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光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される  作者: 汐
終章.執着と言う名のあいの形
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幕間3.正午に鐘の下で待ち合わせ

7.夕日に照らされたお話 のアナトーレ視点です

今日はミィスに言われて所定の場所に向かうように言われたのでそこへ向かいます。

服装まで指定され、普段着ないスカートをプレゼントされてしまったのでそれも着用済み。


道中、エリューから端末宛に『いよいよ 今日!』とだけ連絡が入っていましたが、セレネルが漸く求婚(プロポーズ)するのでしょう。

遅すぎませんか。姫が竜人化してもう1ヵ月、発表まで2か月ありませんけれど。

彼のことだからミィスのことを考えすぎてそうなったのでしょうけれど。


きっと今日の夜は盛大なお祝いになるでしょうね。

と、この時までは余裕で待ち合わせ場所へ向かっていたのです。



が。



その場所にミィスの姿はありませんでした。

ミィスが遅れることはありませんから、トラブルかもしれません。

慌てて端末を開いたものの、連絡がありません。

「アナトーレ」

不意に、背後から声を掛けられますが、聞き覚えのない声です。


警戒とともに振り返ると、そこには見知らぬ男性が立っていました。


「…!?」

いえ、この見覚えのある白髪と狼の特徴は。

「し、師匠!?」

目線が私より上で、その上いつもと違ってかなり整った格好をしていらっしゃる。

もしかしてもしかしなくともこれはミィスが謀ったんですね!?


「ど、どうして、えっと」

聞きたいことが多くて考えがまとまりません。

どうしてここに師匠が?

どうして背が…というか大人の男性に!?



12歳のお姿も好きでしたが、この姿は格好よすぎます。



「ミィスから何も聞いてねえなこれ。」

「は、はい!」

「ああ、それどころじゃねえのか。仕方ねえ」

ふわりと何か魔法を使ったようで、おそらくミィスの様子をのぞき見したのがわかります。


「あいつは今日忙しいみたいだから俺から説明するぞ」

という師匠曰く、今日はミィスの計らいで2人で出かけることになっていたらしいのです。

墓守の役割はミィスが解放してくれたのとことで、それで特区にいらっしゃるのですね。



ミィスに感謝です。

あの場所も素敵ですが、そこ以外で会えるなんて。



「…その、なんだ。今日は綺麗だな」

照れたように目を逸らして褒めるだなんてずるいです。

「あ、ありがとうございます。師匠も素敵です。」

「その、師匠っていうのもうやめてくれ。」

呼べと言ったのは師匠だったような。


首を傾げれば、ぐっと眉に力を入れた顔をしています。

「俺様が悪かった。そんな風に呼ばせるつもりはなかった。」

とりあえず、とおしゃれなカフェに連れられました。


こんな場所知ってたんですね、29区から出ないのに。


「………」

「あ、あの…」

入るなり黙りこくってしまう師匠におずおずと声を掛けます。


「ああ、悪い、どう説明したものかと。いやいいか、もう。」

何か吹っ切れたようにいつもの笑顔を浮かべると、やっとこちらをしっかり向いてくれました。


その笑顔に幼い姿の面影は残るものの、澄んだ白い瞳が美しく、今までと違う姿にどきどきが収まりません。


「"番"は知っているか?」

唐突な問いかけに思わず「つがい?」と聞き返してしまいました。

「ああ、やっぱり知らねえか、ええと」

「あ、いえすみません。わかります。その、知識としては。」

竜と一部の獣人(セリアントロピー)にある"運命の相手"ですよね。

と聞けば概ねそうだと頷かれた。


「その一部の獣人(セリアントロピー)に、狼が含まれる。」

「はあ、そうなんですね」

チーターである私にはピンとこないけれど、どうしてもこの人と思える人だと聞いたことがあります。

といっても既におとぎ話と化していると思うのですが。



「俺様の番は、お前だ。アナトーレ」



たっぷり10秒ほど師匠の言葉を反芻し、漸く理解しました。

「…は、はい!?」

口からは貴族の令嬢らしからぬ声が出てしまい、慌てて閉じます。



「だから、俺様のことを受け入れてほしい」

すっと差し出された小さな箱に、指環が納められていた。


「こ、これ…!!」

求婚の、アクセサリだ。

もうなくなってだいぶ経つので知らなかったけれど、アルケー家の花紋はカサブランカらしい。


「よく考えて返事をしてほしい」

即答しようとしていた私を制するように、言葉を続けられます。


「俺様はアルケー家で当時は上級貴族だったが、現代には存在しない。お前のことを死ぬまで愛すると断言できるが、お前の家に見合う存在ではないかもしれねえ」

私が跡継ぎだと知っての配慮だったらしいけれど、どう考えても貴方の方がすごい人です。



さらっと"死ぬまで愛する"だなんて言われて、家柄なんて気にするほうが馬鹿らしいのに。



思わずふふ、と笑いが漏れる。

「天下のアンブローズ・アルケーともあろう方らしくない台詞です。」

「俺様だって好いた相手にはこうもなる」

畳みかけるように真剣な眼差しのままそんなことを、好きな相手に言われて表情を保てる人なんているでしょうか。




「わ、私も…!ししょ…アンブローズ様のことが好きです。前に進ませてくださった貴方のこと、好きです」

「お前の気持ちは有り難いが…家の人間と話あってから正式に返事をくれ。」

確かにグリゴロス家は歴史もあるし少し古い考えが遺るので、お相手には必ず貴族をと思っているでしょうが。




「今日は、このまま俺様とデートしてくれねえか」

なんてはにかんで手を差し出されたので、思わずその手に飛びついてしまいました。

「あと様はやめてくれ、アナトーレ」

「で、ではアンブローズ…さん」

「まあいいかとりあえず。」


エスコートされるがままデートを楽しみました。

夢のような時間で、時折彼が見せるかわいらしい部分にも、男らしい部分にも。

すべてに惹かれているのがよくわかりました。


私は紛れもなく彼のことが好きで、一生添い遂げたいのです。

そして彼がその相手に私を選んでくれたことも、嬉しくて仕方がありません。



であれば、です。

「アンブローズさん、このまま私の家に来てくれませんか。今日両親は早番なので」

「…それは俺に死ねといっているのか」

どうやら人並みに緊張もするらしいこの方は、一度は断ろうとしたようだけれど。


「いや、行こう。先に延ばしても仕方ねえ。」

となぜか戦地に向かうようなお顔立ちをされたのでした。

「祖母は厳しい方ですけど、両親は割合のほほんとしていますから大丈夫ですよ」

人好きする笑顔なので。

私と違って。




端末で事前に『紹介したい人がいる』と告げ、我が家にアンブローズさんをご案内。

「ああ、懐かしいな、お前の祖先とは知り合いだった」

1000年前の面影がどこかあるらしく、門を嬉しそうに撫でている。


「祖先ていうかもう祖ですよねそれ!」

驚いて声を上げればからからと笑われる。

「ああ、まあそうか。あいつが最初のグリゴロスか。」

スケールが違うんですよね、気づいてください。




「お父様、お母様。こちらアンブローズ・アルケー様です。

()()(・・)、アンブローズ様です」

と紹介すれば仰天したようで、お父様は普段閉じられている(ように見える糸目なのですが)をカッと開いています。

お母様はいつも穏やかな笑みを湛える口元をぽかんと開いていらっしゃる。


「アナトーレ殿のご両親、突然の来訪失礼いたします。本日は、大切なご息女に求婚させていただきたく馳せ参じました」

いつもの口調どこいきました!?

びっくりするほどきちんとできるじゃないですか!!


いえ上級貴族の方ですけれど、これは素敵すぎませんか!!


お母様なんて顔を赤くしていらっしゃるじゃないですか。

整った顔立ちの多いと言われる獣人の中でも、アンブローズさんはかなり整ったお顔立ちだと思います。

仕方ないことでしょう。



「アナトーレちゃん、え、ど、どうしましょう!!」

「…」

お父様一言も発していませんけれど、起きてますよね?



「私は彼と添い遂げたいと思い連れて参りました。許可をいただけませんか」

「彼女は(わたくし)の"番"なのです。一生愛すると誓います」

爽やかな、見たことのない貴族風スマイルに思わず私まで見惚れてしまうけれど、いまはそれどころではありません。


「ですから、お母様。あれをお渡ししてもいいでしょうか」

もうお父様は無視です。

これで本当に副隊長なのでしょうか。


お母様はさすが隊長らしく、もういつも通りです。

「ええ、貴女がそう決めたのなら、(わたくし)たちはいいと思いますよ。」

にこりと微笑み、侍女にあれを持ってきてもらいます。



あまりのあっさりした許可に、少しアンブローズさんが面喰っているのがわかります。

ですが、のほほんとしていると言いましたよね、私。



「お嬢様、こちらです」

「ありがとう。では、アンブローズ様、こちらをお渡しします。私を選んでくださってありがとうございます。末永くよろしくお願いいたします」

笑顔でお渡ししたのはグリゴロス家に伝わるお返事の証。

亡くなると次の跡継ぎへ譲渡し続けて約1000年です。

今お母様がお持ちのものと合せて5つ遺っています。



「これ、もしかしたらアンブローズ様が御作りになったものではないですか?」

石の部分が触れた相手の魔力の色に染まるこれはミィスのあのリボンと同じです。


「ああ、確かに。大事にとってやがったのか」

ふ、と小さく呟くとその指環を嬉しそうに光に翳した。



「ではお父様、お母様。今日はこれで。大切な用がありますので」

未だ放心するお父様をお母様にお任せし、私たちは家を後にしたのでした。



「…驚いた。まさか今日返事をもらえると思ってなかった」

「私も驚きました。アンブローズさんあんな風にできるんですね」

どちらともなく手を繋ぎ、ミィスの家までのんびり歩いていくことにします。



ミィスのお陰でこの恋が成就したのですから、盛大にお祝いしてあげなくてはいけませんよね。

私たちの妹みたいな存在なのですから。








―――後日。

「と、いうことです」

色々と頑張ってくれたミィスに詳細を伝えようと時間を取ってもらいました。


「うまく行って本当によかったよ。ところでグリゴロス家としてはアンブローズの爵位ってちゃんとあったほうがいいんだよね?」

「まあ…それはそうですが」

少し濁してしまったのは、ご存命のおばあ様が少し難色を示されていると聞いた所為です。


おばあ様、彼はグリゴロス家より上位の貴族ですよ…!


「アンブローズがあのアンブローズっていちいち説明するのも面倒だもんね、よしじゃあこうしよう」

ぱちり、とミィスが両手を合わせる。

「シュトリヤに相談だ」

「そッれはだめなのでは…!?」

さすがに職権乱用だと思います。


「だいじょーぶだいじょーぶ、任せて!」

軽い口調でにっこり微笑むミィスを私は止められませんでした。

申し訳ありません、姫…!





更に後日、アルケー家の復活を耳にし、くらりとしたのでした。

シュトリヤ姫には「とても助けていただいたのだからお礼がしたかったのよ、丁度いいわ」

なんて言われてしまいましたが。










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