表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される  作者: 汐
終章.執着と言う名のあいの形
93/94

幕間4.ロマンチックは作るもの

8.戴冠式のお話 の前日、セレネル視点です

戴冠式前日、俺は進行の最終確認という名目でシュトリヤに呼び出されていた。

今更確認も何もないので、別の用があるということはわかっているが。



嫌な予感しかしないな。



「貴方明日、()()()()()で求婚なさいな」

「…正気か」

思わず出た言葉を聞き嬉しそうに笑う姿が正直憎い。


「嫌なのだが」

正式な、というと貴族がたまに行う婚約式でやる見世物のようなあれだ。

互いに瞳を褒めちぎり愛を誓う詩を詠み合う。

相当のアピール好きしかやらない。



何が楽しくて大人数に見られながら詩を詠まないといけないんだ。

ふざけるな、魔物でも呼びこんで暴れてやろうか。

思わず式を中止させる手筈を考えていた。

危ない、しかし本当に嫌だ。



「うふふ、もうその時間もとっているから無理よ」

「…お前の時間まるままそれか」

予定ではシュトリヤとテミスラの婚約式となっていた部分まるままこっちに投げたな。


思わず睨みつけたものの、さらりと笑顔で躱された。

本当に腹の立つ。


「だってまだ縁の薄いわたくしたちのことより貴方たちのほうが民は見たいと思っているわよ。わたくしは次の王として民が望むことをしてあげたいだけよ」

その含み笑いを止めろ。

大方王妃殿下や陛下の希望だろうが。


「お前の希望も含まれる、か?」

せめてシュトリヤの願いであればまだいいものを。


「…わたくしはどっちでもよかったのよ。お母様がどうしても見たいっておっしゃるから。

それくらい叶えて差し上げたいじゃない」

やっと含み笑いを止めてまともな顔になったな。



お前の望みでもあるならば、仕方があるまい。

なによりミィスが叶えたいと言うだろうから、あいつの手が届かない分は俺が叶えてやろう。



「明日のミィスの衣装、少し口をだしていいか?」

「え、やってくれるの?流石に断られると思ったわ。一応言っておくと、わたくしはミィスの返事だけでいいって言ったのよ?折角だから見たいっておっしゃったのはお母様だから」

「ああ、わかっている。だが幼馴染の頼みでもある、断れないな。」

それに交換条件だ。悪い条件でもないし、詩の内容によっては意趣返しにもなるだろう。



「衣装はいいけれど…今からできることなんてあんまりないわよ?」

シュトリヤは少し嬉しそうに笑うと、マリアに命じて衣装をもってこさせる。


「ああ、わかっている。」

届けられたその衣装は、シュトリヤが作ったものだろう。

たっぷりと布をつかったスカートだが、左右にスリットが深めに入っており、万一のことがあっても動けるようになっている。



もちろん、明日は万一もないよう準備はしてある。

アンブローズと竜たちに頼んであるからな。


そうでもしないと学園の卒業式の時のように魔物が特区に入り込むアクシデントくらいは起こりそうだ。

ミィスだからな。


ということはシュトリヤの趣味だな。

こいつ本当にミィスの脚が好きだな。


胸元の刺繍は宝石が縫いとめられており、白一色の無垢なデザインに、華美さと荘厳さを与えている。

さすがシュトリヤと言える、美しいドレスだった。

「文句はないでしょう?きっと似合うわ」

誇らしげに微笑んでいるが、こいつがこのドレスの直しに相当な時間をかけていたことを知っている。



マリアと近衛騎士に、ご自分の衣装にも手を掛けてほしいと愚痴られたからな。



「ああ、そうだろうな。これを、あわせてほしい」

もともと提案するつもりではあったのだが、交換条件となれば通りやすいだろう。

「えっなにこれ気持ち悪いわ」

見た途端に虫けらを見るような目をするのを止めろ。

俺じゃない。


「スカンからの贈り物だ」

スカンも勿論鬼人代表として(長は貴族扱いだ)式典には参列する。

そのための準備に追われ、事前に挨拶に行けない代わりにと託されたものだった。


俺もどうかとは思ったが。

「あいつなりの祝いなのだと思い受け取ることにした」

ミィスと俺とシュトリヤの瞳の色の石をあしらった、ブレスレットのようにも見えるこれは

金属製のガーターベルトだった。


「いやよこんな、ほぼ下着じゃない。気持ち悪いわ。」

その気持ちはわかる。

俺もさすがに受け取りを拒否しかけた。



「スカンからの伝言だ。『見えぬ部分でならば、3人の絆を示してもよいだろう』だそうだ」

善意しかないこの台詞に俺は絆された。

そうでなくとも最近の鬼人(デモニアトロピー)たちへの牽制と、エリューへの稽古など、ミィスへの間接的な献身は計り知れない。


「くっ…スカンのくせに!!」

こういう純粋な好意には弱いんだよな、俺もシュトリヤも。


無事にシュトリヤも絆されたので、それを託して俺は退出することにする。

下心はそれなりにあるので、スカンには普通に感謝もしたい。

歩く際に少しでも見えればとても美しいだろう。


「では、俺は帰って詩を考える必要がある。また明日」

「ええ、頼んだわ。とびっきりロマンチックなのをお願いね。ミィスがうっとりしちゃうような」

仕方がないのでその発注に応えよう。




俺はいいがミィスが困るだろうな、と案じつつ。

実に2か月振りに会えることに思わず胸が高鳴った。



見てろよ、2か月も会わせなかったんだ。

少々の仕返しくらいは覚悟しておけ。



俺は仕返しを硬く決意し、猛然と辞書を検索した。

あいつ、俺の芸術系の成績があまり振るわなかったこと忘れてないよな?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ