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幕間4.シュトリヤの物騒なお茶会

シュトリヤ視点です

今日はわたくしのミィスが着るドレスを選ぶお茶会を開くわ。

お父様とお母様にデザインは一任していただけたの。

だからミィスの希望を聞くなんていう名目のただのお茶会よ。

名目がないとミィス1人呼び出せないんだから本当面倒だわ。

「ミィス!いらっしゃい!」

「シュトリヤ、久しぶり。元気だった?」

そうね、もう一週間も会っていなかったわ。

ドレスのデザインを考えていたからずっとミィスのこと考えていたのよね。

あっという間の一週間だったわね。

でも生のミィスはやっぱり違うわ。

「ねえミィス、"光の勇者"の称号を正式に与える式典を開くって言ったでしょう?」

「うん、聞いた。本当にやるの?」

「ええ、もちろん。でね、その時にミィスには正装をしてもらおうと思うの」

「正装?騎士服?」

きょと、と首を傾げるミィスがかわいいわ。

本当食べちゃいたい。

「いいえ、ドレスよ」

「え?!ドレス?!なんで?!」

わたくしのお母様に叩き込まれたミィスのマナーは実はとても美しい。

少し離れたところに居る侍女や護衛たちには美しい所作でお茶を嗜んでいるようにしか見えないだろう。

けれど今はかちゃん、と音をたてた茶器が随分目立つ。

「あわわごめんなさい、けどドレスなんて…卒業式のやつしかないよわたし」

「大丈夫、お父様とお母様からのプレゼントよ」

「えっ!?無理無理!!陛下たちからなんて余計もらえないよ!!」


「あら、駄目よミィス。わたくしと陛下を泣かせないでちょうだい」

「!!お久しぶりです!!」

突然登場したお父様とお母様に、びしっと背筋を伸ばしあわてて膝を折るミィス。

慌てすぎて騎士の礼と淑女の礼が合わさっているわね、これはこれで素敵だけど。

わたくしだけと聞いていたから普段着だし、驚かせてしまったかしら。

わたくしの両親も本当にミィスのことが好きね。

ミィスの両親のことが好きだったのかもしれないけれど。

「ミィスや、其方の両親からだと思って受け取ってくれぬか?」

お父様はしょんぼりと眉を下げ、お母様はお父様の肩に手を置き目元をハンカチで押さえている。

ええ、これは嘘泣きだわ。

ミィスには言わないけれど。

「わわわわたし何かがいただけるようなものでは…!」

「くすん、ミィス、そんなこと言わないでちょうだい。わたくしと陛下は貴女のことを娘のように想っているのですよ」

「お二人にそう思っていただけるなんて大変光栄です…その、謹んでお受けいたします…」

はい、ミィスの負けね。

多分ミィスも嘘泣きって気が付いているけど、2人の泣き落としには本当弱いわね。

「ではシュトリヤ、あなたの腕に期待していますよ」

ぱっと笑顔でわたくしに発破をかけるお母様。

わかっていたけどもう少し泣いた雰囲気を出していただけないかしら。

ミィスがどんな顔を作ればいいのかわからないって顔をしているじゃない。

「ええ、任せてくださいませ、お母様。必ずや最高の出来にいたしますわ」

嵐のように去っていった2人を見送り、こちらを恨めしそうな顔で見る。

「シュトリヤ、あの援護射撃はずるい。計画してたよね」

「貴女が断ることなんてお見通しだもの。さて、どんなのがいいかしら。本当は黒が似合うのだけれど、

光の勇者だし白かしら。式典だしね」

といくつか書いてあるデザイン画を広げる。

それを見て、小さくため息をついたミィスがやっと席にもどってくれた。


「ミィスはどんなのがいいかしら」

諦めたミィスは多分希望のひとつやふたつくらいは言ってくれるだろう。

「えっと少し、でいいんだけど」

「ええ」

「シュトリヤと何か同じ意匠とかそういうのが入れられたらうれしい」

「まあ!それは素敵だわ!」

「お姫様とおんなじってできるかな?」

「目立たないようにすれば大丈夫よ、任せて!」

「ありがと」

「いいのよ、わたくしも嬉しいわ」

「緊張する、から。シュトリヤとお揃いならがんばれる」

ふにゃ、と眉を下げて笑うミィスがかわいくてかわいくて仕方なかったので、思わず抱きしめてしまったわ。

「ふぐ…ッ」

ミィスっていつも抱きしめると苦しそうなのよね。

突然すぎるからかしら。

ぎゅむぎゅむと胸元に頭を押し付けていると、抵抗が弱くなってきたわ。

素直になってくれて嬉しいわ!


「恐れながら姫様」

今日の給仕を担当してくれていたお気に入りのクールな侍女、マリアがいつのまにか傍にいる。

わたくしに気づかれずに近づくなんてやるわね。

「ええ、なにかしら」

「ミィス殿を窒息させるおつもりでしょうか?」

そっと囁くマリアの言葉にミィスをよくみると、顔が真っ赤だ。

「あら、照れているのではなくって?」

「いえ、放して差し上げてくださいませ」

ちょっと強めに言われてしまったのでおそらくミィスは苦しんでいるのだろう。

全然嫌とか言わないからわからなかったわ。

「声を発することもできないほどに押し付けていらっしゃいますよ」

ちょっと呆れはじめているかしら?マリアは仕事はできるのだけれどちょっと冷たいのよね。

そこが気に入っているのだけれど。

「…仕方がないわね」

大変に名残り惜しいので少しむくれてミィスの頭を解放すると、真っ赤な顔で見上げられる。

目は潤んでいるし、息も少し上がっている。

「はぁっ、はあっ…」

わたくしの腕を掴んだまま荒く息を吐き出すミィスを見て、正気を保てるほうがおかしいわ。

ええ。

無理よ。

見上げたままのミィスの頬を両手で包み固定する。

そして、少しあいたままの口から漏れでる吐息を間近に感じるほどに近づいた時。



「こんな場所で盛るな。」

低い声と共にミィスが奪われる。

「あらセレネル。どうしてここに?」

あと少しだったのに、本当に邪魔だわこの男。

今日は別の用件(を押し付けたのだけど!)で外していたはずだったのに!

護衛は少し離れたところにいるアナトーレとほか数人だけだったのに!

キッとそちらを睨むと尽く視線を外される。

上司(セレネル)には逆らえないのよねあの子たち。

わたくしの指示より優先するってどういうことよ。

「せせせセレネル…!!」

「落ち着け。いつものいたずらだ。」

「そ、そっか、つ、ついにほんとにしちゃうのかと…!!」

()()そんなことするわけないだろう」

さりげなく自分の後ろにミィスを立たせて距離をとるなんて本当に嫌な男だわ。

ついでにわたくしのこと牽制してくるのもほんっとうに抜け目ないわね!!

「ミィス、かわいいわ。」

けれど顔を真っ赤にしてセレネルの外套にしがみ付いてそして涙目でいるその姿に、つい語彙力やらなにやらが飛んでしまったわ。

はあ、かわいい。

思わずうっとりと溜息を漏らしてしまう。

「ひぃッシュトリヤ美人すぎるあんまりからかわないで…おねがい…わたしはしぬ…」

何か呟いているようだが、セレネルの外套に吸われてよく聞こえなかった。

「そろそろ離れなさいな。」

ミィスの言葉を聞き逃してしまうなんて、とむっとした。

「お前気が短くなってないか?城の庭(こんなところ)で武器を出すな」

手には二丁の武器。自分でもいつ取ったのかわからないわ。

反射って怖いわねえ。

「うふふ、一度近づいてしまってから歯止めが効かないのよね。」

ふう、と悩ましげにため息をついてみるものの、セレネルのこちらを見る目は冷えたままだ。

あの数日の旅で一度は姫というしがらみからも解放されて、ミィスとずっと一緒にいられて。

その時に決めたのよね。

もう我慢しないって。

「よってあなたとの婚約は御免だわ。どうしてまた浮上しているのよ。有耶無耶にしてやったのに」

「どうも俺とお前が邪魔らしい」

「ああ、なるほど。厄介ねえ」

この勢力は、自分のところの子供とミィスを結び付けたい貴族たちだ。

よって最も邪魔なわたくしとセレネルを纏めて処理してしまおうというわけね。

ふうん、そう。そういうつもり。

「ああ。ということで"不仲"は続行する」

「ええ、そうしましょう。折角武器をとったのだもの、いまからお相手してさしあげてもよくってよ」


無言で頷いたセレネルがミィスをそっと脇に避けようとしたとき。

「なんでそうなるのー!!喧嘩やめて!!」

はっと我に返ったミィスがわたくしとセレネルの間に飛び込んできた。

あらかわいい。

「ミィスが言うならやめるわ。お茶の続きをしましょ。ほら、セレネルにも選んでもらう?」

ミィスがやめてというのならそれは絶対よ。

さっさと銃を仕舞って席に戻る。

「お前俺が選んだやつは外すつもりだろう」

「うふふ何のことかしら」

「やめて」

ぷく、と膨れるミィスがかわいくてかわいくて、セレネルのことはすぐにどうでもよくなった。

「では、俺は寄っただけだ。嫌な予感がしたからな。もう行く。盛るなよ」

「失礼ね!」

わたくしにはふっと失笑を寄越し(嫌われるぞ、なんていう副音声まで聞こえたわ!)、

ミィスには蕩ける様な笑顔を向けて敵は去って行ったわ。

もうほんとう嫌な男!

わたくしが言うのもなんだけどミィスのことしか見えてないわね!



さて、概ねドレスの案はまとまったし、今日はここまでね。

あとは採寸とかアクセサリーとか段取りとかでミィスを呼び出せるかしら?

たっぷりかわいいミィスは堪能できたけれど、あっという間だったわ。

本当、姫って不便。

せめて、ミィスともう少し一緒に居させてくれないかしら。





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