第520話執事服の事情
ウィリィンはふむふむと頷きながら話を聞く。
まあ、確かに実際の戦闘となると戦闘部に所属して、そちらで戦い続ければいい。
どちらかというと魔法部でやっていることは魔法の使い方の開拓であり、戦いによって研鑽された魔法というよりは全くの新しい技術を取り入れて、それが実用的であるかを判断する場という位置づけなのだろう。
また、魔法は華やかであったり、派手さがある。
ガチな戦い以外にも観客を楽しませることに重点を置いた魔法も需要があるようだ。
戦いながら使用する必要がある為、この部門に分類されているのだろう。
まあ、戦闘用に生み出した魔法が思った以上に実用的ではなく、見世物用になったみたいなオチもかなりありそうではある。
「2つ目に魔道具全般ね。
魔道具にすることで、自身の魔力に頼らない形で様々なことを実現させることを目指しているわね。
あと、ウィリィンちゃんの身内だと、ボラトがここの部門をメインに活動しているわ。
魔道具と一括りにはしているけど、様々な用途に使用できるから、各々活動方針が違ったりはするわね。
まあ、ウィリィンちゃんも腕輪に武器、それにポケットに入っている魔法が込められた玉と色々持っているようだから、分かるでしょうけど」
「は、はい」
ウィリィン的には腕輪と武器は隠しているつもりはなかったのでボラトの所属含めそれほど驚きはなかったが、癒しの炎を入れた魔道具に関しては一切見せたつもりが無かったので、少々びっくりした。
「ギャマナ部長、相手が隠している魔道具を詮索するのはマナー違反ですよ」
「あ、そうね。
ごめんなさいね」
「あ、いえ、大丈夫です」
ひとまず、2つ目の部門は魔道具を扱っているようだ。
魔道具もその機能によって千差万別であるため、まとまりがあるような、無いような感じであると推察できる。
「そして、最後3つ目だけれど、魔法の研究ね。
少し前の生贄部もこれに該当するわ」
ギャマナが虚空に向かって、何やら操作をすると、小窓サイズの扉が出現する。
扉が開くと、
「きゃきゃきゃ」
黒の無垢が顔を出した。
こっちに向かって手を振ると、中へと戻っていき、扉もそのまま消え去った。
ウィリィンは変に絡まれるのではないかと内心不安になっていたので、すぐ帰ってくれて安心した。
「あら、取り込み中だったみたいね。
ま、あんな感じで戦闘度外視の学術的な魔法の研究について行っているわ。
時間が恐ろしくかかったり、コストが凄まじかったり何かしらデメリットがあるけれど、それを差し置いて余りある効果の高さが魅力的ね。
それが完成する様を見るのが私の趣味だったりするわ」
「成果だけ横取りされているようで、あまり受けはよろしくないのですがね」
ナタトは苦言を述べる。
「あら、アドバイスもしているし、資金提供もしているのよ?
部長としての権威もあるのだから、これぐらいの役得は許されるべきじゃないかしら?」
「その通りではあるのですが、中々折り合いをつけるのは難しいものです」
「まあ、やり方が気に食わないのであればいつでも挑戦は受けると言っているつもりよ?
ナタト、貴方も別に前のように挑んできてもいいのよ?」
「いえいえ、あれほど完膚なきまでに負けてしまっては、再戦など、口を裂いても言えません。
まだまだ、ギャマナ部長の元で研鑽させていただければと」
「と言いながらも私がナタトが負けたら執事服を着て一日補佐をしなさいって言ったのを頑なに続けているのよ?」
「それ以降に関して、執事服で行ってはいけないとは言われませんでしたから」
「ほら、こんな感じなのよ?
しかも、放課後まではしっかりと制服を着て、わざわざ着替えているの。
ただ、こちらを立てているように見えて虎視眈々とこちらを狙ってきている感じ、ゾクゾクするでしょ?」
今も執事服を着ているのは完全に屁理屈だろう。
ギャマナへの嫌がらせというよりは負けた自身の対する戒めの為といった感じがする。
確かにナタトの目には闘志が宿っており、またいつか、実力がついたら再度ギャマナに挑みそうである。
「勿論、他の人が真似しないようには徹底していますから」
「当たり前よ。
執事服が増えたらたまったもんじゃないわ。
私が変な趣味な人だと思われるでしょう」
「でも、お好きなのでしょう?
執事服。
私に着せるぐらいですから」
「・・・それは認めるわ」
なんだかんだ仲が良さそうな部長と副部長である。
まあ、確かにこれ以上執事服の人が増えると、ギャマナが執事服を着させてはべらせているなど、良くないうわさが飛び交ってもおかしくない。
「家では執事服を着た本職の方がたくさんいるでしょうに、物好きですね。
ギャマナ部長」
「分かってないわね。
そういう仕える側じゃない人に着させるのがいいんじゃないの」
「・・・そうですか。
これは一本取られましたね」
ナタトはギャマナの趣味を追求することで恥ずかしがっているところを見ようとしたようであるが、残念ながら解釈が違った影響で開き直ってしまったため、逆にこちらが驚かされる結果になってしまった。




