表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される  作者: 汐
三章.大魔導士の魔法と初恋
48/94

2.方舟を作るお話

まずエリューが樹を倒す。

「えいっ」

とかわいい掛け声で軽く蹴りを入れただけで5本ほど倒れた。

さすが鬼人(デモニアトロピー)すごい。

「いっくよー!」

という合図で、こちらにそのうちの1本をぽーんと投げてくる。



その木をすぱぱぱん!と聖剣で板状にするのはわたしの担当。

「うわあ、それって天文学的価値のある貴重な剣なんよね?」

ちょっと呆れた声を出すミヤビ。


「え、これ何でも切れるし切れ味が落ちないし…お肉とかもこれで切ってるけど…」

わたしたちが聖剣と呼ぶこの剣は、アーラが使ってからずっと勇者の剣として代々受け継がれている。

勿論売ることはないけど、売ると国より高いって陛下が笑いながら言ってた気がする。

けどわたしとしては、なぜか錆びない・刃こぼれしない・何でも切れるの三拍子で非常に便利な剣、という感覚。


「呪われへん…?」

「大丈夫でしょ、どうせどの勇者もこんな感じだって」

それは確信が持てる。なぜならわたしたちの家系は大らかつまり大雑把だから!



同じ作業を隣でやっていたスカンとセレネルの方でもあっという間に木材が生成されてゆく。

(実はわたしが贈ったセレネルの剣も、この聖剣ほどじゃないけど強いので)

木材がある程度できたので、あとは乗り物の形にするだけだ。


「うちの国には木材だけで接合する技術があるんよ。言う通りに切ってくれへん?」

と言われた通り切込みを入れる。

そのあたりの計算はミヤビとセレネルが行っていたので、わたしは何も考えず加工していくだけだ。

エリューとスカンはわたしが切る前の木材の表面を滑らかにするために岩場で簡単にやすっている。

力が強いからかめちゃくちゃ滑らかになってる。やすりじゃなくて岩のざらざらなのに…


意外な一面を見つけてしまった気がするけれど、そういえば鬼人って手先が器用で何か作るのが上手い人多いんだった。

エリューは料理上手だしね。

脳筋なのに不思議だなと思っていたけれど、主のために色々得意になっていくのかもしれない。

(現状その()がわたしなのが悩みでもあるけれど)



やがて完成した乗り物は、きちんと座席がある馬車…車輪はないので舟かもしれない。

要らないのに屋根もつけちゃったし、

車輪の代わりに足をかわいい猫足にして、立つようにもした。

興が乗ってしまったんだよね。

最後に座席にクッション類を敷けばすっかり快適な乗り物の出来上がりだ。


「う、わあ…思ってたより立派なものが出来てしまった…」

「こういうのも楽しいものだな」

「かわいい!ボク色も塗りたい!」

「ああ、ええなあ。塗料用意させるからちょっと待ち。」

と端末をミヤビがいじっている。

多分蔵の管理をしている人に注文を出すんだろうなあ。

ミヤビが「これ拙ももろてるだけやしええで」

って言ってくれているから遠慮なく使わせてもらっているけど、こないだわけた白い魔宝玉でお礼になるかなあ。



まず試運転を兼ねて、上空からキャンプ地になりそうな場所を探す。

「う、わあ!すごいすごい!!」

「すごいねー!!みんなで飛んでるよ!!」

「異国の男、あのあたりがいい。湖があり海から適度に距離がある」

夜になると海岸から結構な数の魔物が上がってくるんだって。

さすがスカンさん。頼りになる。


「その異国の男言うんそろそろやめてくれへんかなあ…」

「ふむ…ではミヤビ。湖岸からも少し離れろ」

「はいはい」

と安定した飛行(フライト)で、危なげもなくそっと地上へ降りた。

いつのまに練習までしたんだろう、ミヤビ様様だ。


「はい。こんな感じやけどどうかな?」

「すごかった!これがあればどこにでも行けちゃうねえ。魔力はどう?」

完全にミヤビの魔力に依存してしまうのが申し訳ないけれど、これならすんなり29区まで行けそうだ。

「うーん、海を越えるとか言われへん限りは問題ないで。」

「さすがにそんなこと言わないよ!」

「ふふ、どうやろねえ」



ということで、エリューは馬車への着色をしてもらうことにし、残りの全員でキャンプの準備だ。


しかしご飯の準備をしょうとすれば

「ミィスにさせるわけにはいかぬ」

とスカンさんが横から手を出すし(手際がめちゃくちゃいい)

じゃあ追加の薪でも拾おうかと思えば

「ミィスは休んでいろ」

と座らされる。


「…」

不満を訴えようと無言で見つめていれば、

「ミィス、エリューと共に着色をしてくればどうか?」

と手持無沙汰なのだと思われたようだ。

違う、そうじゃない。


ぶすっと頬を膨らませながらエリューのところへ行く。

「あー、また無理だった?」

からからと笑うエリュー。

「うん…」

すっかり肩を落とし、筆を手にとる。

「あはは、あの人すっかりミィスの下僕だよねえ」

「しかも圧が強くて全然勝てない。セレネルとかシュトリヤと似た物を感じる」


この数日、スカンさんは我が家に通い詰めありとあらゆる世話を焼き続けている。

手際が良すぎて勝てないのと、どこかセレネルとシュトリヤに似ているところがあってなんとなく逆らえない。

どこかと言われるとまだわからないんだけど。


「もう少ししたら落ち着くんじゃない?本人も言ってたでしょ。」

エリューはどうやら全体を青色にするようで、それに倣う。

「そうだといいんだけど…」

「ミィスはなんでも自分でやろうとしすぎなんだよ。頼ってくれたらみんな喜ぶよ?」

折角なので細かい模様も描いていく。


「わたし勇者だもん…」

理想の勇者(アーラ)は1人でなんでもできた人だから、わたしもできる限り頑張りたいの。

もちろんまだ無理で、みんなにはかなり頼ってると思うんだけどな。


「ボクはアーラのこと詳しくないけど、でもあの人にだって仲間がいたんだよね?」

「うん!すごい仲間たちが居たんだって。」

テミスラさんのお陰で本をいつでも読めるようになったので、時間をみつけては読み進めている。

実際見えている本の厚さと合わないようで、アーラのページが膨大だ。

終わりが見えない。


彼女には、当時の各種族の長たちが力を貸したらしい。

後の王になる人間(アントロピー)の男性はその時残っていたすべての人間の集団をまとめていた。

頭脳明晰で作戦の指示はこの人が主だったようだ。その後の治世を任せるくらい信頼もしていたようだ。

鳥人(オルニストロピー)の長だった男性は空を駆け回り戦況の把握に努めた。弓の名手でもあり幾度も仲間を救ったらしい。


鬼人(デモニアトロピー)の長だった女性はアーラと共に魔物を倒してまわった女傑らしい。指一本で地を割るほどの人だったようで、そんな人が主と決めたのがアーラだったようだ。

それはきっと強さだけが理由ではなかったのだろうと今のスカンさんを見ていれば思う。

勝つことも条件だが、それだけではなさそうだ。

わたしにはその選考条件のようなものはわからないのだけど。


そして獣人(セリアントロピー)の長だった大魔導士。僅か12歳にして誰よりも膨大な魔力を有し、今も残る数々の魔法を生み出した。

戦いの時はアーラに頼まれて人々の命を守ることに尽力したようだ。


と軽くエリューに教えていく。

この話はわたしも大好きで、何度も何度も読んでしまった。

(だから進まないとも言う)


「今は獣人にも鳥人にも長はいないんだよね?」

「うん、アーラが決めた王様に従うって決めたんだって。」

長としての機能は全て王に譲渡したと書いてあった。


「でも鬼人はそれを拒否したの?」

「拒否ではないよ。あの頃ってまだ平和とは言えなかったから、ある程度独立した集団になって魔物退治をやってくれてたんだって」

今内区に強い魔物がいないのは、当時のアーラや鬼人たちが徹底的に狩ってくれたかららしい。

「だからアーラのすぐ傍で戦いたかったんだと思うの」

「その時の喜びが、ずぅっと忘れられないんだねえボクたちは」

やれやれ、と笑うエリューも少し嬉しそうなので、きっとこの話は好きなんだろうな。



「今度もっと詳しく教えてあげるね。さて、これで完成かな」

「うん。かわいくなったね!」

青い車体にわたしとエリューで書いた細かい花と蔦の模様が可愛らしい。

やりすぎた。


「あ、そうだ。だからね、ミィス」

「うん?」

「ボクにはまだわからないけど、スカンはその感覚が欲しいんだと思うよ」

「頼るっていうやつ?」


「そ。ボクたちは主に頼られることが最上の歓びってね。

今は平和で、戦力はそんなにいらないからこその献身(アレ)なんじゃないかなってボクは思うよ。」

さ、ごはんごはん!

とわたしの手をひくエリューの背中を眺めながら、もっとわたしからお願いすべきなんだろうかと悶々と考えてしまった。



けれどあれを甘受していたら絶対ダメ人間になると思うなあ、わたし。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ