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1.旅のはじまりのお話

ここから2章です。

以降、ミィス視点です。

「…ミヤビたち遅いな」

今日はわたしの家で4区へ情報収集に行った2人からの報告を聞く日だった。

既にセレネルとアナトーレは来ている。


「何かに巻き込まれたのでしょうか?2人なら大丈夫かと思ったのですが」

「うん、そうなんだよね。よりにもよってあのペアで行かせてなにかあるようには…あ。」

思い浮かべた可能性のひとつにうっかり声を漏らす。

表情をすぐに繕うが、セレネルとアナトーレには無意味だ。

2人ともものすごくこっちを見ている。

バレてしまう。少なくとも何か隠していることはバレた。


「お前なにか知ってるな?」

セレネルの言葉に思わず俯いてしまう。

こんなの知ってると言っているようなものだ。


だいたい本物の貴族相手に腹芸なんてこのわたしができるわけがないんだけど!

「うっ…エリューが言わないでっていってたから言いたくないんだけど…けど、もし()()なら結構やばいし…」

エリューとの約束と、事象(こと)の大きさで悩む。

本当にわたしが考えていることが原因なら、すぐに助けに行くべきだと思う。

とはいえエリューとの約束を破りたくないのだ。

わたしを信頼してわたしだけに打ち明けてくれたのだから。



ふ、と視界が翳り、誰かの足が見える。

いやこの場合誰かではなくこんなことをするのは1人だけれど。

「話せ」


顎をくい、と上げ口が触れてしまいそうな位置で囁かれる。

細めた目と漏れ出る吐息に色気が満載で、くらくらする。

「話さないならこのまま口付けて舌を入れる」

どっどっどっどっと耳の奥から響くような自分の心音に邪魔されて思考が鈍る。


何を言っているのだこのイケメンは。

いやセレネルは格好つけだが軟派ではない、むしろ女性に触れるなんて極力しない。

相手がわたしでも。

それが!なにこれ!!

気付いたらわたしの両手も封じられているし、勇者として不覚すぎる。


…と0.5秒くらいで考えたあと、あっこれ新手の脅しだな。と遅れて気付き、一応逃げようと試みる。

座っていた椅子ごと下がろうと足に力をいれ、アナトーレに助けを求める視線を投げる。

が、椅子はびくともしない(セレネルが押さえてた。いつの間に。)し、アナトーレはあからさまに視線を逸らした。(ひどい)


「なんだ、してほしいのか?」

と死刑宣告を受けたので、秒で白旗を上げた。

「ごめんなさい話すから離してしんでしまう顔がちかい」

離れる間際、耳元で小さく「残念だ」と呟かれたけどこれアナトーレにも聞こえたよね!?なんなの!?

昨日からセレネルがおかしい、本当になんか色々な原因で死んでしまいそうだ。



激しい動揺で荒れた呼吸を整えるために数回深呼吸。

頭を切り替えよう。話すなら手短に、だ。

「エリューは、副長(ふくおさ)に勝たずに逃げてきたの」

「掟を破ったのですか!?鬼人(デモニアトロピー)の!?」

アナトーレの驚愕は尤もだ。

鬼人は掟に厳しい。だから、掟を破る者はそれこそ地の果てまで追いかけてくる執念を持つ。




続きを話そうとしたとき、玄関のドアがばん!と激しく開かれる。

「ミィス!!助けて!!ミヤビが…!!ボクのせいでッ…!!」

そこには大きな若葉色の瞳からぽろぽろと涙を流すエリューが居て。

全身の怪我から無理してここまで来たであろうことがわかる。

「アナトーレ、お水用意してあげて。エリュー、まずは涙を拭こうか。貴女を泣かせた人を、わたしは許さない」

頭にカッと血が上ったのがわかる。

が、少しだけ成長したわたしはその場で走り出さない。

セレネルが成長したな、みたいな目で見てくるのがちょっぴり腹立たしい。


とりあえずそっとエリューの涙をハンカチで押さえる。

「水です、飲んでください」

アナトーレから差し出された水を素直に口に含むエリューの背を軽くぽんぽん、と撫でる。

「落ち着いて」

「うん、ありがとう…ミヤビが攫われたの。ボクを呼び出すために。ボクの問題だし一人で行こうと思ったんだけど、でもやめた。

ねえ、頼ってもいい…?ミィス」

「もちろんだよエリュー。今度こそ、自由を勝ち取ろう、ね?」

乱れた髪をそっと整え、怪我を治すように促す。


「服も着替えよう。エリューを呼び出すためならミヤビは無事だよ。まずはエリューのことが心配だ」

と、お風呂に送り込む。

簡単にエリューの事情は話しておくから、と。






ブックマーク等ありがとうございます。

とてもうれしいです。

2章もお付き合いいただけると嬉しいです。

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