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光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される  作者: 汐
終章.執着と言う名のあいの形
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1.アンブローズとの約束のお話

最終章です。残り少しお付き合いください。

シュトリヤの竜人化という大きな目標を成し遂げたわたしは、

次なる目標へと闘志を燃やしていた。


アンブローズのことだ。

わたしは彼を可及的速やかに墓守から解放して、アナトーレとうまくいってほしいのだ。

両想いなんだから。

今日はアナトーレは仕事で一緒にいけないので、この話をするチャンスだろう。


さっそくエリューと作ったお弁当を持ってピクニック気分だ。

エリューはミヤビとのデート楽しんできてほしい。




「アンブローズ!ちょっとそこ座って!」

テーブルにサンドイッチやおかず類を広げ、座らせる。

苦笑しつつなんだかんだでわたしの言う通りにしてくれるこの人は、多分みんなが思っているよりずっとずっと懐が広い。


「エリューと作ったの。食べながら聞いて」

わたしは彼の後ろに回り、長い髪をそっと櫛で梳く。

綺麗な髪なのにほったらかしで勿体ないと思ってたんだよね!!

整えたらもっとかっこよくなると思うのよね!!


「アンブローズ、わたしからのお願いはただひとつ。幸せになってほしいってことだけなの」

「…ああ、お前の気持ちは毎日受け取っているが…現実問題ここ29区を放置したくないのもある。」

29区を美しく整えて護ってきてくれたのはアンブローズだし、きっとアンブローズにしかできないことではある。


けれど、それではいつまでたってもこの折角綻びかけた魔法は解けてはくれない。

実はアンブローズは会った時より背が少し伸びた。

それが今は再び止まってしまっているのだ。

せっかく自覚した"(つがい)"なのに、このままではアンブローズは自分の気持ちに蓋をしてそれを見送ってしまう。


「わたしが…わたしたちが貴方の足枷になるなんていやだよ。」

きっとご先祖様たちも嫌だ。

彼の幸せは、1000年分のわたしたちの願いであるはずなのだ。


「だからわたしたちでも管理できるように、一緒に魔法を作ってほしいの。

わたし…はあんまり役に立てないかもしれないけど…アンブローズがいなくってもいいように。

29区をこれからはわたしたちの手で護らせて」

ずっと考えてみたけれど、これしか思いつかなかった。



「…お前も俺様に頼るんだな」

へにゃ、と情けなく笑うアンブローズを思わずぎゅっと抱きしめた。

「わたしではどうしようもなかったの。ごめんね。」

アーラみたいに格好良く解決策だけもってきてあげたかったけれど、魔法についてはお手上げだ。

相談したセレネルにもさすがにどうしようもないと言われてしまったのだ。

それだけアンブローズの魔法は偉大なのだけど。



「ちがう、嬉しいんだ。頼られたのは…お前たちに頼られたのはこれが二度目だ。」

それならば、と今度はいつものように勝気な笑顔を向けてくれる。


「俺様は全力でやってやろう。…ありがとうミィス。お前には救われてばかりだ」

「何言ってるの、アンブローズ。わたしたちこそあなたに感謝してもしきれないんだよ」


笑顔を返し、姿見の前に移動する。

綺麗に結った髪に、ミヤビと選んだ今風の服を着せれば(魔法で一瞬で着替えてくれるので着せ替えが楽だ)すっかりアナトーレと並んでも遜色ない姿の出来上がりだ。

「…で、だ。これはなんだ?」

されるがままだったけれど、ようやく不思議に思ってくれたらしい。


「今度のアナトーレのお休みの日にその恰好でデートして。」

「ふは、提案ですらねえな」

笑いながらも嫌そうではないので安心した。

「半分命令です。そしてその日までにこの件を片付ける」

決定事項です。


「…お前はそういうところアーラとは似てねえな」

「え?」

「人を動かす力…とでもいうか?それはお前のほうがあるなってことだ。強引だが不思議と嫌じゃねえな。」

やるか、と何故か嬉しそうに笑うと、猛然と机に向かって何か書き始めた。



こうなるとわたしに出来ることはなさそうなので、邪魔にならないようお墓に向かう。

相変わらず美しく保たれたお墓ひとつひとつを眺めていく。

知らない名前もたくさんある。

ここに、いつかわたしの名前も並ぶのだろうけれど、それをもうアンブローズにはさせたりしない。



気付けば日が傾きかけていたようで、人の気配に顔を上げる。

「アンブローズ」

やり切った顔をしているのできっと案はまとまったのだと思う。

わたしに出来ることはあるかな。


「…この29区全て、は無理だろうから、範囲を決めて結界の魔法を掛けることにした」

「うん」

その魔法は、かなり大がかりというか過保護だった。

かつての竜が暴れるレベルの災いがもたらされたとしても、この地だけは護るほどの強い結界らしい。

ただし、入れるのはわたしの許可がある者とアンブローズだけになるそうだ。

許可も手を繋いで一緒に入ること、と限定された条件だ。

範囲を狭く限定的にすることで強度をもたせることができるらしい。


そこは譲れないポイントらしいのでアンブローズの満足のいくようにしてほしい。

あくまでアンブローズの希望をわたしたちが叶えたいのだから。


けれどそのせいで広大な29区全体には齎せないらしい。

「そんなことが出来るのは神くらいだな」

とのことなので2区にあるわたしの家とこのアンブローズの家、

お墓、そしてアーラが一番美しいと言った海岸。

これらのみに絞ることにしたようだ。



「それでもお前の魔力を使うことが前提だ。維持にはほぼ魔力はかからねえ計算だが、初回は竜人化の魔法より魔力を使うと思え」

「任せてよ、なんでもするよ」

わたしの魔力なんかが役に立つならむしろ嬉しい。

むきっと腕を膨らませると、くしゃりと頭を撫でられた。


「細けえ制御は俺様がやる。以降の維持は、お前の足の裏に仕込む陣から自動で魔力を吸うようにする」

一度書いたら、次の勇者にも引き継がれるようになるらしい。

これならば何もしなくても勝手にここを維持してくれるから安心だ。

転移陣にもなっているらしく、ここへの切符がわりになるそうだ。



「ええと、じゃあわたしがすることって」

「前と同じだな。魔力を増やせ。」

「わかった、セレネルに相談する。次のアナトーレのお休みは6日後だから、それまでは内緒にしててね!」









帰宅すると家に丁度セレネルがきていた。

今日のことを説明すれば、快く引き受けてくれることになり、

首に付きっぱなしだった魔具(イディ)にセレネルが魔力を込めてくれる。

今は種がないので、リボンだけ。


今日はこれで、とわたしの頬に口付けて去って行った。

「…!?…!?!?」

頬を抑えて口をぱくぱくするわたしがあとに残されたけれど、もはやだれも何も言ってくれない。


ミヤビはちらりとこちらを見ただけだし、スカンさんは家事の手を止めすらしない。


ねえ、これなに!?

あ、挨拶…!?

「ミィス、それは挨拶じゃないよ。現実逃避はやめたほうが楽になれるよ」

というエリューの追い討ちに、今度こそわたしの思考は完全停止した。




挨拶じゃない場合の頬へのキスの理由を誰か教えてください。






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