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その二
ぼくは部室にひとり缶詰状態になり、部屋の電気を消した。
真っ暗闇のなか、シュラフに潜り込んで床に伏せた老人のように天井を見つめる。塹壕に飛びこんだ敗残兵のように、静かに息をひそめる。
これから自分が行うことをあたまのなかで想像すると、ひどく気分がおもたくなった。
数十分はたったと、思う。
夜の旧校舎に足跡が響いた。
床板に耳をつけているとわかる。その足音は、まっすぐに旧校舎五階を目指していた。階段をあがって一番手前の文芸部室前で、立ち止まる。その影は、硝子越しに部室内の気配をうかがっていた。
かちゃかちゃかちゃかちゃ、金具のこすれあうような音がする。
つづいてU字型の金具が上がり、鍵の開く音がした。
そいつは文芸部室の戸に手をかけると、まるで薄氷でも踏むかのように、静かに部室内へ足を踏み入れた。
そして、パソコンのモニターを掴み上げる。
「それは、アイドル研究会のパソコンなんだ。流石に勘弁してくれないかな、──永田」
ぼくは、たまらず彼女の名前を呼んだ。
「どう、して?」
永田は茫然とした表情で、ぼくを見つめた。




