表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

お前はずっと俺のペットだろ?

 この世の中は男女という性別の他に、第二次性が存在する。

 第二次性はアルファ、ベータ、オメガの三種類に分かれている。

 人口の大半はベータで、アルファは総人口の数パーセントしか存在せず、生まれた瞬間から神に選ばれた存在とされていた。

 それは、アルファがあらゆる能力に長けるものが多いからだ。

 それ故に、世の中の重要なポストである政治家や企業の重役などは、アルファが大半を占めていた。

 だが、そんな選ばれた存在であるアルファを『ラット化』という激しい発情状態にし、時には凶暴化させてしまうのがオメガだ。

 オメガは男性であっても妊娠でき、アルファを発情させるフェロモンは、月に一度訪れる発情期のみに放たれる。

 その時アルファに首元を噛まれると、番と言われる契約が成立される。

 番は死ぬまで解消されず、番をもったアルファはラット化を起こさなくなり、オメガのフェロモンも番にのみ有効となる。

 そして、番であるオメガの首元をアルファはまた噛むことで、オメガを自由に発情させることができた。

 オメガの発情を抑えるには、発情を迎えて性欲を発散させることで沈静化させるか、発情期抑制剤を服用することが必要だった。

 しかし、発情期抑制剤の処方には第二次性がオメガであることを、国に申請しなければならなかった。

 つまり、申請するということは、自分はオメガだと公にするということでもあった。

 そのため、オメガだと隠して生活していくのは、この国では不可能に近かった。

 オメガは、優秀なアルファを誑かす劣等種であるという風潮。

 そして、発情期中は働くことができないため、社会のお荷物扱いされ、まともに働くことさえ許されない存在だった。

 この世界は劣等種であるオメガと、選ばれた種であるアルファでは、生きる世界が初めから違うのだ。



『何言ってんだよ。お前はずっと俺のペットだろ?』

 ラブホテルのベットの上で、うつ伏せ状態のまま気を失っていた俺は、将人(まさと)が枕元に腰かけた微かな揺れで目が覚めた。

 眼鏡を外していたため、ぼやけた俺の視界に映る将人は、腰にバスタオル巻いた姿で、濡れた髪をタオルで拭いていた。

「まさと……。もう、行くのか……?」

「当たり前だろ。俺は忙しいんだ。それなのに俺を待たせやがって」

「ごめん……。今日はちょっと……」

 いつものように、メッセージで送られてきた待ち合わせ場所と時間には、会社から普通に向かえば間に合うはずだった。

 だが、地下鉄ホームのベンチに座って電車を待っていると、電車到着のアナウンスが流れても、俺は立ち上がることができなかった。

(行きたくない……)

 そんな考えは許されるはずもないと分かっているのに、立ち上がろうとすると東谷の顔が思い出され、俺の心を塞いだ。

 しかし、将人から催促メッセージが何度も届き始めたため、俺は重い足取りで待ち合わせ場所に向かったものの、初めて遅刻をしてしまった。

(ああ……。だから、今日はいつも以上に乱暴だったのか……)

 記憶は途切れ途切れだったが、苛立つ将人に手酷く抱かれながら、それでもはしたなく、自分から何度も求めたことは覚えている。

(ほんと、こういう日は……。自分が本能で生きてる下等生物であるって認識させられる……)

 静かに息を吐き出した俺は、顔や腹回りにベタつきが残っていることに不快感を覚える。

 だが、今日はいつも以上に発情の反動が酷く、上体を起こすことさえできなかった。

(俺もシャワー浴びたいな……。こんな時、東谷ならきっと……ってサイテーだな俺……)

 東谷なら、こんなズタボロの俺を見たら、優しく濡れタオルで身体を拭いてくれるだろう。

 そんな想像した俺は、自己嫌悪に陥りながら、濡れた髪をタオルで拭く将人の背中をそっと見つめた。

(……? あれは……)

 眼鏡をしていないため視界がぼやけていたが、将人の背中に赤い爪痕がいくつも残されていることに気がついた。

(今日はバックでしかしてなかった……よな。ってことは、俺がつけた痕じゃないってことか……)

 将人は自分の背中へ残された傷に気が付いていない様子で、ベットに腰かけながらワイシャツを羽織った。︎

(アルファは発情セックスに溺れるっていうけど……俺以外に相手がいるなら、俺なんていらないだろ。なんでいつまでも、俺に執着するんだよ)

 呆れと同時にこみ上げてくる虚しさをグッと抑え込むように、横顔を埋めていた枕を指先で静かに握った。

(分かってる。俺は将人を利用して、今もこうやって生きているんだ。俺にはとやかくいう資格なんてない。そして、これからも……)

 月に一度だけ発情した俺を抱く玉木将人(たまき まさと)は、高校時代に初めて出会った父方のいとこだった。

 そして、俺の首元に痕をつけた、俺の番だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ