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光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される  作者: 汐
三章.大魔導士の魔法と初恋
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幕間7.セレネルとシュトリヤの秘密の関係

シュトリヤ視点、幕間6の続きです。

王宮騎士第一隊の鍛錬場。


ここに仁王立ちする(立つ)わたくしもドレスではなく騎士服を着ているわ。

ミィスが見たら喜んでくれそうだけれど、これはこの場だけの内緒ってやつよ。

マリアが、『いつか必要になると思っておりました』だなんてこれを用意していてくれたのよね。

しかもわたくし用に色が違うもの。

臙脂色だなんて素敵ね。これこのままどこかの隊に採用したいくらいよ。



「来たわね」

「…さすがの俺も説明を求める」

ミィスの家から遅れて戻ってきたセレネルに、戦闘準備を整えて来るように伝えて10分ほど。

セレネルって呼んだらすぐ来るんだけど仕事熱心すぎないかしら。

呼びつけておいて何だけど。


「まずここを貴方とわたくしの二人きり…がさすがにまずいのはわかっているからマリアと近衛騎士を残して封鎖して」

という言葉に、結界まで張ってくれる。

理由も言っていないのにいいのかしら。

近衛騎士にマリアをきっちり守るように、壁ぎりぎりまで下がるように伝える。



「では、貴方に決闘を申し込むわ。ミィスを賭けて」

と作法通り持ってきた白い手袋をぶん投げてやる。

ゴウっと音を立てて飛んで行ったそれを顔に当たる前にぱし、と掴むセレネル。

こういうところが腹立たしいのよね、おとなしくぶつけられなさいよ。


「…そうか、わかった」

と頷くこの男の思考回路どうなっているのよ。

なんでいつもいつも何もいわずにわかっちゃうのよ、こういうところよ!!

ほんっとう…何かひとつくらい譲りなさいよね。


いつも不思議でならないけれど、どうやらこの男は今までの情報でわたくしがしたいことを理解してくれたらしい。

「わたくしのこの格好をみればわかるわね、本気よ。一応言っておくけれど」

「作法に則った申出を受けて冗談だとは思わない。」

と真剣な顔で、双剣を抜く。

わたくしの手にも既に愛用の銃がある。


どちらかが負けを認めるまで続く、正式な決闘。

わたくしがやることになるとは自分でも思っていなかったけれど、これが一番だわ。

だって、わかりやすいもの。


セレネルにも、わたくしにも。


「さて、いくわよ」

わたくしは、本気。

すかさず魔力を込めた弾を大量に撃ち出す。

際限なく、隙間もなく、容赦もない。


それを、セレネルは表情も変えずにほんの少しの剣の動きで切る。

耳はピンと立っているし、ぴょこぴょこと忙しなく動いているから、すごく神経は使っているのだろうけど。

如何せん表情が変わらないから余裕に見えるのよね。


その銃の軌道に乗り、セレネルに接近する。

わたくしは近接戦も苦手ではない。

弾を撃ち続けていた片方の銃をそのまま剣のように振る。

反対の銃は連射を止めない。


「--砕けぬ鉄の帳 降りて護りとなれ

<シデーロス・アヴレア>」

冷静に魔法を展開され、直接攻撃は防がれてしまう。

ならばわたくしも魔法を使わせてもらう。


「--廻れ ギュゲースの指環

<インビジブル・リング>」

発動と同時にわたくしの姿は消えた筈。


なのに、確実にこちらを()()いる。

どうなっているのよ。

けれどもう止まれない。

音を立てずに駆け、銃身を再び振る。



側頭部を狙い、あと少し!

と思ったのに、それを容易く掴まれ、体制を崩されて。



視界がぐるりと回り、背中に軽い衝撃。

わたくしは地面に倒れて、セレネルの剣が胸元を指していた。


「…はあ、どうして勝てないのかしら。本気を出したのに」

思わずつぶやき、魔法を解く。


「しかもセレネルは本気を出していないのに…ほんっとうにむかつくわ、馬鹿セレネル」

床にわたくしを倒すとき、多分背中に手を回して衝撃を抑えるところまでしたのよ。

体がちょっとも痛くないわ!なんの気遣いよ!


「俺の勝ちでいいのか?」

「ええ、わたくしの負けよ」

作法通りにセレネルと握手を交わし、決闘は終了した。




「セレネル、一度しか言わないからよく聞きなさい。わたくしが何を言うかわかっていても聞きなさい」

仁王立ちでなるべく偉そうに立つ。

こうでもしないとやってられないんだもの!

セレネルは真面目な顔で頷いている。



「わたくしの気持ちはセレネルに託すわ」

わたくしちゃんと、笑えてる?

笑顔で言うって決めていたのよ。

だって泣いたりしたら、セレネルに更に気を遣わせてしまうじゃない。


「だから、お願い。ミィスをどうか、幸せにして。」

セレネルを見ているはずなのに、どんな表情をしているのかわからない。


「たったひとり、わたくしが認めるのはセレネルだけだから。他の男になんて絶対渡さないで」

ぽたり、と地面に水滴が落ちた。



5歩ほど離れたところにいた筈のセレネルが、目の前まで来ている。

少し上にあるはずの顔をみても、表情がわからない。

そっと、きれいなハンカチを目元に押し当ててくれる。


「俺は何も見ていない。」

と律儀に前置きをしたうえで、そっとそのハンカチをわたくしの手に握らせる。


「お前の想いは受け取った。必ず、俺がミィスを護り、幸せにする。お前に誓う」

すっと跪き、わたくしの手を取る。

甲の上にわたくしの握っていたはんかちを滑らせ、そこに口づけた。


ほんとうに律儀で真面目な男ね。

騎士の誓いですら直接口付けないなんて。

わたくしとミィスのどちらへの義理立てよ。


どっちもかしら。



「ふふ、馬鹿ね。あなたのそういうところ、好きよ。」

「そうか。」

立ち上がってわたくしを見下ろすセレネルの瞳は穏やかだ。


「気分がいいわ。ひとつだけいいことを教えてあげる」

きっと当人たちは気づいていない、わたくしだけが知っている秘密。



「ミィスはね、あなたの笑顔と似ているからスカンの笑顔に弱いのよ」

ミィスがあんな顔だけの男(確かに強いけれどミィスは別に強い男が好きなわけではないわ)のどこに弱いのかと思えば、簡単なことだったよね。

その上わたくしくらい押しが強いみたいで、どうも逆らいづらいみたい。

それに気づいてからは余計ミィスのことを可愛く思うようになったけれど。


「結局あの子はわたくしとセレネルのことが大好きなのよ。」

と胸を張って伝えてやれば、苦笑を返される。

わたくしこの男のこういう笑顔、嫌いじゃないのよね。

『しょうがないなこの馬鹿』と言わんばかりの笑顔なのだけど。



「いい情報に感謝する。俺からもひとついいか」

「あら、何よ」



「俺はお前のことも大切な幼馴染だと思っている。だから、お前も幸せになれる相手でないと、俺とミィスが許さない」

きっとこの男は、お母様と話した内容がわかっているのだろう。

わたくしの義務のこと。近いうちに婚約者を見繕わなければならないこと。


「…ミィスもそう言ってくれるかしら」

セレネルはそうかもしれないけれど、ミィスもそこまで思ってくれているかしら。

つい弱気にもなってしまう。

だってミィスは誰にだって優しいもの。



「らしくないな。今日はもう眠れ。明日の昼頃まで待て」

そう穏やかにほほ笑む顔は、確かにミィスに向けるものとは違うけれど。



「わたくしって貴方にも大切にされていたのね」

思わずふわりと笑顔になれた。


「俺のことを何だと思っている。」

「あら、腹立たしい幼馴染、かしら」


「ふっ、俺はお前のそういうところが愛らしいと常々思っているぞ」

「ばッ…!馬鹿ね本当!!もう行くわ!!おやすみなさい!!」

満面の笑みで、そういうこと言わないでほしいわ!!

どすどすと鍛錬場の出口へ向かい、近衛騎士とマリアを連れて外へ出る。



「おやすみ、シュトリヤ」

背後から聞こえた挨拶に、わたくしは振り返って笑顔で応えた。






「姫様、決闘などという方法でよかったのですか?」

「いいのよ。わたくしのけじめみたいなものだもの、解り易い方がよかったのよ。

まあそれはそうとして八つ当たりはするわ。明日ってあの子よね、近衛騎士」

「ええ、あの方ですね。」

少々憐れんだ表情のマリアに笑いかけ、わたくしは眠りについた。


明日は新人の近衛騎士に少し八つ当たりをして、ミィスを待とう。

セレネルが連れてきてくれるっていうから、大人しく待つわ。



きっと明日も泣いてしまうけれど。

わたくしの一世一代の告白だもの。

失恋は決まっているけれど、もう少しだけ。


ミィスに伝えるまでこの気持ちはまだわたくしのもの。

さよならは、また明日。












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