4,初めての推理
思ったより長くなっちゃた。
あの後、児童養護施設を出てすぐに家に帰った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふぅ。ドっと疲れの波が押し寄せる。
今日は濃い一日だった。
まず、僕の推理を披露した。
推理、と言えるかどうかも怪しいけれど。
まぁ、その推理は見事的中。
南風さんとお話して、無事に合格させてもらえた。
にしても、めっちゃ緊張したー。
児童養護施設に行く前までは、疑念くらいだったから。
施設に行って、ある程度の確信に変わったけど100%では無かったし。
推理の半分くらいは「なんとなく」で済ませれる。
けれど不審点が多かったから、思い切ってカマをかけた。
もう心臓バクバクで破裂しそうだったー。
間違ってたら恥ずかしいし、合ってても何されるかわからないし。
正直、施設長室にいったときは殺されるかと思った。
でも、話してみると良い人。それに頭も良さそうだ。
僕が推理を披露し、当てたとき。
南風さんはそこまで驚いた様子ではなかった。
あくまで、見抜かれる可能性を十分に考慮したうえで練られた試験という感じだった。
まだ手の内を明かしていない感じがする。
それになぜ、僕の母のことを知っているのかも詳しく言っていなかったし。
確かに僕の母親は宮内という名字だ。
「宮内」はありがちな名字だから当てずっぽうで相当運が良かったといえば
少々無理はあるが、押し通せないこともない。
だが、母が作家をしていてその作家名が曙であることはどれだけ運が良くても不可能に
近いだろう。
まだまだ謎多き老人、南風さん。気になるなぁ。
とはいえ、一先ず合格して続けれそうだから良かった良かった。
でもまだ一つ違和感が残ってるんだよなぁ。
明日、確認するか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
よほど疲れていたのか、目が覚めると午前9時だった。
今日は特に何も予定がなかったはずだから良かったけど...。
顔を洗って、色々と準備をする。
手早く朝ごはんを食べて、歯磨きを済ませて課題に取り組む。
今日するのは...これするか。
うちの日本分学科の教授ちょっと変わっている。
生粋の本オタクなのだ。
だから稀に、読書感想文のような課題が出される。
題材なんの本にしようかな。んーっと...。
ここは名著、いや近年話題のやつ...個人的な好みでもいいな。
挙句30分も悩んで、伊坂幸太郎氏の「ラッシュライフ」にした。
五人の全く別の人間の視点から描かれていて、その所々にバラバラ死体。
一見別々に見える話でも後半になり全てがつながる。
先の読めない展開から弾き出される一つの結末は驚きそのもの!
伏線回収も素晴らしくて、お気に入り。
教授が出す読書感想文は、本当に本を読んだ感想を書けばいい。
だからミステリーなら、トリックとか伏線とか。
結構書いてて楽しいから、珍しい苦じゃない課題。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二時間ほどして書き上げた。
いつもだけど、指定された文字数を大幅に上回ってしまう。
この課題は、文字数はあくまで目安だから良かったけど。
今はちょうど正午。お昼ご飯どうしよう。
外食?そんなお金ないな。しょうがない自炊するか。
冷蔵庫の中にあった、トマトとスパゲッティ。
余っていたベーコンを使って、トマトスパゲッティを作る。
何度も作ったことがあるから手際よく進められ、
朝ごはん用に三人前程度作り、20分程で終わった。
お皿に盛り付けて、さぁ食べよう。
ピーンポーン
エントランスの方のチャイムがなった。
宅配かな。まぁいいや。ロック解除しとくか。
気を取り直して、さぁ食べよう。
ブブブ
部屋の方のチャイムが鳴った。
もう来たのかな。まぁ2階だからね。
「はーい」
ガチャ。
玄関の鍵を開けると、一方的にドアが開いた。
「やっほー。じゅっくん。久しぶり〜」
え?
目の前には、キツ先がいた。
「阿紫先輩?なんで?あれ、なんか予定入れてましたっけ」
「え〜。忘れたのー?昨日行ったじゃん。
明日の午後から、家行くねーって」
(確かに。そう言っていた。でも、午後って言って正午過ぎに来るか?)
「どうしたの〜?じゅっくん。焦ったような顔して〜。
もしかして何かいけない事してた〜?」
「違います。普通にご飯食べてました」
(さて、どうしよう。
確かに先輩は午後に来たわけだし、ここで追い返すのもマズい。やむを得ないか)
「わかりました。入ってください。
午後を勝手に1時位だと思っていた僕が悪いので」
「やった〜。お邪魔しまーす」
そう言うやいなや、キツ先は早々に靴を脱いでリビングへ向かっていった。
「うわ〜。いい匂いする〜」
「あんまり暴れないでくださいよ。課題するだけなんですから」
目をキラキラさせて、リビングを歩き回る。
「わ〜。きれいー。整理整頓意外とされてる〜」
グゥー
お腹がなる音とともに、キツ先の動きが止まる。
「お昼ご飯食べずに来たんですか?はぁ。ちょうど多く作ってたんで
一緒に食べましょう」
「うん...」
顔を真っ赤にしたキツ先が、歩いてくる。
急いでもう一つお皿に盛り付け、テーブルの上に置く。
カトラリーも用意して、椅子に座る。
「うわ〜。美味しそ。トマトパスタ〜?いいにおいする〜」
「ふふっ」
思わず笑いが溢れる。
昨日は1日中緊張してばっかりだったから気が緩んだのだろう。
「あ、飲み物。すいません。お茶しか用意してなくて...」
「飲み物まで付いてくるの?豪華なお昼ご飯だぁ」
「後輩として、頼んでくれればそれなりのことはするつもりです」
「ほんとに〜?じゃあ色々頼んじゃおっかな」
「常識の範囲内にしてください」
そんな軽口を叩きながら、昼食を取った。
「先輩、量多くなかったですか?」
「え?そんなことなかったと思うけど...」
「なら良かったです。もしかして無理させてるんじゃないかなーと思って。
先輩思ったよりいっぱい食べますね」
そう言うと、キツ先が明らかに怒った顔になる。
「別にいっぱい食べてもいいし。運動してるし。
確かにちょっと体重増えてるけど、スタイルいいって言われるし」
「え?なんの話...あ、あぁ」
(終わった。キツ先に遠回しに悪口言ったみたいになってる)
「全然悪口言ったつもりは無くてですね」
「じゃあ無意識に、『うわっ。こいつ自分が運動してるからって、いくらでも
食べていいと思ってるなー。これは太るなー』って思ってたってこと?」
「違います。あーっと...無理にダイエットするよりかは食べたほうがいいですしね」
「ふーん。『この人いっぱい食べてるから、ダイエット大変そ〜。
俺は元々太らないし、スタイルいいから楽勝だな〜』って思ってたってこと?」
(まずい。何言っても返される。恥ずかしいけど、正直に言うか)
「正直に言いますと...
自分の料理を他人に食べてもらったのが初めてだったので、
いっぱい食べてもらえて嬉しかったのと。
先輩ってめちゃくちゃスタイルよくて運動できるので、いっぱい食べても太らない
のって羨ましいな〜って」
「ふーん。本当にそれだけ?」
見透かされてる。
「本当の本当は...。いや、流石に言えません。恥ずかしすぎます」
「じゃあ、『じゅっくんが私のことをデブって言った』って広めるからね?」
(くそっ。やむを得ないか)
「言います言います。
本当は、美味しそうにいっぱい食べてて可愛かったなーって」
キツ先の動きがまた止まる。
(流石にグループの先輩に向かって『可愛い』はマズかったか。
しかも陰キャの分際で...。これは死んだかも)
「っ...。じゅっくんそれはズルいよぉ。『可愛い』、かぁ。
特別に今回のことはお咎めなしで許してあげる」
(危ない危ない。なぜかお許しをもらえたみたいだ。話題を変えねば)
「そういえば、阿紫先輩って試験受けなかったんですよね?」
「試験?なんのこと?大学の試験なら受けたよ?」
「あぁ、いえ。あの孤児...児童養護施設の試験です」
「あそこの試験?あそこに試験なんかあったの?やばっ、私裏口入学してたかも」
「いえ。受けていないなら特に問題はないそうです。
怪しい人だけ受ける試験、みたいな...」
「怪しい人...じゅっくんは受けたの?」
「えぇ。受けました」
「そうか。やっぱそうだよね。
じゅっくんさ、いっつも顰めっ面だから怖く見えちゃうんだよ〜?
実は優しいし、かっこいいのにぃ。で、ちゃんと受け答えできた?」
「なんとかですよ。
あと顰めっ面は生まれつきです。それに、かっこよくも優しくもありませんしね」
「自信なさすぎ。ダンサーならもっとガツガツいかなきゃ〜」
「じゃあ、実は僕裏でモテてるって友達に聞きましたよ。
こっそりファンクラブもどきがあって、会員は20人を超えるとか...」
「ほんとに!?まぁ、不自然ではないか...。
でも、家にまで呼んでもらえてるから私が一番だよね」
「先輩?なに小さい声でボソボソ言ってるんですか?
貶すのはやめてください。僕だって、こんな嘘ありえないと思ってますから」
「嘘?嘘なの?」
「何言ってるんですか。嘘に決まってるじゃないですか」
「良かったぁ」
「すいませんね。典型的陰キャの僕がこんなあからさまな嘘ついちゃって。
ところで、 施設長さんからいいお話を聞いたんです」
「へぇ〜。そんなありがたいお話聞いたの?」
「はい。施設長さんのご家族の話です。
施設長さんは優しい方で、物腰柔らかくて、笑顔が素敵で。
家族が乗っていた車が交通事故にあってしまい...。
お子さんと、パートナーを亡くしてしまったそうです」
「可哀想に...」
「はい。でも今では元気そうでしたよ。
優しそうに微笑んで、丁寧な方でした」
「奥さんと子どもを亡くして、立ち直れるってすごいね。
私だったらそんな大切な人なくしたら一年は泣いてるかも」
「僕も当分は立ち直れないでしょうね。
もしかしたら後追いしちゃうかもしれないです」
「じゅっくんて意外と愛重いんだね」
「まぁ、物凄く大切な人だったら全然しちゃえますよ。
一人で生き残ってしまうのも辛いですし」
「なるほど。メモメモ...」
多少の雑談を交わし、食器を片付ける。
「そういえばなんで先輩って来たんでしたっけ」
「じゅっくんが、『課題教えてください阿紫先輩。お願いします』
って言ってきたんだよ〜。ついでに私もフリ教えてもらおーって」
「そうでしたっけ。なら先に課題教えていただいてもいいですか?」
「もちろん。えっと、どこでやる?」
「あー..あそこのリビングにある机でもいいですか?」
「いいよ〜」
「じゃあテキスト探してくるので、ちょっと待っててくださいね」
「もちろん。じっくり時間かけて探してね。
ゆっくりでいいからね。焦らずにね。細かいところまでね」
「変なことしたら追い出しますよ」
とは言ったものの、正直どこにテキスト置いたか忘れちゃった。
まぁまぁ時間かかりそうだな。
机の上...にはないか。中は...そもそも何も入れないもんなぁ。
バッグの中かなー。でもなさそう。
じゃあどこだろう。本棚にはないだろう、ミステリ本ばっかだし。
うーん。あっちの部屋かな。
そう思い、自室のドアを開ける。
ガチャ
「わっ。びっくりしたぁ」
リビングにあるソファに勝手にキツ先が寝転んでいた。
「なに人のソファで寝転んでるんですか。
疲れてるなら、言ってくれればマットレスくらい出せますよ」
客人用として一つマットレスを買ってある。
母親からの助言だが本当に役立つとは。
「ほんとに?普段使ってるやつ?」
「安心してください。使ってない新品ですから」
使用済みのマットレスなんか渡したら、僕が捕まりかねない。
「じゃあいいや。ゆっくりでいいからねー」
急がなきゃ。
寝室には...流石にないか。もう一回自室行くか...。
ガチャ
もう一回バッグの中ちゃんと探そ。
あ、あった。
自室を出た。
「あ、もう終わったの?早いね。
にしてもこのソファ最高だね。離れられないなぁ」
キツ先がさも当然のように僕のソファに寝転んでいた。
「何してるんですか」
「え?セルフ妄想膝枕だよ。
じゅっくんのいい匂いがするソファで寝転がったら、実質膝枕じゃね?と思って」
「変なこと言ってないで、テキスト持ってきたので教えてください。
ここの古文の読解なんですけど、歴史の事象と結びつけなくちゃいけなくて...」
「なるほどね。確かにじゅっくん歴史苦手だもんね」
「はい。なので、教えていただきたく...」
「ここはねー。ここの部分で大体の年代がわかるでしょー?」
「880~900年まで、ですか?」
「そうそう!流石だね。じゃあ何時代かわかる?」
「平安時代、ですかね」
「そう!じゃあ平安時代ってどんな時代?」
「うーんと...争いが多い時代」
「そう!だからここの場面は争いで活躍するための教えを受けているところ、
っていうのがわかるよね」
「おぉ!なるほど!」
「ちなみにこの菅家文草は900年に菅原道真公が自分の生い立ちみたいなものを
まとめた漢詩文集だから合ってると思うよ。
ほら、ここの文章に...ちょっと前失礼」
そう言って、僕の顔の前あたりの通り過ぎる。
(うわっ。髪サラサラ。なんかいい匂いする)
「ここの文章に、道真公の幼名、「阿呼」ってあるでしょ?」
(キツ先って感覚バグってるけど、頭は意外といいんだよなぁ)
「なるほど。ありがとうございます」
「これだけで良かったっけ」
「あ、あと一個だけあって...」
そこから30分ほど先輩に勉強を教えてもらった。
「ふぅ。ありがとうございます、先輩」
「全然!後輩を助けるのは先輩の役目だからね。
でも勉強教え料として...」
(何円くらいかな。結構面白くてタメになったから千円くらいは払えるな)
「私が今日着て来ている服。
これがいい感じか教えてほしいなー」
「え?」
拍子抜けした。
(服が似合っているかどうかを教えてほしい。それだけでいいのかな。
似合っているかどうか、か。めっちゃ似合ってるなぁ)
「かなりいい感じですよ。
白を貴重としてるから先輩の優しそうな雰囲気にピッタリですし、
丈の長いスカートも、上品さが増していて綺麗です。
オレンジっぽい髪飾りも、髪型と合っていますし夏感が増してて素敵です」
とりあえず率直な感想を述べた。
「要するに似合ってるってことでいいのかな?」
顔が真っ赤になったキツ先が、小さな声で聞く。
「はい。めちゃくちゃ似合ってますよ。
この服なら、神楽先輩とのデートもうまくいくと思いますよ」
「え?神楽?」
突然キツ先が素っ頓狂な声を上げる。
「はい。神楽先輩とデートに行くときの服じゃないんですか?」
「なんで私とあいつがデートなの?」
「え?だって阿紫先輩ついこの前神楽先輩と付き合ったって...」
「違うよ。ぜんぜん違う」
「そうなんですか?」
「そうだよー。誰から聞いたの?」
「神楽先輩からです。
『俺、阿紫に「神楽...良いよね」って言われたからさ。
実質告られちゃったんだよね。阿紫、まあまあ可愛いし?
そこそこスタイルいいし?デカいから付き合ってあげてもいいかなー。
まぁ、所詮の幼馴染は指咥えて見てれば?』って」
「で、じゅっくんはどう思ったの?」
「え?別に『やっぱ阿紫さんにも好きな人いたんだー』って」
「それだけ?」
「はい。強いて言えば、神楽先輩はちょっと意外でしたけどね。
先輩ならもっと頭いい系の人かと思ってました。
でも神楽先輩もかっこいいですし、他人の恋愛観に口を出す権利なんてありませんしね」
「もー。結論から言うと、それは全くの嘘。というか勘違い。
私は友達と、友達の彼氏作りも兼ねて親睦会みたいなやつをやろうって言われてたの。
そこで、『神楽は別に入れなくてもいいよね』って言ったんだけど...」
「最初と最後だけを聞かれてしまっていた、と」
「そういうこと。だから別に私は神楽と付き合ってない。
そもそも今後一生付き合うことはないと思うよ。私のタイプじゃない」
「そうなんですか。照れ隠しとかじゃなく?」
「ぜんぜん違う。
まず神楽は常識がなくて空気読めない。
頭も大して良くないし、自信過剰で優しくない。
身長も160後半くらいでスタイルも普通。
それに、当然のようにデカい事を付き合う条件に入れてるのもキモい」
(流れるように出てくる悪口の数々に、神楽先輩をいたたまれない気持ちになった。
ちょっと勘違いして、ちょっと自意識過剰だからって...)
「そ、そういえば親睦会は成功したんですか?」
「うーん。あんまし合わなかったみたいで。
それにいいと思った人も断られちゃって。結局誰とも付き合わずに終わってたよー」
「先輩はどうだったんですか?」
「へ?」
「先輩はいい人いましたか?」
「いい人ってどういう...」
「親睦会のメンバーで良い人です。いませんでしたか?」
「あぁ。じゅっくんあのね、親睦会はあくまで友達の彼氏作りだから。
私はなんにもしてなかったよ。ちょっと友達が気になった人とお話できるように
私が話しかけたりしたくらいかなー」
(友達が断られた原因、それではないだろうか。
キツ先ほどの人が話しかければ、誰でも自信過剰になってしまうだろう)
「そうなんですか。すいません、また勘違いしちゃって」
「いいよー。ところでさ、私の理想の人ってどんな人だと思う?」
「先輩の理想...そうですね。
ベタですけど悠叶みたいな感じじゃないですかね。
あの、僕と一緒によくいるイケメンです」
「白神くん、だっけ」
「はい。そうです。あいつめちゃくちゃハイスペックですからね。
あ、でも悠叶自体はダメですよ?狙っちゃ。あいつハイスペ彼女いるんで」
「あの子かぁ。確かにイケメンだけどねぇ。
私の好きなタイプのイケメンじゃないかな」
(イケメンにもタイプがあるんだ。初めて知った。
まぁイケメンじゃない僕は知らなくて当然か)
「正解、何ですか?」
「正解?うーんと...秘密」
「え?」
「秘密だよ。
本の中で難解な事件をたくさん解いたじゅっくんに教えてあげよう。
『わからない』を享受せよ」
「わからない、が正解...。
『どちらかが彼女を殺した』、『藪の中』みたいな感じですね」
「もー。またミステリー。ミステリオタクなんだからー」
「あ、つい。ところで、課題終わりましたしどうします?
「あ、そうそう。教えてほしいフリがあって...」
「あぁ!そうでした。えっとどっちにします?」
「大会の方で!イベントの方はそこそこイケてるから」
(僕達ダンスチームの収入源は、個人の受講代?というか、
週に一回個人で自由にお金を出す。
それで大会への出場料とか、移動費に使っている。
ちなみにスタジオは善意で貸してくれてるから、月に12万円位で済む。
高いと思うかもしれないが、相場は20万円は超える。随分リーズナブルだ。
あとは、大会での賞金とか企業の協賛金とかだ)
「大会ですね。えっとどの部分ですか?」
「ここの部分でー。ヒットが難しいのと、音に遅れちゃって...」
「確かにここめちゃくちゃ速いですもんね。僕も苦戦します」
「そうなの。最近体が重くて」
「大丈夫ですか?病気とかなら無理はせずに休んでくださいね」
「うん。そっちじゃなくて物理的にねー」
「あ」
(またやってしまった。次こそ死ぬ。
でも多分増えているのはお腹とかではなく...)
「全然そんなことないですけどね。
それに僕から曲をちょっとゆっくりしてもらうように頼みましょうか?」
「いやいや、いいよ。私の力量不足だから!」
「本当に無理はしないでくださいね。大切なメンバーなんですから」
「ありがと。じゅっくんも無理は禁物だよ〜」
「お気遣い感謝します」
また雑談をしながら、ダンスの練習をした。
「ふぅ。今何時だろ...」
「今はね...5時!」
「そんなに時間経ってたんですか。外が明るいので時間感覚なくなっちゃいますね」
「そうだね〜。あ、そうだ。もう一個だけお願い聞いてもらってもいい?」
ラッシュライフ、ぜひよんでみてください。




