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幕間3.ミヤビの運命の出会い

ミヤビ視点です

拙は東の果ての島国から長い船旅を経て王都4区に辿り着いた。

隔離された拙の国とは違っておおらかで穏やかなこの国を、まあわりとすぐに好きになった。

それでも【魅了(スキル)】はやっぱり効いてまうし、それはここでも一緒なんやな、とちょっと落胆したとこやった。

故郷からの貢ぎもんのおかげで路銀には困ったりせんけど、()るだけで迷惑なんはわかっとるし、

礼と詫び替わりにこの国では珍しい剣舞を泊まった宿を出る度に披露しとった。


2区もそろそろ出て特区に入ろ、と思てその日も剣舞を披露しとった時。

視界に小さい女の子とそれを追いかける鬼人(デモニアトロピー)が見えてしもて。

剣舞ついでにぱっとその女の子を庇ってしまったんが良くなかった。

適当に【魅了】で撒いたろうと思って。

忌々しく思っとったスキルを過信して。

「あっあなたのスキル!効いてると思うけど鬼人には逆効果だよ!!」

庇ったはずの女の子が震える手ぇで裾握りしめてアドバイスしてくれたんやけど。

まさか、鬼人には効きづらい上に効いてもつっこんで来はるなんて、知らんやん。

しかも逆境で燃えるとか何なん。


仕方(しゃあ)なしに剣で対抗してみたんやけど、まあ鬼人相手にスキル無しで勝つのは荒唐無稽な話で。

そもそも拙は戦う剣は得意やないし。

ちょっとやばいなあと思ったところにきらっきらした人間が暢気な顔で

「あ、大丈夫ですかー?」

なんて出てきよった。

スキル全開の拙に、こんな暢気な顔寄せて来た人は、初めてやった。

気ぃつけば鬼人らぁは()らんし、おそらくこのえらい古めいた服を着た獣人(セリアントロピー)のおかげやなとあたりをつけた。

「ん?ああ、大丈夫やで、ありがとう。なんやえらい人かな。えぇと、ミヤビ・花宮いいます」

「わたしはミィス!こっちの美人さんはセレネルで、あっちの美人さんはアナトーレ。色々あって旅の途中なの」

「なんや美人さんばっかりやなあ。」

そちらの美人さんとやらを見ると、セレネルのほうは目ぇの周りが少し赤いだけ。

アナトーレのほうは首まで真っ赤。

スキルの影響は受けとる。やけど、影響はだいぶ少ないようやった。

「そうでしょ」

とほほ笑むこの目の前の少女は何やろ、と訝しむ。

どこまでも普通の顔や。

「ええと、拙は旅の途中で、こん宿にだいぶ長いこと世話してもろたから、剣舞をみせとったんやけど、その子ぉが追われとったから見かねて手ぇ出してもただけ。ところでミィス言うたやんな。君、なんともないん?」

「うん?なんとも?」

「拙のスキルや。【魅了(どるちぇ)】言うて所構わずだれでも何でも魅了してしまうんやけど」

「へえ、変わってるねえ。えっと、セレネルとアナトーレには効いているのかな?」

「ああ、その男を見ると少し思考が霞む上に動機がする」

「わ、私もです。ちょっとその方と敵対するのは難しいというか直視も避けたいです」

「ふーん?ごめんなさい、わたしには何の影響もないみたい。よくわからないな」

その言葉を聞いて、生まれて初めて心からの笑顔が転び出た。

「そう、なんや。ミィス、こんなところにおったんやなあ」

ずっと、ずうっと。

22年間探し続けてきた、【魅了】の影響を受けへん人。

拙の心を預けてもええ人。

「ん?」

思わず頬をすり、と撫でてもうたけど、咎められへんかったことも嬉しい。

この少女()はきっと、拙の全部を受け入れてくれる。

孤独を埋めてくれる。

片割れにでも出逢うた気持ちやった。

天にも昇てまうような。


その気持ちの高ぶりに釣られて強めにだだ漏れになってしもたスキルを慌てて鎮めて、無理やりミィスに着いて行った。

助けた小さい子(エリュー)は鬼人やったようで、せやったら拙より強かったやろうけど。

それでもあんな笑顔でお礼言われたら悪い気はせんかった。


その晩、ミィスと2人きりにさせてもろて。

(セレネルには随分睨まれたんやけど。)

拙の国の話や出自の話を聞いてもろた。

「そうなのね、ミヤビはずっと寂しかったんだ」

「せやね、拙の希望とかは全部叶えられてしまうんよ。けどそれは【魅了】の所為であって、操ってるようなもんで」

「ミヤビの気持ちはわかってあげられないけど、けどミヤビの影響をわたしは受けないみたいだから」

「ああ、ほんまに。こんなとこまで来てよかったわあ。国にはもう居れへんしなあ」

「え?」

「拙は有力豪族…ええと、貴族やね。の家の出身なんやけど、このままやと王族にまで迷惑かけてまうんよ。拙は国に迷惑かけたいわけやないからね」

花宮家は5つの豪族の中でも最上の、王の右腕となるべき文の家や。

当主の父は今ご高齢の王を支えてはるし、次代の補佐は兄がやるやろう。

「ああ、なるほど。みんなミヤビの言うことばっか聞いちゃうんだ?」

「ほんまは将来王の補佐になる兄の手伝いがしたかったんやけど。」

「兄弟は大丈夫だったの?」

「影響は少ないんやけど、本気だしたらあかんかったよ」

「そっかあ。本当に大変だったんだねえ…」

ぽふぽふと頭を撫でられて。

そんな風に慰められたんは初めてやったから。

白い肌にすっと朱が差すんが自分でもわかってもた。

指先まで赤い。

「ねえミヤビ。わたしね、大切な人を助けにいく旅の途中なの。もし、よかったら着いてこない?

その、少し…ううん。結構危ないかもしれないんだけど」

「もうミィスが嫌や言うても着いてくつもりやったよ。拙の…その、初めての友達、と思てええかな?」

「もちろん!!もちろんだよミヤビ!!これからよろしくね!!」

喰い気味に手を握りしめてぶんぶんしてくるミィスについつい口元が緩む。

かわええなあ。

「こちらこそ、ああ、けど多分許可とらなあかんね」

「許可?」

「セレネル言うたかな?あの子ぉに」

ずぅっと睨まれとったんはわかっとるからな。

「そうなの?」

「ま、気にせんとき。ちょっと話してくるわ。ミィスは部屋戻り。エリューの話も聞いたって」

「わかった!」


その後セレネルの部屋を訪ね、部屋に足を踏み入れた瞬間。

「お前の事情はそのスキルから想像がつく。ミィスに話したのであればついてくるかと声を掛けられたのもわかる」

「なんやろ、君は人の心でも読めるんかな」

少し頬を染めつつも殺気を放つその矛盾と【魅了】への全力の抵抗に思わず笑ってしまう。

「ごめんな、セレネル。拙はミィスを離したくないんよ」

「…いや、いい。ミヤビの唯一があいつなのであれば、それは仕方ないことだ。」

「あれ、思ったより聞き分けがええんやね」

「あいつの希望を叶えるのが俺だ。」

つまり自分が気に入らんくてもミィスさえ望めば叶えてまうんやねえ。

こんな見てわかるほど好きやのに、他人の後押しするなんて嫌やろうに。

「難儀な性格しとるねえ。」

「事前に排除できなかった俺の咎だ。クソ、後でシュトリヤにもどやされる」

綺麗な顔を歪めて悪態をつく姿、多分ミィスには見せへんやつやな。

けど"シュトリヤ"って

「お姫様やんね?」

「俺はまだミィスが言えば聞くが、あいつはミィスが言っても聞かない時がある。気をつけたほうがいいぞ。敵認定されるとしつこい」

「ミィスから聞いた話と違うんやけど」

「あいつに見せている姿は綺麗な部分だけだからな。あいつも俺も。」

「ま、拙はあくまで友人やと思ってるよ、まだ」

「まだ、な」

「会ったその日やし。ほな、明日からよろしゅう。きっと役にはたつで?」

「ああ、期待はしている。」

心中は穏やかではなさそうやけど、意外と話のわかる男やった。少し嬉しい。

全く効かんわけでもないけど、随分耐えてくれる。

この調子やったら、ミィス以外も友人って呼んでもええかもしれんな。



ミィスとの出会いは運命やと思ってるし、できる範囲で手伝ってやりたい。

ミィスの希望は今のところ拙の希望にもなりつつある。

いつか、故郷に来てもろて、もっと拙のことを知ってくれたらええなとは思うくらいには好きやけど。

いまとのころそれはあくまで"友人"やな。

命はまだ惜しいし。

あの日森で向けられた姫の殺気はセレネルの比どころやなかったし、ほんま恐ろしいなあ。

ミィスの魅力は拙の【魅了】なんて遥かに超えとる気がするわ。


さて、ミィスに頼まれてしもたことやし、エリューをエスコートして4区まで向かおか。





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