなればやらない手はないなっ」
ボラトは一段張り切って説明を開始した。
まあ、先ほど同様にここで話を通しておけば予算が降りやすくなるというのは大きな意義があるだろう。
ということでボラトによるプレゼンが開始される。
「まず、俺のチームが取り組んでいる魔道具だが、状況に応じて盾、剣、ハンマー、槍、弓、銃と収納用の状態の7つに変形させることができるようにすることを目的としている。
それによって実現したいことは主に3つで、
1つ目が状況に応じた素早い武器の持ち替え。
2つ目が持ち物の軽量化。
3つ目がロマンだ」
「・・・」
1つ目、2つ目までは理にかなっていたのに、急にパッションな内容が出てきてウィリィンのテンションが下がってしまう。
「あら、ボラト、途中まで良かったのに、最後でウィリィンちゃんの好感度が下がっちゃったわよ?
私としてはとても良いと思うのだけれどね?」
ギャマナはウィリィンの表情の変化を的確に読み取り、受けが悪かったことを伝える。
「おいっ、なんでだよ。
大事だろ、ロマンっ。
一つの武器を器用に使い分けながら戦ったらかっこいいだろっ」
「いや、最初2つ実用的な話をするので・・・。
それならそのまま実用性重視のままにしてほしかったです」
なんと言うかロマンまで求めてしまったせいで、コンセプトがぶれてしまっているような感じを受ける。
「いや、だから、実用性の中にロマンがある感じがいいんだって」
「まあ、実用性を追求するなら、7種も変形できるようにする必要はないわよねー。
私なら、実用性重視とするなら弓、ハンマー、槍辺りは種類から除外するわね」
ギャマナが実用性重視の際の構成について伝える。
まあ、ウィリィンも同じようなことを考えていた。
弓と銃の遠距離攻撃はどちらかで十分役割を果たせるだろうし、打撃をこなせるのはハンマーしかないが、盾や剣で出来ないことはない。
槍もまあ剣で十分似たような働きを期待できる。
それよりは変形が増えることで発生する、構造の複雑化の方がデメリットとして大きい。
ウィリィンが思いつく複雑及び変形することによるデメリットは3つある。
1つにまず壊れやすさである。
多様な変化を行える構造なので、その分デリケートな部分が多くなる。
そうなると少し壊れるだけですぐに使い物にならなくなる恐れがある。
そして2つ目であるが、変形が多様な分、操作ミスが起こりやすい。
現状7つである。
変形が何によって行われるのか定かではないが、戦闘という逼迫した状況下で正しい変形を選べるかというと厳しいだろう。
もう少し変更の数が少なければまだミスは減るかもしれないが、7つは相当使い込まないと間違える。
折角その場で武器を精製するより早くできるからやっているのに、これでは勿体ない。
そして最後に、それぞれのスペックについては1つ1つで魔道具化するよりも低くなるという点だろう。
変形に技術力及びスペックを裂いているのだ。
当然ながらその分を威力の強化や、その他サポート用に割り振った方が武器としての強さは上がる。
まあ、即席で作る武器よりは断然強いというメリットは存在するだろうが。
だが、この問題は1,2つ目の問題と相反する。
変形の強みを活かすのであれば多くの武器に変形できた方が個々のスペックの低さを補えるため、これは中々に難しい。
「ぐぬぬぬぬ」
「ま、コンセプトは面白いと思うわよ?
ちなみに、何か参考にしてるのかしら?」
「ああ、この万能工具ってやつだな。
36種類の工具を自在に出し入れできる。
かっこいいこれを武器に応用すれば更にかっこいいって考えたんだ」
そういうと、ボラトは今まで作った試作品を見せてくる。
最初の頃は更に武器数が多かったようだ。
モーニングスター、双剣、ヌンチャク、手裏剣、メリケンサック、針などもう思いつく限りの全ての武器が仕込まれているような感じになっている。
だが、この構造だと本当に壊れやすく、また、それぞれの武器の強さも即席で作成した場合と大差がなくなったうえに、切り替え操作が難しすぎ、まともに使いこなすことができずに没になったようだ。
逆に数を2つぐらいにまで減らしてみた場合もあるが、あまり食指が動かず、それであるなら変に変形機構を入れずに単体の魔道具を作った方が良いという結論に至ったとのこと。




